3D プリントは主流になりつつある。製造業界では既に迅速なプロトタイプ製作を行う、非常に便利なツールとなっているが、その波が建設業界にも到達しようとしている。

過去数年間、本気で 3D プリントに取り組んできたのは、世界の優れた建築家やエンジニアの中でもほんの一握りだけだ。彼らは建築物やその構成要素が、現在と未来においてどう作られるのかに関して、エキサイティングな構想を描いている。

製造業界においては、産業向け 3D プリントが本質的に環境に優しいテクノロジーだと喧伝されることも多い。だが研究が進むにつれ、こうした主張に疑問が投げ掛けられるようになり、そうした主張の多くは誤りであることも証明されている。貨物輸送への影響やリサイクルの可能性、生分解性といったメリットが、大げさに取り上げられることも多い。だが直感に反して、毒性や過度なエネルギーの消費、素材の無駄使いなど、環境へ与える悪影響がそれ以上のものであると判明してきた。

3D プリントの応用が建築の規模へまで拡大しつつある中、製造業界での動向と同様に、その環境への影響に対して警鐘が鳴らされるべきだろうか?

環境保護のリーダー
DUS Architects は家 1 軒を 1 部屋ずつプリントするという、長期にわたる高額なプリント プロセスを今年初めにアムステルダムで開始した。インタラクティブな研究プロジェクトだと宣伝されるこの 3D Print Canal House で、主に使われるのはバイオプラスチック。世界最大の接着剤メーカー、ヘンケルの開発による企業秘密の素材だ。

3d プリント 建築物 レンダリング

実際の材料組成は明らかにされないだろうが、その 3D プリント製パーツは廃棄物を一切生み出さず、貨物輸送への影響を減らし、完全にリサイクル可能であると DUS は公言している。こうした利点は、産業用アディティブ マニュファクチャリングにおける、根拠に乏しい主張を踏襲しているようにも思える。

天然で、無毒で、リサイクル可能な材料源が推奨されるべきだが、プラスチックの溶解には相当の電力が必要となる。研究によると、産業用 3D プリンターによる環境への悪影響の大半は消費エネルギー量に関連しており、それは貨物輸送への影響の低下やリサイクルの可能性といった利点を上回るものだ。素材の選択は無視されるべきではない。だがエネルギー負荷が大幅に低いプリント方法を見つける必要性があることから、大局的見地から見れば、その重要性は低くなってしまう。

より優れた (だが高価な) 方法
期待を持てそうなアプローチのひとつが素材を一切溶かさない方法で、その代わりに結合剤と廃棄物を再生利用した物質を使用するというもの。これこそが、カリフォルニア大学バークレー校教授の建築家ロン・ラエル氏が目論んでいることだ。彼のデザイン事務所 Emerging Objects は、モジュール式建築要素向けの新材料と、有機的な形状作成の手法を実験中だ。ラエル氏は、いつの日かこの手法を建築物全体にまで拡大することを構想している。

3d プリント 建築物 構造

彼は、自身の作品の環境上の利点をひけらかすことにあまり乗り気でない。新たな研究により、3D プリントが持続可能性からはほど遠いものだと判明しているからだ。とはいえ、最終的に埋め立てごみとなる材料の再利用に加えて、耐久性と入手可能性を研究開発の主要目標に設定している。

セメント、廃品のおがくず、細断された古タイヤ、紙、さらには塩まで、多様な材料を使用するラエル氏の作品には独特の軽さがあり、先進のデジタル モデリングと演算処理ツールに支えられた外観を持つ。穴が開いた多孔質の壁は、単に見た目が面白いだけではない。同じ機能を持つ一枚板の壁に比べて、使用する材料の量とエネルギーが少なくて済む。

3D プリント 建築物 家

低コストのソリューションはラエル氏の目標とするところではあるが、現時点では Emerging Object を安価に入手できると期待しない方がいい。少なくとも当面は、大抵の建設プロジェクトでは高価なものとなるのが正直なところだ。

コストの問題と社会的懸念を考慮に入れる
だが、建築物の構成要素を 3D プリントで経済的に作るのが不可能というわけではない。中国の企業 WinSun に関する最新ニュースが正しいと証明されれば、の話だが。ラエル氏同様、この企業も居住可能な完全構造体へと組み立てられる構成要素をプリントで作成している。だがこの場合、約 186 平米の住宅 10 棟をわずか 1 日で建造でき、また 1 棟あたりのコストは 5,000 ドル。開発途上国で貧困や避難生活といった問題に直面している人々にとって、とりわけ前途有望な進歩だ。

WinSun の使用する材料には、特に「環境に優しい」要素はない。構造接着にセメントを使用するコンクリートは、一般的にエネルギー負荷も環境への影響も大きい。だが、居住空間を切実に必要としている人々へ安価かつ迅速に提供可能なシェルターの持つ社会的利点が優先され、それは後回しにされる。

人生同様にデザインにも妥協が重要
南カリフォルニア大学のベロック・コシュネヴィス教授も、3D プリント技術を応用し、貧困に悩む人々を支援し、彼らの生活環境を向上させたいと考えている。コシュネヴィス氏の事務所 Contour Crafting は、後で組み立てるための構成要素を製造するのではなく、文字通り建物をゼロからプリントすることを目標としている。氏の建設自動化技術では、ロボット アームとレール システムを使用して、ノズルからコンクリートを押し出して重ねていく。彼は今後の継続的な開発により、ゆったりとした居住施設をわずか 1 日で建設できるようになると予測している。

3D プリント 建築物 家

コシュネヴィス氏は、自身のアプローチの環境的利点について確信を持っている。ライフサイクル評価の比較研究では、コンター クラフティングの技術が環境へ与える影響は、従来のコンクリートとレンガによる工法に比べてずっと低いことが明らかになっている。だが同時に彼は、コンター クラフティングの環境への貢献について、より深く厳密な研究がされないまま判断を下すのは早急だと、その意見を修正してもいる。

こうした控えめな楽観が適切だと言えるだろう。特に、3D プリントのこれまでの歴史においては産業への応用に関して、同様の野心的な、そしてその多くは根拠のない主張が行われていたことを考慮すれば。ここで挙げる全ての例において、その形態はどうあれ、3D プリント製の建築物が環境への配慮に関して他より優れていると断言するのに十分なデータはない。

だが、差し当たってはそれでも構わないだろう。これが最終結論ではない。ここで紹介した先駆者たちは、今後その取り組みをますます洗練させていくだろう。願わくば、地球への総合的な利点を厳格に数値で示し、その情報を伝達し、向上させる決意を持って。

本記事は 2014 年にFast Company Co.Exist へ掲載された記事を許可を得て転載したものです。

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