人間と機械: 知能強化が到達しようとしている猛烈なスピード

by Maurice Conti
- 2016年10月12日
人間 ロボット 知能増幅

最初の産業用ロボットがゼネラルモーターズの製造ラインに組み込まれたのは、1962 年だった。その 1 年後に、テレビアニメ「宇宙家族ジェットソン」がスタート。1 クールのみの放映だったこの番組では、ボタンを押すだけで実現する未来として、豪華なディナーや家中の掃除、ブリーフケースに収まる折りたたみ式の空飛ぶ車などが描かれていた。

このストーリーで描かれていたことのほとんどは、いまだに空想上のものでしかない。進化には、ときとして時間がかかる。人類の狩猟採集期は数百万年、農耕期は数千年、そして産業期は数世紀に渡って続いている。

その後で情報期が登場し、進化のスピード、少なくとも技術的な進化のスピードは大幅に加速された。そしていま人類は、素晴らしい新時代の幕開けを迎えている。強化期だ。この時代には人間の生まれ持った能力が、人間の「思考」を支援するコンピューターを用いたシステムや、人間の「モノ作り」を支援するロボットによるシステム、人間を世界と「つなげる」デジタル神経系によって、強化されるようになる。

ロビーにいる知能強化ロボット

人間 + コンピューター = デザインの共創
強化手段のひとつが、ジェネレーティブ デザインだ。これはエンジニアとコンピューターが、それぞれ単独では実現不可能なものを共同で創造可能とするコンピューター システムだ。まずエンジニアが問題記述を作成し、目的と制約を入力することからスタートする。その後、エンジニアは機械学習アルゴリズムとクラウド コンピューティングの処理能力を使用し、人間だけではデザインできなかったであろう解決策をもたらす、何万ものオプションを作成する。

その一例が、この新たな世界における、都市デザイン手法の再考だ。これには社会的、経済的、地理的な動態を考慮する必要がある。都市は極めて複雑なシステムであり、援助無しに人間が完全に把握することはできない。だが先進のコンピューター システムと手を組むことで、人間とコンピューターのチームは問題を理解し、それを実際に解決することができる。

エンジニアは、ますます厳しさを増す天候や地質活動に耐えうる、かつてないほど高い安全基準を満たした、これまで以上に長くて高い橋や道路、ビルを構築できるようになる。また、こうしたプロジェクトが上位の集合にどう適合するのかも理解できるようにもなる。これらの建造物は、周辺インフラやビルにどう影響するのだろう? 考えられる代替の選択肢と、それらの利点とは?

次に来るのは製品のイノベーションだ。AI を使って設計された初の自動車、Hack Rod を例に考えてみよう。このレーシングカーにはセンサーによる神経系が取り付けられ、それが限界までドライブされた。収集されたデータはその後、Dreamcatcher というジェネレーティブ デザイン システムへと供給され、パフォーマンスや強度、重量、路面状況とドライバーのスタイルに合わせて最適化されたシャーシが作成された。

AI の長所のひとつは、ひとつの知能がある専門分野を学習すれば、それを全ての知能が習得できる点だ。AI はネットワークされた知識、つまり瞬時のユビキタスな知識を共有する。

人間の効率は、それよりずっと低い。アイザック・ニュートンの言葉にあるとおり、偉人たちは長い時間をかけ、「優れた功績を残した巨人たちの肩に立つ」ことで知識を構築してきた。AI の登場によって、人間は機械という巨人の肩に立つことになった。その機械は、背丈を急激に成長させている。

知能強化ロボットと人間の協働

だが、だからといってロボットや機械がデザイナーやエンジニアの存在を陳腐なものにするわけではない。実際は、むしろその逆だ。解決すべき問題は尽きることがなく、そうした問題の規模と困難度はますます増大しているため、人間はその能力をますます高めて問題を解決していく必要がある。

人間 + 産業用ロボット = 連携製造
50 年以上の間、ロボットは物言わぬ存在だった。そのほとんどに周辺環境の知識や認識能力がなく、実行するようプログラムされた反復作業に焦点が合わせられていた。とはいえ、産業用ロボットの台数は 2017 年までに 200 万台以上にまで成長することが予想されている。これらのロボットが人間の仕事を奪うという予測もあり、それはあまり良いニュースとはいえない。

だがこの強化期に人類と機械は、単独で実現可能な結果を超える成果を出すために連携することになるだろう。人間とロボットが持つスキルは異なり、それは互いを補完するものだ。多くの研究所やメーカーは、人間と産業用ロボットの直接的な接触が安全なものになるよう、開発に取り組んでいる。メルセデス・ベンツやトヨタなど一部のメーカーは、人間とロボットのパートナーシップを活用するため、製造ラインに人間を再配置するに至った。

もうひとつの試みが、スイス・チューリッヒの National Centre of Competence in Research (NCCR) Digital Fabrication による研究プロジェクトだ。この研究所による現場ロボット ファブリケーターは、人間の介入を必要とせず、レンガ壁を自律的に構築可能。レーザー スキャナーを動作の合間に使用して周辺環境の点群を作成し、状況を把握できる。

また、作業員がロボットとペアになり、ジェネレーティブ デザインとウェアラブル、コネクテッド デバイスを用いて高さ 3.65 m の複雑な構造を構築する Hive Pavilion もそうだ。4 台の 6 軸ロボット、コンピューターによる「現場監督エンジン」(iBeacon 位置センサー データにより位置情報が追跡され、リアルタイムに指示を提供する Apple Watch を装着)、数名の人間作業員によって 3 日間で構築された。

だがセンサーは、ビルやプロジェクトの製造段階の後にも重要だ。センサーは、デザイン-製作-使用のコンバージェンスを通じて、消費者が製品やビル、インフラをどう使用するのかをエンジニアに伝えることが可能。製作するモノの寿命が可視化されることで、デザイナーとエンジニアは、次のデザインやアップデートで何をすべきかを正確に把握できるようになる。

(Amazon などの) ユーザー評価は、この神経系の始まりだったと言える。製品開発に影響を与えることのできる、無償で良質なフィードバックだ。それ以前には、エンジニアは知識と経験に基づいて推測するか、有償のユーザー テストを実施するしかなかった。

知能強化ロボットと人間のミーティング

次のステップは、データを通じて「破損するまで 1 度しか使用されなかった」とか「354 日連続で使用され、軽度な誤作動が 1 回あった」などと自ら評価を行う、つながる製品 (コネクテッド プロダクト) になるだろう。

未来の未来
さらに先の未来においては、強化はさらに勢いを増すだろう。製品と構造体は、製造・建設されるものから栽培・生育されるものへと変化していき、人間は (石炭から太陽光のように) 集合を支持し、抽出を減らしていくだろう。

その一例が、積層造形が生物学的プロセスを再現する手法だ。メルセデス・ベンツは、バイオミミクリーの原理を、自社の生分解可能な自動車、バイオームに応用した。この車は概念的には、骨材料に基づく DNA を使用して、遺伝子操作を行った 6 つの種から「生育」されるものだ。今はまだ SF 映画の中の話に思えるかもしれないが、この先には自動車 (さらには建物) が、製造ラインで作成されるのではなく、苗床で育成されるようになる日が来るのかもしれない。

そのときまで、強化期を通じて AI はさらに勢いを増し、数千年にわたって培われてきた人類の知識を基盤にさらに拡大して、人間の能力を飛躍的に向上させていくだろう。

人類が「宇宙家族ジェットソン」が描いた未来の全てを手にすることはないかもしれない。だが知性と身体、感覚の強化によって、現在では想像もできない未来が姿を現すだろう。

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