真の価値: インダストリアル IoT がカスタマーにもたらす付加利益

by Diego Tamburini
- 2016年4月5日

より多くの消費者と工業製品が「つながる」モノ市場に関与するようになって、モノのインターネット (IoT)を取り囲んでいた霧も晴れつつあるようだ。

しかし、IoT の定義が周知されたとしても、つながる未来に含まれている意味は、まだ少し曖昧に思えるかもしれない。価値を提供しないのであれば、「つながる」ことの意味はいったいどこにあるのだろう? なぜ、カスタマーが インダストリアル IoT (IIoT) に関心を持つ必要があるのだろうか? 製品に接続性が搭載されるようになれば、メーカーとサードパーティは様々なソリューションとサービスを提供することによって、より多くの (製品の販売をはるかに超える) 価値をカスタマーに届けることができるようになるのだ。

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アプリの活用
製品に接続性が搭載されることで、メーカーが価値を提供できる明白な手段に、遠隔で製品の接続、コントロール、モニター機能をカスタマーにもたらすソフトウェア・アプリケーションがある。メーカーは、サードパーティが製品への追加接続機能を開発できるよう、API (アプリケーション プログラミング インターフェース)も提供可能だ。これによって、新機能だけでなく製品とやりとりする新たな手法も提供されるため、製品の価値も拡張されることになる。

この種の価値は、ホームセキュリティ システムや機器分野に実例が多いが、インダストリアル IoT にも応用されている。ウィスコンシンを拠点とする飛行機用除氷車メーカー、Premier Deicers を例に挙げてみよう。このメーカーの Guardian Angel Monitoring System は、除氷車の流圧から電気部分まで 29 機能の遠隔操作を提供している。カスタマーはインターネット・サービスを使用して、除氷車に適用可能な機能の数値をどこからでも確認可能だ。

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アップグレードを行う
製品を遠隔モニターしてコントロールできること自体にも価値があるが、メーカーは既にカスタマーが所有している製品をアップグレードすることで、さらにもう一歩進めることができる。アップグレードはソフトウェア経由で提供されるようになりつつあり、メーカーがデザイン上のより多くの問題をハードウェアでなくソフトウェアで解決するようになると、それはさらに進むだろう。

こうしたアップグレード モデルの最も典型的な例がテスラだ。電気自動車メーカーであるテスラは、モデル S に対するワイヤレス アップデートを何年も前から実施しており、先日の自動運転機能を追加するアップデートで、この水準をさらに引き上げた。全米のモデルS全車両に対し、1週間に渡ってワイヤレスで行われたこのアップデートは、モデル S の各車を基本的に自立走行可能な車へと変貌させた。ただし最終的なコントロールを行うのは (今のところは) 人間だ。

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製品だけでなく、サービスも
メーカーは、製品に関連するサービスを提供することによって、付加価値を追加できる。こうしたサービスは、IoT 製品により生成される膨大なデータを活用している。データ分析の技術と組み合わせることにより、これらのサービスは特定のメーカーに競争力をもたらす「隠し味」となる。

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製品を通じて収集されるデータを検討・分析することにより、メーカーは過去から結論を導き出しつつ、未来を予測することが可能だ。例えば上図のように、メーカーは一定の条件下においてエネルギー消費が高すぎることを見抜いて、製品の効率性を向上させる方法を見出すことができる。また、特定のパーツが頻繁に故障する理由を明確にして、この問題を防ぐようデザインの改善を提案することができる。

さらにメーカーは、不具合が発生しそうなパーツを検知することで、予定されているダウンタイム中にメンテナンスの予定を入れることができる。これなら、カスタマーが負担する費用もずっと低くなる。下図で示されるこのサービスは、産業界では「予知保全」として広く知られている。

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しかし、つながる製品に関連したサービスの概念は、個々の製品別に限定する必要はない。複数のメーカーの製品がつながる、システム・レベルでのサービスが提供されたらどうだろう? このシナリオでは、システム内の各デバイスのパフォーマンスをメーカーやサードパーティのシステム インテグレーターがモニターして、パラメーターや動作を調整することでシステム全体のパフォーマンスを最適化できる。そしてこのシステムには、Premier Deicer のトラック群と各種装置のように類似したデバイス、あるいはスマート ファクトリーやスマート ビル、スマート サプライチェーンなどでは多種多様なデバイスを、それぞれ含むことができる。例えばディーゼル発電機が近くにある燃料タンクをチェックし、GPS 追跡装置を搭載した輸送トラックを自動的に送り出して燃料を積み込んで、それを届けさせる、という具合だ。

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新たなビジネスモデルの誕生
つながる製品に関連したサービスの提供に関して、特に興味深い予測に、メーカーによる新たなビジネスモデルの実践が可能になるというものがある。例えば従来のビジネスモデルでは、まずはカスタマーが製品に対価を支払い、その後必要に応じて予備部品に代金を支払っている。

より洗練されたモデルでは、カスタマーは先行保全サービスに対して代金を支払う。このシチュエーションでは、メーカーはカスタマーの手元にある製品を遠隔でモニターして、収集したデータを使用することで製品のメンテナンス時期を把握する。そして製品が故障する前に、通常は予め予定されているダウンタイム中にサービスや修理の予約・実施を行う。保守が先行実施されるため、カスタマーは修理に必要な予定外のダウンタイムを避け、コストを節約することができる (メーカーが故障の責任を負うことになるため、より信頼性の高い製品をデザインする動機をメーカーに与えることにもなる)。こうしたモデルには、製品を向上させるパーツやソフトウェアのアップグレードも組み込まれている。

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このアイデアをさらに一歩進めたのが「サービスとしての製品」(PaaS) モデルだ。このシチュエーションでは、カスタマーは製品や予備部品に対する代金を支払わず、製品を「サブスクリプション購入」する。サブスクリプション購入とは 1 カ月や 1 年、四半期など所定の期間に対して一定額を支払うというものだ。PaaS では製品の動作保証の責任を、完全にメーカーに負担させる。製品が動作しないのなら、メーカーは支払いを受けられない。

IoT が日常生活で確立したものになりつつある中、つながるエコシステムと収集されるデータの価値は、さらに明白なものとなるだろう。インダストリアル IoTは、2020 年までに世界の GDP の 16% を占めるようになり、メーカー各社は 1 兆ドル以上の獲得を目指して 5,000 億ドル以上を投資するものと推測されている。かなりの価値であることは、これからも明らかだろう。

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