マイ デザイン マインド: Johnston Marklee のジョンストン氏が「Make New History」展で生み出す新たな歴史

johnston marklee シャロン・ジョンストン
Johnston Marklee のシャロン・ジョンストン氏 [提供: Eric Staudenmaier]

建築家のシャロン・ジョンストン氏、マーク・リー氏は美しい空間を生み出す。チリ沿岸の森林に覆われた一端にある、極めて優美なミルクホワイトのパビリオン。丘の斜面に驚くようなバランスで建つ、シームレスなカリフォルニアの住宅。そして、ダイヤモンドも切断できそうなほどエッジの効いた壮観な展示館。

こうした作品に見られる好奇心を刺激するような魅力と明快さ、そしてヒューストンの Menil Drawing Institute や内装改修を行った シカゴ現代美術館 (MCA) など、ここ最近の大型プロジェクトの数々が、設計事務所 Johnston Marklee を建築界のエリートとして寵愛を受ける立場へと押し上げた。1998 年にジョンストン、リー両氏により設立された、ロサンゼルスを拠点とするこの事務所は、著名な賞を 30 以上も受賞しており、その作品は多数の美術館で常設展示されている。

Johnston Marklee vault house
カリフォルニア州オックスナードの Vault House [提供: Eric Staudenmaier]

このデュオは先日、2018 年 1 月 7 日まで開催される北米最大の建築とデザインの展覧会、シカゴ建築ビエンナーレ 2017 の芸術監督に選出された。シカゴ文化特別事業局のマーク・ケリー長官との密接な連携のもと、ふたりは 20 カ国、141 名のアーティストと建築家を招聘し、今年のテーマである「Make New History (新たな歴史の創造)」に呼応したインスタレーションを生み出した。

このインタビューではジョンストン氏に、ビエンナーレについて、テキサス州マーファで過ごした時期、最近の美術館プロジェクト、新刊、建築に情報を提供する歴史の役割について話を聞いた。

シカゴ建築ビエンナーレ 2017 のテーマに「Make New History」を選択した理由は?
そのひとつは、初めての開催だったシカゴ建築ビエンナーレ 2015 で目にしたものに対する見解から来ています。材料の歴史、イメージの歴史、建物の歴史、都市の歴史というテーマに対して、建築活動の歴史が徐々に変化していく中で、作品を展開させていくことを建築家自身がどう考えてきたのかを考察する必要があると、ある種の切迫感を感じました。私たちが得た見解は、今の時代はイメージ、情報、知識が極めて刹那的であり、現行のアイデアの一部として歴史的な情報を理解する必要がなくなっているため、現代を過去の概念と結び付ける新たな方法を見つけなければならない、ということでした。

johnston marklee シャロン・ジョンストン マーク・リー
シャロン・ジョンストン氏とマーク・リー氏 [提供: Chicago Architecture Biennial]

ビエンナーレの監督を務めるのは、クリエイティビティの面でも運営面でも大きなチャレンジだと思いますが、どのように進めていったのですか?
私たちはキュレーターではなく建築家なので、その視点から取り組みました。作品をよく知っている数々の建築家と話をし、テーマを共有して、プロジェクトを提案するよう依頼しました。幾つかのプロジェクトは、よりタイトな視点を通して問題にアプローチした作品を特別に選出したものです。例えば「Vertical City」(建築史に残る 1922 年のシカゴ・トリビューン・タワーのデザイン コンペに対する見解を 15 の事務所がコンテンポラリーな約 4.8 m のモデルとしてデザインした展示) は、ハイポスタイル ホール (多柱式の空間) にいるような感覚をもたらします。これは、通常の表現ツールやスケールでは機能しません。一般公開される展示なので、訪問者が居住できるような環境における空間体験を生み出したいと考えました。それこそが、建築家がやっていることです。

テキサス州マーファでアートの世界に触れたことは、建築にどのような影響を与えていますか?
マーファの突出した点は、かなりの田舎であるにもかかわらず、都市的な伝統が息づいていることです。その一部は、ジャッド財団 (Judd Foundation) の作品によるものです。マーファ時代に出会ったアーティストたちとは親交が深く、今でもコラボレーションを行っています。そうした経験は、建築分野の理解にも役立ちました。マーファのコミュニティは非常に流動的で、アーティストたちは農場経営者や作家、地元住民と行動を共にしつつ作品作りに取り組んでいます。気取ったところもありません。誰もが発言権を持っていて、他人との間の境界線を気にすることがないのです。私たちは建築家であり、作家になるつもりはありませんが、自分たちの領域の外で共通の関心事について対話するのは、素晴らしいことだと考えています。

johnston marklee Chicago Architecture Biennial's 'Vertical City' exhibit
シカゴ建築ビエンナーレの「Vertical City」展示 [提供: Steve Hall]

ヒューストンの Menil Drawing Institute やシカゴの MCA 改装など、他のエキサイティングなプロジェクトにも参加されていますね。そうしたフォーマルな空間を訪問者が心地良く利用できるものにするために、どのような工夫をしているのですか?
マーファでの体験も生かして、外にいること、通りを歩くこと、アート空間にいることの間に境界を設けず、来る者を歓迎する雰囲気、寛容さとオープンさを浸透させることを重視しています。MCA 内部の新しい通路は、アーチ天井の張り出し窓がその空間を印象付けており、建築を明確に特徴付けるその手法にはある種の強さがあって、寛大さも感じさせる空間になっています。この建築様式は、その空間がどう使用されるべきかを特定しません。均衡や材料、照明などの建築上の目印を、空間と人を結び付けるのに使用しています。

この改修の主要部分となったのは、2 階へとつながる階段を通路の終わりに配置して 2 フロアをつなぎ、パブリック スペースを美術館内部へと広げて、建物内へのつながりを強化したことです。ライス大学建築学部長のサラ・ホワイティング氏は、私たちの著書の中や別の機会で、「中間の状態」を紹介しています。これは私たちが気に入っている表現なのですが、平均的な状態を指すのではなく、極めて明確に定義された建築と定義があいまいな建築の間で揺れ動く現在進行形の空間を指しており、MCA の新しいパブリック ゾーンを支える基本原理になっています。

johnston marklee Menil Drawing Institute rendering
Menil Drawing Institute. Rendering courtesy Nephew L.A.

Menil は、訪問者と彼らのアートとの関わり合いに対する民主的な視点が高い評価を得ています。入場無料、周辺の構内はオープンで、近隣への抜け道も数多くあります。Menil Drawing Institute 内部にはリビング ルームと統合された設備、回廊式で混合された空間を設けました。入口に階段は設けられておらず、エントランス ホールやロビーもありません。自然光がふんだんに取り込まれ、明るくて心地良く、また入ってすぐのところでミーティングが行われている場合もあります。アクセスを生み出し、多様な意見が取り入れられるようにするには、こうしたことが重要だと考えています。文化プロジェクトは、建物やプログラムとその内容に対して、訪問者のニーズや関心を反映したものにする方法を試行錯誤する機会を与えてくれます。

先日出版された「House Is a House Is a House Is a House Is a House」は、ガートルード・スタインの詩「聖なるエミリー」の一節 (Rose is a rose is a rose is a rose、「薔薇は薔薇であり、薔薇であり、薔薇である」の意) をもじったものですね。この本の意図を教えていただけますか?
この本の製作に着手した時点で、壮大な取り組みになるだろうことは分かっていました。自分たちのキャリアでは、まだモノグラフ (研究論文) は早過ぎるので、単にキャリアの初期に手がけたプロジェクトを要約するのでなく、自分たちの考えを未来へと投影して向上させるひとつの手段として、特定の作品コレクションや一連のアイデアをキャプチャできればと考えました。

そこで、ポートフォリオをよく知っているアーティストたちとコラボレーションを行いました。彼らは、私たちのプロジェクトの写真を撮り、彼ら自身のアーティストとしてのビジョンに結び付く面を捉えました。どのアーティストがどのプロジェクトを考察するということ以外は、何の制限も設定していません。コラボレーターのレト・ガイザー氏は、この本を座談やポートフォリオのコレクションとしてデザイン、編集しました。私たちにとっては、アーティストの目を通して作品を理解し、その新しい視点に反応し、内省しながら自分たちの作品について学ぶ機会になりました。

johnston marklee house is a house book
House Is a House Is a House Is a House Is a House」の中のページ [提供: Johnston Marklee]

フランク・ゲーリーが建築で、またガートルード・スタインが文学で行ったように、何か新しいものを生み出したいと願う若い建築家に対してアドバイスするとすれば?
今回のビエンナーレでは、「新しさ」についての問題、価値があるとみなされる新しさへの需要という問題についても取り上げています。私たちが問うているのは、「この“新しさ”の問題とは何を意味するのか? 目新しさは、それ自体が関心を引くものなのか?」ということです。

私たちは、真に斬新であることは非常に難しいことであり、新しいアイデアは製作と試行錯誤に熱心に取り組んだ期間を経てのみ出現するものだと考えています。それを実践する人々を見て思うのは、彼らは自分たちが取り組んでいる作品の内容が重要だと認識している、ということです。今や、都市の景観において象徴的なビルは、全体の 1% にも満たないものです。景観構造を理解し、都市や周辺環境をどう構築していくのかは、私たちにとっての緊急事項です。私たちが重要視したいのは、この点です。「Make New History」というテーマは、建築家が内省し、人々を結び付けるアイデアと分離させるアイデアを対比させることの議論を行うのに役立つと考えています。

Redshift の「マイ デザイン マインド」シリーズは、各界で活躍するデザイナーによる洞察を紹介しています。

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