IoT による医療サービスのコネクトで救われる世界の命

by Ken Micallef
- 2017年11月22日
医療サービス IoT Simprints BRAC
バングラデシュで援助団体の BRAC と活動を行う Simprints [提供: Simprints]

医療サービスの利用機会が世界各地で向上しており、それと同時にアクセス、サービスの質の両面における健康格差も増大しつつある。

この問題に寄与している要因は複雑だが、食料の入手可能性や、汚染のない水と環境、ワクチンが利用できること、予防治療など先進国では当たり前のことが、克服不可能なほどの障害に直面していることも多い。同様に、クラウド コンピューティングやモバイル テクノロジー、ソーシャル メディア、IoT など、世界の別の場所ではすっかり一般的になっているものが、低中所得国の健康問題に対処するため、驚くべき方法で利用されるようになってきている。

医療サービス IoT Simprints テクノロジー
Simprints のテクノロジー (写真はウガンダでの様子) は、リソースに乏しい状況下で正確で効果的な基本的な医療サービスを提供するのに役立っている [提供: Simprints]

IoT (モノのインターネット) とは、センサーを使用してデータを収集し、互いにコミュニケーションを行えるような「スマート」なデバイスを指す。2017 年の時点で、地球全体でコネクトしている「モノ」は、2017 年の段階で 84 億。大陸間の健康格差を、医療サービスの提供者にスマートなツールを提供することで克服できるかもしれないと推測しても、それほど奇異なことではないだろう。IoT デバイスは、ワークフローを合理化し、医療サービスの提供者と患者を最前線で支援することができる。既に医療サービス提供機関は、主に IoT テクノロジーを使用することで、ワクチンの接種や診断、回避可能な慢性的な健康問題 (PDF) の治療を、これまで以上に迅速に行えるようになっている。

イギリス・ケンブリッジの NGO、Simprints は IoT テクノロジーを国際保健へ応用する動きのリーダー的な存在だ。この NGO は、気候関連の災害によって被害を受けている人々に対してバイオメトリック (生体) 指紋認証を活用している。Simprint のテクノロジーは、自社の ID システムを通じて、医療やその他の救命サービスへアクセス可能にする。この ID システムは、いわゆる「ラストワンマイル」にいる患者の切り傷や擦り傷、その他の傷跡のある指紋に対処できる作りになっている。

Simprint で戦略パートナーシップ ディレクターを務めるクリスティーン・キム氏は「人々と、弊社が連携する機関が有する診療記録の間に、時を超えた簡単かつ正確なリンクを提供します」と述べている。「手を差し伸べようとしている相手が誰なのか分からず、結果として彼らが見落とされてしまうという、地球規模で生じているこの大きな問題に、私たちは生体認証を用いることで自らの役割を果たそうとしています」。

現行のシステムで業務に取り組む場合、医療サービスの提供機関や NGO は、患者の身元と治療の必要な疾患を確認する必要がある。一般的に認められた形式の ID があるかどうかに関係なく、正確な診療記録へのアクセスが必要なのだ。それを IoT で合理化することにより、確認が取れた患者を素早く登録、識別して適切な治療を施すことで、願わくばより健康な状態にすることが可能になる。また、出産前検診や予防接種など、基礎的治療へのアクセスも向上する。

医療サービス IoT Simprints 指紋スキャナー
Simprints の低コストの部分指紋スキャナーは、最前線で活動する医療サービス従事者による開発途上国の大量の患者の正確な追跡を可能にする (写真はケニア) [提供: Simprints]

「弊社のシステムはオフラインで機能するので、WiFi やネットワークが整備されていない、リソースに乏しい状況下でも業務に使用できます」と、キム氏。「システムを機能させるには IoT が頼りなのです」。

Simprints は、既存のモバイルデータ収集プラットフォームに組み込むことができる。またキム氏によれば、多くの機関で、最前線で働く医療サービス従事者が、既にスマートフォンでデータ収集アプリを使用している。「現場スタッフが生体認証を用いた患者の登録や識別に Simprints を使用する場合、Simprints はオフラインで使用できます」と、キム氏。「指紋から生成された匿名かつ一意の ID が、スキャナーから電話へと転送されます。電話がインターネットにつながると同時に、情報をクラウドに同期できます」。

Simprints は現在、南アジア、サハラ以南のアフリカ、中東で活動しており、バングラデシュの BRAC、ナイジェリアの UNICEF といった機関と提携し、また近いうちにアフガニスタンの教育省ともパートナーシップを結ぶ予定だ。「患者の追跡にこの種のテクノロジーを必要とする、世界各地の 150 機関から問い合わせを受けています」と、キム氏。「弊社のデータは全て Google Cloud に保存され、EU のデータ保護、プライバシー基準 (英語情報) に準拠しています。この基準は、世界で最も厳しいものです」。

ロサンゼルスを拠点とする NGO、Nexleaf Analytics は、センサーとデータ技術へ重点的に取り組んでおり、情報を使用して世界の治療行為と医療システムを向上させることを目標としている。

Nexleaf 共同設立者兼 CTO のマーティン・ルーカック氏は「ワクチン接種の分野が直面する問題のひとつが、システム性能の視認性の欠如です」と話す。Nexleaf が提供するソリューションのひとつ、ColdTrace と呼ばれる低コストのセンサーは、農村や僻地にあるワクチンの冷蔵保管庫をモニターするようデザインされている。

医療サービス IoT Nexleaf ColdTrace
Nexleaf の ColdTrace デバイスは、へき地のワクチン冷蔵保管庫をモニターする [提供: Nexleaf Analytics]

ColdTrace は、性能データを弊社のクラウド サーバーにリアルタイムでアップロードします」と、ルーカック氏。「ColdTrace により、一般的なワクチン冷蔵保管庫が、集中システムと通信し、さらにはワクチンが極端な温度変化でダメージを受ける危険のある際には支援を要請できる「スマート」な冷蔵庫へと変化させます」。

これは不適切なワクチン保管という、ワクチンと、自治体や国際機関を含む供給プロセスの両方の有効性に影響を及ぼすような、よくある問題へ直接対処するものだ。世界保健機関 (WHO) の最近のデータによると、予防接種により毎年 200 – 300 万人の命を救うことができる (英文情報)。より多くのワクチンを効率的に輸送、保管、提供できれば、この数を大幅に増加させられるかもしれない。

「12,000 台を超える Nexleaf ColdTrace 5 デバイスが、ワクチン電子情報網 (electronic Vaccine Intelligence Network) の一環として、インド 11 州で活用されています」と、ルーカック氏。「弊社のデバイスは、モザンビークでも複数の州でも活用されています。ケニアでは現在、地区毎のワクチン保管施設を ColdTrace がモニターしています。保健省は、ColdTrace のデータ ダッシュボードを使用して、ColdTrace が取り付けられた施設のワクチン冷蔵保管庫の状態をリアルタイムで確認可能です。また、ColdTrace が搭載された冷蔵保管庫は、ワクチンが危険にさらされると、医療システム関係者に対して警告を発することができます」。

リアルタイムで発信される警告メッセージにより、冷蔵保管庫の扉の掛け金の確認や、予備発電機の稼働など、ワクチンを守るための対応が促される。「弊社のデータによれば、ワクチン冷蔵保管庫から支援が要請されると、看護師がワクチンを守るためのアクションを講じることが分かっています」と、ルーカック氏。「テキストメッセージによる警告だけでも、診療所でのワクチン凍結を 74% 削減することができました」。

医療サービス IoT ColdTrace 警告
ColdTrace 警告メッセージは看護師のスマートフォンに直接送信される [提供: Nexleaf Analytics]

グローバルな活動には組織的な取り組みが必要だが、それには IoT が最適だ。Nexleaf で慈善活動コーディネーターを務めるナタリー・エヴァンス氏は「IoT とセンサー技術は、低所得国におけるリソースとインフラの問題を克服する上で、驚くべき可能性を有しています」と述べている。「そうした国々や個々のユーザーのニーズに耳を傾けることにより、環境保全や十分な食料の生産、命に関わる病気の予防など、地球が直面する最大級の課題に対する効果的かつ良心的な価格のソリューションのデザインや反復、活用ができます」。

ACT | The App Association は、コネクテッド ヘルスケア市場が 2020 年までに 1170 億ドルの規模に達するだろうと予測している。また、IoT 市場の 40% は開発途上国によりもたらされると予想されるが、そこには新世代のヘルスケア ソリューションが必要となるだろう。データを使用してソリューションに情報を提供することにより、その領域と有効性は拡大する。そして、ヘルスケアは万人が享受すべき人権となる。

オートデスク基金は、へき地で働き、生活する人々のためのソリューションを生み出すニーズが差し迫っていることを認識し、Nexleaf や Simprints のような企業が、よりスマートで、よりサステナブルなデザインに大きな進歩をもたらせるよう支援を行っています。

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