マイ デザイン マインド: デザイン・リーダー、ジョン・マエダ氏

ジョン・マエダ
[提供: Benedict Evans]

ジョン・マエダ氏は、20 年以上にわたってデザインを定義してきた。とりわけ、デザインとエンジニアリング、テクノロジーという、相反する世界の間を橋渡しするという役割で。

マエダ氏は、そのキャリアを MIT メディア ラボでスタートさせた。彼はそこで、コーディングを行うデザイナーとデザインを行うエンジニアの育成を支援するための、学際的な実験的取り組みに着手した初の人物となる。この経験は、STEM (科学・技術・工学・数学) だけでなく応用数学にも力点を置いた STEAM を奨励し、教育における芸術の必要性の伝道を支援するという、その後の彼の長年にわたる重要な役割のきっかけを与えることになった。

ジョン・マエダ リーダーシップ デザイン
ジョン・マエダ氏の近著「リーダーシップをデザインする―未来に向けて舵をとる方法」(東洋経済新報社、2013 年) [提供: MIT Press]

マエダ氏は、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン (RISD) の学長を務めた後、ベンチャーキャピタル会社 Kleiner Perkins Caufield and Byers にデザイン パートナーとして参加。多作なスピーカー、執筆者であるマエダ氏は、教育、デザイン、テクノロジーの複雑な交点を探求し続けている。

そのマエダ氏が、彼が「コーディング クッキー」と呼ぶ、取っつきやすいコーディングとその人気の高まりに関する最新の自身の見解、シリコンバレーにおける多様性の問題、そして「慈善資本主義」が 21 世紀に実際に起こり得るかどうかについて、意見を語ってくれた。

「善を促進する力」となり、よりポジティブな社会的、環境的影響を及ぼすビジネスへの関心の高まりについては、どうお考えですか?
ベンチャー資本が席巻するシリコンバレーの一員となって以来、「ベンチャー キャピタル」ならぬ「バルチャー キャピタル (ハゲタカ ファンド、株式や債券などの資産を安値で買い高値で売って巨額の富を得るファンドの総称) 」などと、自分が属する業界のステレオタイプを提示されることが多くなりました。でも本来ベンチャー キャピタルとは、強大な善を促進する力となる可能性を持つ企業を支援するものです。1966 年には、当時 IBM の CEO だったトーマス・J・ワトソン・ジュニアも社員に対して「なぜなら、優れたデザインとは優れたビジネスなのだから」と書いています。

最終目標としてコーディングを学ぶことが強調されていることに、戸惑いを覚えることもあります。コーディングは、有意義な目標を達成するためのスキルに過ぎません。つまり、コーディングによって経済的、文化的領域がどのような影響を受けるのかについて懐疑的なままコーディングを学ぶのは、ポイントが外れていると言わざるを得ません。学生に、コーディングのためだけにコーディングを教えることはできないのです。それが、私が MIT で学部生時代にコーディングを学んだ方法であり、コンピューター情報処理が私を取り囲む世界のあらゆる側面にどう関わっているのかを理解するには、長い時間がかかりました。

コーディングと学生と言うと、あなたは STEM から STEAM への移行を提唱していることで有名ですね。コーディングについて、現在はどうお考えですか? コーディング スキルが有望なキャリアの道となり、教育において、小学校ですら関心が増大しつつありますが?
ジャンプするカエルや点滅するライトなど、初歩的で簡単なプログラミング システムの仕組みを考察することは、間違いなくコーディングへの興味を抱くきっかけにはなるでしょう。でもある時点で、そのスキルは、コードを再記述するには役に立たなくなります。「コーディング クッキー」の最初の一口は甘くても、優れたコーダーになるには、エンジニアとしてのスキルが必要となります。

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ロバート・ダウニー・ジュニアが演じる「アイアンマン 2」のトニー・スターク [提供: Paramount/Marvel]

だれもがエンジニアでしょうか? 答えはノーです。では、だれもがエンジニアになりたいと考えているのでしょうか? 私には分かりません。素晴らしいのは、今や私たちには「アイアンマン」のトニー・スタークのような人物がいるということです。20 年前を思い出してみてください。当時のコーダーと言えば、映画『ナーズの復讐/集結!恐怖のオチコボレ軍団』に出てくる、マスキングテープをぐるぐる巻きにした眼鏡を掛けた地味な痩せっぽちでした。それが今では、空を飛び、アウディ R8 を乗り回すトニー・スタークです。このイメージは、コーディング、そして「オタク」であることがクールだと認識されるようになるのに一役買っています。

テクノロジー業界、特にシリコンバレーは多様性に欠けていると批判されてきました。それに対する、あなた個人の意見は?
私にとって多様性は重要です。RISD の学長に就任した際、「影響力を持つ立場になったのだから、多様性を重要項目にしよう」と考えました。
この件への対処を支援するイニシアチブとして、人事部門のバイスプレジデントを担当者に任命しました。

RISD での任期中に、これが 21 世紀の問題であり、非常に特別な意味合いを持つのだと悟りました。単に肌の色の問題ではなく、ありとあらゆることに関係しています。そこで、私たちは RISDiversity と呼ばれる新たなプログラムをスタートさせました。

RISDiversity は、さまざまな人々を撮影した一連の写真と、彼らの感じ方がそれぞれどのように異なるのかについての物語です。エスニシティ (民族性) の異なる人々を目の当たりにすることが出来るという点で素晴らしいものでした。また、老若男女、肌の色に関係なく、皆同じように違っているのだということを理解することができます。このプロジェクトは、私たち全員が感じ方の違いという問題にいかに共鳴できるのかを探るものです。また、そういった違いを表面化させ、コミュニティに取り込むことで、コミュニティに与えられている機会を実感することができます。そういったときにこそ、好転の機が生じる可能性があるのです。

Redshift の「マイ デザイン マインド」シリーズは、各界で活躍するデザイナーによる洞察を紹介しています。

Interview and reporting by Paige Rodgers of Autodesk.

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