統合型エネルギーシステム: 共生関係を生み出し、配電網に背を向ける構造体と車

by Zach Mortice
- 2016年4月3日
冬季のAMIE車両と構造体 [提供: SOM]

アメリカン ドリームと現在の気候の窮状を支える柱が、戸建て住宅と自動車だ。その利便性と自由度、独立性は非効率的かつ有限な化石燃料によりもたらされている。

そのため、都市計画と建設業界の多くが、従来のインフラの常識を根本的に覆す方法に焦点を合わせている。では、住居と運搬の総合施設を改革する最良の方法が、公共交通機関と密集する高層ビルを支持して既存モデルを廃棄することではなく、代わりに統合型エネルギーシステム (IES: Integrated Energy System) を使用して家と車の関係をシンプルに変えることだとしたら?

これこそが、アディティブ マニュファクチャリング総合エネルギー (AMIE) 実証プロジェクトが提示した仮説だ。このプロジェクトは、テネシー州にある米国エネルギー省管轄下のオークリッジ国立研究所 (ORNL)、SOM 設計事務所のシカゴオフィス、その他 19 のパートナーによるコラボレーションになっている。AMIE 1.0 では、ORNL の天然ガス/電気のハイブリッド車を、約 20 平米の構造体と組み合わせた。これらは互いに発電して、その電力を共有する。

integrated energy systems AMIE assembly
AMIE構造体の組立風景 [提供: ORNL]

どちらも 3D プリント製の構造体と車両は、ワイヤレス連結ステーションを使用して、85% の効率で電力をやり取りする。構造体の屋根は薄型太陽光発電パネルでコーティングされており、構造体への電力供給や車両のバッテリー充電に使用することができる。車は電気駆動だが、バッテリーは内蔵の天然ガス発電機により充電可能だ。車から得られる余剰電力は構造体のバッテリーへと送られ、太陽光が十分でない場合の電力として使用される。

かなりの長距離通勤者であっても車の稼働時間は一度に数時間程度だが、AMIE は 1 日中連動して機能する車両と構造物の作成を目論んでいる。「通勤に使用されるこういった車が、駐車中はほぼ何もせず、リサイクルとはほど遠い無駄なエネルギー消費を行っているのは残念なことです」と SOM のデザイン パートナー、ブライアン・リー氏は話す。

構造体 (簡易キッチンと折り畳み収納式ベッドが取り付けられている)は、ポストテンショニングした鉄筋で連結された、あばら骨を思わせる一連の真っ白なパーツから構成されている。各パーツには魚のえらのような窓が取り付けられており、構造体の背面から近づくと見えないが玄関からは見えるようになっており、窓は見る向きによって透けて見えたり不透明になったりする。

AMIE interior integrated energy systems
AMIE 構造体の内部 [提供: ORNL]

構造体の断熱体系はモジュール式の真空断熱材で、改良空気断熱と呼ばれる。非常に効率性に優れ、厚みはわずか約 2.5 cm 程度で、構造体の曲面形状にはめ込むことができるほど柔軟だ。壁体系は構造、ファサード、断熱の各体系を、炭素繊維で強化された 3D プリント製樹脂部分 (厚みわずか約 5 cm) のひとつのコンポーネントに統合している。

車のシャーシも同じ素材で作られている。オークリッジ国立研究所のロデリック・ジャクソン氏は、3D プリンターの使用により、彼のチームはこういった画期的なエネルギー分配システムにあっという間に素材を統合させることができたと話す。構想から実施まで、プロジェクト全体でかかった時間はわずか 1 年だった。

この種では初のプロジェクトである AMIE は、深淵でオープンエンドな研究でなければ考えつくこともないであろう、いくつかの問いに答えている。車が現場で発電機としても機能したら? 住宅が車のバッテリーを充電できるとすれば? 新しい車を購入することで、クリーンでない化石燃料を使用する発電所の出力の一部を置き換えることができるなら?

AMIE car and building integrated energy systems
AMIE車両と構造体 [提供: SOM]

とはいえ、いろいろな意味で AMIE は、移動手段と住宅のインフラを改革する方法としては保守的で漸進主義的だ。戸建て住宅や自家用車の優位性自体を問題として取り上げてはいない。またユーザーは住宅の電力を、化石燃料を使用した車両に依存しなくなるため、AMIE はこれら 2 つのインフラ モデルを新しい (かつより効率的な) 経済関係へと定着させる。

リー、ジャクソン両氏とも、AMIE は気候変動や炭素排出量を緩和するための最終的な解決策として意図されたものではないと話す。「3D プリントの戸建てや車両でなければならないと言うわけではありません」とリー氏。「そもそもの趣旨は、エネルギーの問題と、エネルギーを移動させる方法を示すことにあります」。これは説明的研究を目的としたもので、今後のバージョンは大幅に異なることも考えられる。例えばリー氏は、このテクノロジーが都市モデルに展開されるようになるのを見たいと話す。小さな構造体と車が互いに電力を供給し合えるなら、地下鉄車両と高層ビルを組み合わせることも可能なのではないか?

AMIE から生まれた最も重要なイノベーションは、移動手段と住宅というインフラ間の一貫電力共有であり、移動手段や建造物が取る特定の形態ではない。「車を用いたり、構造体を用いたりすることは、それを説明するのに便利な方法のひとつでした」と、リーは話す。

AMIE building and car integrated energy systems
[提供: ORNL]

この抽象的な共有概念を日常のあちこちで見られるインフラのパターンに適用すれば、大衆もそれを直感的に理解することができるようになる。「今後の可能性を描き出しつつも、今日存在する領域の範囲内でプロジェクトを展開させています」と、ジャクソン氏。「車もまだ存在していることですし、既存のインフラを活用していきたいとも思っています」。

黒の大型 SUV とトレーラーのような形をした構造体は、連結させて「どこへでも牽引し、世界の終わりにも対処できそう」(とはリーの言葉) な印象を与えるかもしれないが、実際にはそのように機能するわけではない。とはいうものの「終末」の想起は、このテクノロジーが使用される目的からそうかけ離れたものではない。ジャクソン氏は、送電網に依存しない AMIE を、送電網へのアクセスを持たない何百万という人々は言うまでもなく、自然災害における生存者の支援に役立てる方法を見出すことに興味があると話す。電力消費量が高くなる時間帯に大量の AMIE (ピークサージに備えて設計および製造)を使用すれば、石炭発電所や原子力発電所を増設しなくて済むかもしれない。

約 30 年ぶりに製作された 『マッドマックス』シリーズ第 4 作が公開され、アクション作品としても興行的にも大きな注目を集めた年だけに、AMIE はテクノロジーを活用して落ち着きを与えてくれる便利な休憩所か、大規模な厄災時に逃げ込むシェルターのようにも見える。AMIE 1.0 は Apple 製品のような滑らかな曲線と IH レンジを備えているが、社会の完全崩壊が起こった場合、世紀末における AMIE の未来のバージョンは、まさにマッドマックスを彷彿とさせる武器庫のようになるかもしれない。オープンエンドのバージョン研究である AMIE について、ジャクソン氏とリー氏は、AMIE 2.0 は全く別のものになるだろうと話している。

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