カミ・コアの挑戦: BIM からデジタル ファブリケーションの実践へ

by Keiko Kusano
- 2016年11月7日
松山モノリス カミ・コア カミコア BIM
愛媛県松山市の結婚式場「松山モノリス」の内装。愛媛県松山市の織物「伊予絣(いよかすり)」にちなみ、織物のような文様を意匠に用いた [提供: カミ・コア]

BIM データを使用した建築確認申請などが可能となり、設計や申請、確認、検査に必要とされてきた図面や書類の大幅な削減が期待されている。そのメリットを享受してきた BIM エクスパートの山際 東氏が乗り出した新たなビジネスは、「紙」を芯材として使用した新しい建築パネルをコアにしたものだ。

ゼネコン、設計事務所、デベロッパーなど多様な立場で建築に関わってきた山際氏は、設計における無駄の削減、プレゼンやコラボレーションの効率化、さらには属性情報を活用した自動化の推進まで、BIM が実現するメリットに精通している。自らが代表を務める株式会社ビム・アーキテクツでは、さまざまな企業、プロジェクトにおいて BIM の活用を促進し、コスト削減や工期短縮などの数多くの実績を積み重ねてきた。

その山際氏が、別会社として昨年新たに立ち上げた株式会社カミ・コアは、紙を芯材としたユニークな「カミコアパネル」によるアートワーク(装飾)やアートグリッド(間仕切り壁、パーティション)を開発・販売し、その自社製品を使った内装提案までを行っている。会社設立のきっかけとなったのは、設計から設計監理までを一手に引き受けた愛媛県松山市の結婚式場、松山モノリスだった。施主側から通達された半年の工期を達成するため、内装アートワークまでも BIM に組み込んで、新建材のカミコアパネルがフルに活用された。

建築設計の世界では豊富な経験を持つ山際氏だが、カミ・コアの事業は新たなチャレンジだった。デジタル ファブリケーションには興味を持っていたという氏が、自らがバーチャルな BIM とリアルな製造をオーバーラップさせる事業を始めることになったのだ。「まさか自分がデジタル ファブリケーションをやるとは思っていませんでしたが、やってみたら“デザインをかたちにする”ことの面白さに目覚めました」。

このカミコアパネルは、通常の内装材と違って芯材 = 構造体が紙製であるのが最大の特徴だ。それにより実現する「強くて軽い」特性が、さまざまな点でメリットとなる。一般的な内装工事では、スケルトンの状態から内装の骨組みを作り、ボードを貼り、その上にクロスを貼るという工程が必要で、それらに適したスキルを持つ職人が必要だ。しかし、この新建材パネルを使えば、事前に工場でパネルを作り上げておき、現場ではそれを配置するだけ。手間も少なく、工期を大幅に短縮することが十分可能となる。

パネルの表面には木をベースとして透過大理石やロートアイアンなど、さまざまな天然素材を使用することができるので、デザインやシチュエーションに応じて、さまざまなテイストを表現することが可能。松山モノリスのデザインではロビーやバンケット、チャペルの内装に使われ、先進的で高級感のある非日常の空間をまとめ上げることに成功している。

内装の設計には Autodesk Revit を使用。パーツとなる自社パネルなどのファミリーを整備することにより、設計者はそれを組み合わせるだけで、さまざまなデザインを簡単に提案できる。また製作には Fusion 360 を使用し、ネジ 1 本までモデルとして作ることで、実際に組み上げた際の干渉などの問題点のチェック、製品の改良などをバーチャルに行うことが可能。そうした変更が Revit 上のモデルにも反映されるため、情報の整合性も確保されたる。

結婚式場の内装デザインは式場の印象を決める重要なポイントであり、集客、成約にも直結する大事な部分。「松山モノリスでは、『どこを切り取ってもアートです』と自信を持ってお客様にお勧めいただいているようで、かなり先まで予約が埋まってきていると聞いています」と山際氏は胸を張る。BIM からデジタルファブリケーションを実践することで、顧客を十分に満足させるだけのクオリティを、工期を短縮しコストをおさえながら実現することができた。

今後は、このパネルの一枚一枚に IC タグを付けていきたいと山際氏は語る。「IC タグでリアルなものとバーチャルなものを紐づけられ、管理がとても容易になります。Revit 上では ID を付けておけばいい。それによって、どこの空間に持っていくのか、どの場所のパネルなのかが一目でわかる。万が一破損してしまったとしても、BIMで管理しておけば、設計情報なども全てわかるので、交換が非常に簡単にできるのです。Fusion 360 上ではものを動かせるので、施工手順をムービーにすれば、さらに分りやすいですよね」。

新たなビジネスの展開
先日開催された Autodesk University Japan 2016 には、このカミコアパネルをベースとしたソリューションとして CORE-unit が展示された。各ユニットは壁・床・シーリングのパネルとコーナーで構成されており、FUNCTION BAND へ棚やコンセント、物入れなどを取り付け可能。会場に設置された、最小単位である2x2 m のユニットを組み合わせることで、建物の中に内装を作ることができる。オフィスや商業施設内の会議スペースやブース、コーナーとして、あるいは生活や宿泊のスペースとして、さらには家庭内や展示会場での空間作りになど、さまざまな用途が考えられる。

さらに、サブスクリプション型ビジネスも視野に入れているという。「例えば季節ごとにアートワークを変えたいとか、美容室であれば成人式の時期だけ個室がほしいとか、お客様からさまざまなニーズが出てくると思います」と語る山際氏が目指すのは、BIM と ICT、IoT を融合したサイクルを作り出し、単なる製品のリサイクルでなく「思いのままに進化する」循環型のサービスだ。

建築・設計分野における従来の「作りきり」のサービスから、環境に配慮した循環型のサービスへ。BIM をベースに、山際氏のビジネス構想はさらなる広がりを見せている。

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