リーン コンストラクションの最前線から得るコロケーションと BIM の教訓

by Timothy A. Schuler
- 2017年1月18日
リーン コンストラクション composite by Micke Tong
Image Composite: Micke Tong

コラボレーションは建設業界の非効率性に対する明白な防御手段となるが、簡単な解決策というわけではない。それは、コラボレーションが面倒を引き起こす場合もあるからだ。とりわけ大規模なビル プロジェクトで、数十もの独立した企業や、強い意見を持った多くの利害関係者の連動が必要な場合には。

だが、より良好なコラボレーションは必須だ。2004 年、アメリカ国立標準技術研究所 (NIST: National Institute Standards and Technology) は、非効率な行為の組み合わせ、つまりは「相互運用性の欠如」が、業界で年間 158 億ドルのコストを創出するとした。

ビル システムがより複雑化するにつれ、デザイナーと施工者間の分化が進むことになる。プロジェクトをコラボレーションによりスケジュール通りに予算内で遂行させるニーズも、さらに増大するため、まさにリーン コンストラクションや IPD (インテグレーテッド プロジェクト デリバリー) などの手法が有用となる。

カリフォルニア州レッドウッド市に本拠を構える巨大企業 DPR Construction でプランニングとスケジューリングを統率するケヴィン・ブリット氏は「建設プロジェクトには関係者が多く、他のチームメンバーの作業を予見するのは難しいため、その対応を時間的なバッファに依存しています」と話す。「状況によっては、実際には 2 日で完了すると思われる工程に 5 日を見積もる場合もあります。関係者それぞれが納入の遅延や情報の欠落、手戻りの可能性を把握しており、バッファを追加しがちです」。

このバッファは、業界では長年に渡って無駄に加えられてきたが、このまま継続させる必要はない。BIM とリーン プロジェクト デリバリー システム (LPDS)を活用し、主要な参加者をより早い段階で引き合わせるという建設プロジェクトへの総合的なアプローチが、こうした緩衝的な手段を用いる文化を崩壊させ、コラボレーションの文化がそれに取って代わるようになる。こうすることで無駄が削減されて、確実性が向上する。

リーン コンストラクション 遅延

「DPR、さらには業界も、指揮統制という考え方から、プロジェクト参加者の専門知識を活用して不確定要素を減らす、コラボレーティブかつ関与を促すような考え方へと変化しつつあります」と、ブリット氏。

カスタムビルドのリーン コンストラクション
フィットネス トレーナーは、誰もが「引き締め」は大変な作業だと言うだろう。建設業における引き締めは、チームメンバーの関わりの増加や基本的なプロセスの再考など、かなりの先行投資を意味する。だがブリット氏は、よりリーンなアプローチが時間とコストを削減し、チームの全員に、より安全で優良な環境の構築を可能にすると言う。

「現場の作業員に、彼らが必要とするツールと情報を提供できれば、プロジェクトの生産性を上げることができます」と、ブリット氏。

リーン コンストラクションは、 DPRが 1990 年の創業以来育んできた文化を、いろいろな意味で象徴している。同社は数千名に上る社員を雇用しており、『フォーチュン』誌の「100 Best Companies to Work For (働きがいのある会社トップ100)』に上げられている点もユニークだ。「弊社のコアバリューのひとつが “常に前進する” ことです。これは、継続的な自発的変化と向上を意味します」と、ブリット氏は言う。

では、リーン コンストラクション モデルへの転換は、実践のレベルではどうなるのだろう? 簡単に言うなら、それは会社毎に異なる場合もあるだろう。ブリット氏は、各プロジェクトですら異なると言う。「可変要素は、企業や人間によってそれぞれ異なります。私たちはプロジェクトを構成する人々をもとにして、そのプロセスを形作ります」。

リーン コンストラクション プランニング DPR
チーム メンバーが協働してフェーズ プランを構築および実行すれば、それぞれのワークフローの制約や計画通りに作業を完了させる技量を理解することができ、必要に応じた迅速な再計画が可能となる [提供: DPR Construction]

「ビッグ ルーム」に一堂に会する
同様に、コロケーションやプル プランニング (チェーン内の最後の人物から遡って進めるジョブ計画作成プロセス) など、リーン コンストラクションの基本戦略は、より繊細なアプローチから恩恵を受けることが多い。これは、DPR が経験から学んだ教訓だ。

「ビッグ ルーム」を例に挙げよう。ビッグ ルームとはプロジェクトのコロケーション用スペースの俗称だ。DPR の戦略テクノロジー イニシアチブを率いるアトゥール・カーンゾード氏は、自身のブログ記事 (英文) で、コロケーション用スペースとして使用されることの多い DPR の開放的なオフィス環境は、プロジェクトのデザイン初期段階や調整段階で有益なものになり得ると説明している。

だが、コロケーション スペースは単なる大部屋ではない。ブリット氏が 18 カ月に渡ってコロケーションの行われた大規模なヘルスケア プロジェクトを観察して理解したように、「チームは程なく、チームメンバーが隔てられたスペースに集って、他のメンバーに関係のない特定の論点について対処するための個別スペースを含む、分化された小部屋も必要だと気付くに至りました」。

また、ビッグ ルームのリーダーを務める人物は、そのときどきのチームの主役に応じて変更されるべきだ。プロセスのある時期には、情報のほとんどが建築家を介してやり取りされるが (この時点ではビッグ ルーム ミーティングを先導するのは建築家となるべきだ)、その後の段階ではゼネコンが先導するべきだ。

最良の BIM
カーンゾード氏は、BIM は特にプレファブリケーションの要素の観点からは有益だが、「全ての BIM が同じではない」とも話す。「ビルダーが関与しない BIM プロジェクトは、製造面では有益にはなりません。一方、デザイナーや製造者の意見を基にコラボレーティブに構築された BIM は、プロジェクト チームにとって非常に価値のあるものとなります」。

lean construction Big Room DPR
「ビッグ ルーム」と呼ばれる現場のコロケーション用スペースは、チームメンバー全員が質問に回答したり問題を解決したりする場を提供し、コラボレーションを促進する [提供: DPR Construction]

またチームは、「テクノロジーが利用できるからといって、物事を必要以上に複雑にしてしまう」ことのないよう、意識して心がける必要があるとブリット氏は付け加える。「効果的なリーン プロセスとそれを支えるテクノロジーは、チームのプロセスのニーズを支援し、効率性を最大限に高めるため、チーム全体が協働的かつ視覚的に関わることを可能にするものでなければなりません」。

ブリット氏の経験では、最も有益なテクノロジーとは、企業独自のプロセスに磨きをかけることを可能にするものだ。「データの視覚化は極めて有益です。テクノロジーを使用して、さらに先までワークフローを視覚化し、より多くの障害を計画から取り除き、進捗を追跡し、計画の機能していない箇所をさらに把握すること。それこそが私たちにとって、テクノロジーが最も効果的な場面なのです」。

DPR の基盤に根付いているのは、内省と継続的改善の精神だとブリット氏は話す。この精神は、繰り返し言及される次の一句に凝縮されている。「スコアを記録しないのなら、それは練習試合に過ぎない」。

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