空間を侵略! IoT やビルのインターネットに対応するデザイン

by Erin Rae Hoffer
- 2015年8月20日

気を付けろ! IoT が建築、つまり日常生活を行う物理空間を侵略しようとしている。

様々な建築物を、インターネットにより活性化された形態で再考してみよう。

例えばミュージアムが、訪問者の歴史に関する知識と興味に合致する主要な展示作品を強調したり展示ラベルを表示したりすることにより、その背景と興味に合わせて反応。各展示作品は、同様な反応を見せる他の訪問者とあなたを結び付け、バーチャルな関係のネットワークを生成する。

internet_of_things_and_buildings_designまた、来場者のもてなしを再定義するナイトクラブ。大学の同窓生や、同じスポーツに興味を持つ人で溢れかえる部屋にあなたを案内する。クラブの「オペレーティング システム」が訪問者全員のプロフィールを診断して、共通項を探し出すのだ。入場するとグループに合わせて部屋の壁が変化し、グループが一緒に写っている写真のうち公開されているものが表示されて、参加者のプレイリストに共通の曲が流れ、コメントのスレッドが表示される。

医学的処置が必要な場合に、感染病につながる病原菌の存在と動きを認識し、最適な空気循環保護が行われるように器具や照明を最適な場所に配置する手術室。

SF だけに登場する話ではない。こうしたシナリオは、想像以上に現実に近いものとなっているのだ。スマートフォンに接続されたセキュリティや快適性、通信用のシステムはその姿を変えつつある。近いうちに自己意識を有した新たな意味を持つ存在となり、IoT やビルのインターネットと共に、日常の物理的な現実世界の一部となるだろう。

生きている!
物理的な世界とデジタル世界の境界が消えゆき、相互作用により空間自体がその形を変える時代へと社会が突入しつつあるが、これはデザインにとって何を意味するようになるのだろうか? デザインは建築環境に対する次世代の要件に向かって突き進まねばならず、デザイナーはより早くそこに到達するためプロセス自体を再考する必要がある。

internet_of_things_and_buildings_erin_rae_hoffer
[提供: Erin Rae Hoffer]

建築家のクリストファー・アレグザンダー氏は、優れたデザインを記述する「パタン・ランゲージ」のパターンと使用法のアイデアを(自身が「時を超えた」と表現する)建築の在り方として説明する。彼は自身の著書「時を超えた建設の道」の中で「その社会に属する人々によって作られ、その人々がこれらの建設物を作成する共通のパターン言語を共有しており、さらにこの共通のパターン言語自体が生きたものであるという条件が揃わなければ、都市と建設物に生命を吹き込むことは不可能です」と語っている。

「生命を吹き込む」ことは、これまで以上にタイムリーで、言葉本来の意味のものとなっているのだ。パタン・ランゲージを拡張し、インターネット対応の (インターネットに接続した) 環境の整備に先駆けて着手するべき時がやって来たのだ。新しいパターンはどれも「つながる環境」の使用事例であり、体験を増大させるような手法でデジタル環境と空間環境を結ぶデザインという問題に対する答えとなるべきものなのだ。

ビルディングに生命を与える準備は整っているだろうか?「ハイブリッド デザイナー」になる用意はできただろうか?

ハイブリッド デザイナーの登場
建築の歴史は、コミュニティとグループの行動に対して環境が途方もないパワーを有していることを教えている。古代ローマ時代に書かれた「建築について」は、デザインと構造の原理を説明しており、建築物が単なる建設物を超越する存在となるための3つの「条件」、すなわち建築作品は耐久性と有用性、魅力を備えていなければならないことを強調している。この3条件は、優れたデザイン作品が物理的かつ構造的にしっかりとしたものでなくてはならず、居住者の機能上および実用上のニーズを支え、見る者に美学的な心地よさを感じさせるものでなければならないことを明確にしている。

internet_of_things_and_buildings_architecture一方、HPのUXリードであるジム・ニーターによるインタラクション デザインに関するブログ記事では、インタラクション モデルの目的として発見可能性、学習可能性、効率性、生産性、応答性、そして(偶然ではなく)魅力を挙げている。この2人の思想家は異なる時代を生きたが、一連の条件はどことなく似通っており、ユーザーエクスペリエンス デザインを物理空間におけるインタラクションとエクスペリエンスのデザインに合致させることの妥当性を明確に示している。

インターネットに対応した空間の未来において、デザイナーは建築家とインタラクション デザイナーの両方のスキル・セットを包含し、インテリジェントな「モノ」を通じて人々がつながる有意義な空間を作成しなければならない。こういったさまざまな手法や感性の混合は「ハイブリッド デザイン手法」と呼ぶに相応しい。ハイブリッド デザイナーは、クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ氏が言うところの物体としての建設物の「具現化」だけでなく、新たな文脈、つまり環境、行動、社会的状況に対する人間のニーズに柔軟に適応する要素の動的システムの編成にも責任を負うようになる。

尋ねるべき新たな問い
答えなければならない新たな問いが生じている。例えばインタラクションの様式、つまりあらゆる者が建築に携わる方法には、新たな評価が必要だ:

  • 認知: 何を評価し、何を学ぶことができるか?
  • 分析: データからどういった有益な知識を収集することができるか?
  • コミュニケーション: 洞察はどのように報告されるべきか?
  • 行動: システムは洞察に基づきどういったアクションを取ることができるか?
  • フィードバック: 影響をどう評価するか、行動からどう学ぶことができるか?
  • 回顧: のちの利用に備えて、いかに知識を留めることができるか?

また、物理系システムと人間系システムを通じて世界を理解し転換するための目標を定める新たな問いと責務も生じるだろう:

  • 環境: モニタリングで収集されたデータと外部データ ソースを組み合わせることで、いかに資源の使用を最適化および最小化し、理想的な条件を生み出すことができるのか?
  • 行動: 行動の動機付けは可能か?人間関係をモニタリングすること、好みの把握に基づいて状況を評価および修正することは可能か?
  • [1]社会: 社会的つながりを通して、いかにしてネットワークベースの議論とアクションを生み出すことができるか?人間関係に通じる背景状況を変更することは可能か?空間はいかに集団行動を支援できるか?

ハイブリッド デザイナーは、これらに代表される数多くの質問に答えていくことになるだろう。問題解決と実用性の枠を超え、マニフェストを掲げて、建築を通して互いにつながりあう社会に生きることの意味を表現するために。建設物がつながりと新しい体験のコミュニティへの入口となったことを明確にするために。あるいは、各建設物をあなたの人生の物語におけるキャラクターとして擬人化するために―あなたに反応し、あなたの環境をあなたのニーズに合わせて形作り、状況を分析し、フィードバックを提供し、過去の出来事を記憶するのだ。

事実、新しいパターンと実践を生み出すことで、デザイナーは、誰もがつながる新しい世界に対して皆の心の準備を整え、迫り来る空間への侵入を社会が活用できるよう、社会に「目を配り」手をさしのべる責任を負っているのだ。

関連記事