モノのインターネット、インダストリアル IoT、インダストリー 4.0 ―すべては「つながって」いる

by Diego Tamburini
- 2015年11月2日

モノのインターネット。インダストリアル IoT。インダストリー 4.0。スマート生産。あらゆる科学技術の崩壊と同様、こうした用語が (新しいものも焼き直しも含めて) 立て続けに登場してくる。当然ながら、これらの用語の定義は多岐に渡っており、一部は全く相反している。

コンシュマー向けの IoT 製品とスマート ファクトリーに類似性はあるのか? インダストリアル IoT とマニュファクチャリング IoT の違いは? IoT は「モノのインターネット」という意味のはずなのに、インターネットに接続しないモノまでそう呼ばれている理由は?

混乱しただろうか? 心配無用。皆そうなのだから。新たに「より望ましい」言い回しを提案することでさらに混乱を生じさせる代わりに、ここでは主要な産業界における IoT トレンドを特徴付けるもの、何がこれまでと違うのか、これらの用語の本当の意味について冷静な視点を提供したい。

IoT の「モノ」とは何か?
IoT とは、根本的には以下のような「モノ」(デバイス、マシン、建造物など) に関係している:

  • 周辺環境を「感知」できる (モノを取り囲む環境を測定できる)。これには主としてセンサーが使用される。
  • 「計算を実行」する (「インテリジェントな」) 能力を持つ。これには主に内蔵エレクトロニクスに組み込まれたソフトウェアが使用される。
  • そして、何らかの方法で他のモノやソフトウェア システムに「つながる」ことにより…
  • 他のモノと「データや命令」をやりとりする。

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これを、最もシンプルな形態のモノ (「つながらないモノ」) からつながるモノ(IoT)へと順に、もう少し詳しく説明していこう。

まずは、つながらないモノ。ご想像通り、これらのモノは (サイバースペース上でも物理上でも) 何にもつながっていない。通常は単なる機械装置で、水圧や空気圧、力学により稼働する。つながっていないという事実が「単純」を意味するわけではないことに注意して欲しい。つながらないモノも、非常に複雑で高度な機能を実行することができる。ただし電子機器が搭載されておらず、他のモノと「通信」はできない。

次は? エレクトロニクスと電気機械部品がソフトウェアと共に内蔵されたモノだ。これにより、ソフトウェア・アルゴリズム内に組み込まれた「インテリジェンス」によって、モノの動作をコントロールできるようになる。エレクトロニクスとソフトウェアが導入されることで、デザイン プロセスは激変する。緊密な連携を必要とする機械、エレクトロニクス、ソフトウェアの 3 つの領域が存在するためだ。

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そして、ここにセンサーが加わる。こうなると、モノは実際にその周辺環境を感知できるようになる。組み込まれたソフトウェアはモノを取り囲む環境の状態を考慮して、さらに情報に通じた動作決定を行うことができるため、より高次元の複雑性が加わる。

最後に加わるのが接続性だ。IoT 接続性の仕様は広範だが、多様なプロトコル (Bluetooth、ZigBee、Wi-Fi、4G、GSM、NFC、MQTT など) を使用して、さまざまな方法でモノがつながると説明すれば十分だろう。ちなみに、これこそ「モノのインターネット」という用語の「インターネット」の部分に疑問を感じる理由だ。「モノのインターネット」という言葉が、インターネットのみを経由してモノがつながるという印象を与える。だが、実際にはそうではない。

これで、モノは他のモノやソフトウェア システムとつながり、データや命令をやりとりできるようになった。つながるモノの内部には、大抵は次のコンポーネントが含まれている:

  • 機械的ハードウェア: 構造的完全性を提供し、全てを結び付けて機能させる (下図の緑部分)
  • 電気的ハードウェア: マイクロプロセッサーやマイクロコントローラー、電源、データ ストレージ、通信が含まれる (青部分)
  • 電気機械的ハードウェア:センサーやアクチュエーター、電気エネルギーを力学エネルギーに(またはその逆に)変換するさまざまな出力デバイスから構成される (黄部分)
  • マイクロコントローラー: 一種のオペレーティング システムで、この内部に埋め込まれたソフトウェアが実行される (紫部分)
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つながるモノのコンポーネントの代表例 [提供: Diego Tamburini]

もちろん、つながるモノのデザインには、異なるツールを使用して大規模な問題に含まれるさまざまな部分を解決する、多様な分野のデザイナー同士による親密なコラボレーションと密接な組織化が必要となる。

つまるところ、IoT とは何なのか? 周辺環境を感知することのできる、インテリジェントで、相互につながる素晴らしいモノだ。だが、それが何だと言うのだ。つながるデバイスのデザインなど、これまで数十年にわたって行われてきたのでは? 現在の、この IoT の盛り上がりはいったいなぜ? ここには幾つか重要な点がある:

  • つながるモノの開発に必要な知的財産、ハードウェア、ツールがこれまで以上に広く利用可能になってきている。その結果、つながるモノの数と種類は急増しており、それに乗じて数年前には想像できなかったような革新的な用途の種類も急増している。
  • オープン コネクティビティ プロトコルが一般化したことにより、複数のベンダーやモノから企業のソフトウェア システムに至るまで、異種のモノへの接続がより簡単になっている。
  • 増大するデータの解析の高度化によって (クラウドにより高性能コンピューティングの利用可能性が広がったこととも相まって)、これらのデバイスが生成する膨大な量のデータから有益な洞察を抽出可能となった。

IoT、インダストリー 4.0、インダストリアル IoT。何がどう違う?
ここまで IoT システムを一般論として説明し、IoT が属する特定の業界について語ることは意図的に避けてきた。IoT の世界にはかなりの共通項がある。モノは相互につながっており、データや命令をやりとりし、補完サービスを可能にする。

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オーブン Juneは、つながる未来をキッチンから再定義しようとしている。デザインの一部に Autodesk Alias が使用されたこのスマート・オーブンは iPhone や iPad につながり、毎回最適な調理ができるようユーザーを支援する [提供: June]

しかしここから、モノは分岐する。相異点は、つなげようとするモノの種類と、IoT システムが解決しようとする問題 (つまりその目的) に着目すると明らかになる。これら2つの側面に目を向けると、IoT システムには3種類の基本形態があることが分かる。コンシューマ、インダストリアル、マニュファクチャリングだ。

コンシューマ IoT システム
このシステムは、電化製品、フィットネス機器、ホーム・オートメーション/ホーム・セキュリティ機器、レジャー/エンタメ/ライフスタイル製品など、一般的にコンシューマが個人的な使用のために店舗で直接購入するモノをつなぐ。その狙いは、より健康的で、安全で、楽しいモノへと進化することによって生活を向上させることだ。こういった用途は、人々の「IoT」に対する一般的なイメージに近い。

インダストリアル IoT システム
基本的にコンシューマ以外のモノのつながりを指し、概して専門職や企業がサービスの提供に使用する目的で購入するモノがそれに当たる。ここには産業用機械、輸送設備 (車両、鉄道、飛行機)、医療機器、そしてスマート・ビル、スマート・シティ、スマート・グリッドなどの大規模システムが含まれる。これらのモノの目的は、生産性を向上し、製造者がサービス提供を通じて他との差別化を図ることを可能にし、環境への影響を低減する。インダストリアル IoT システムは、予知保全サービス、エネルギー最適化、デザイン最適化といった応用も可能だ。

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マニュファクチャリング IoT システム
マニュファクチャリング IoT システムはインダストリアル IoT システムの下位グループであり、物品生産用工場に見られるモノ (工場建物、製造機械、資材運搬機器、ロボット、倉庫など) が含まれる。製造用デバイスやソフトウェアは互いに接続して、工場の稼働をリアルタイムで最適化し、自動化された装置の動作を同期し、サプライ チェーンと在庫管理を最適化する。これは「スマート生産」として知られている。スマート生産(スマート ファクトリーと呼ばれることもある)は、インダストリー 4.0(ドイツ政府が提唱するイニシアチブ) のゴールそのものだ。

時間の経過と共にテクノロジーが成熟するにつれて、どういった IoT がどこで活用されるのか、またなぜその IoT がそこに導入されるのが、より明白かつクリアになってくるだろう。
それまで、IoT という食物連鎖の頂点に立つ「モノ」が何になるのか、大混乱や基準の制定が生じるだろう。しかし、すべてが行き着くところはひとつ ― あらゆるモノがつながる世界だ。

編集部より: データとデバイスのつながり、より高い価値をカスタマーに提供する方法についてDiego Tamburiniが説明する続編をご覧ください。

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