リアル ライフ: バイオテクノロジーに影響されたデザインに光を当てるインダストリアル デザイナー、ダニエル・トローフ氏

Micke Tong

ダニエル・トローフ氏は珍しいタイプのインダストリアル デザイナーだ。インテリア デザインの修士号、それ以前のマーケティングと起業の学士号の取得も、その進路を設定してのことではない。インダストリアル デザイナーとしての人生を追求することなど、計画すらしていなかった。

だが修士過程の家具デザイン・コースが全てを一変させる。そして新たなプランが実行に移された。「オブジェの作り方については全く知りませんでしたが、その方法を学ぶきっかけになりました」と、トローフ氏。

Danielle Trofe's Vertical Hydroponic Garden. Courtesy Danielle Trofe Design.
ダニエル・トローフ氏の Vertical Hydroponic Garden [提供: Courtesy Danielle Trofe Design]

彼女は覚えが早かった。ニューヨークでの家具デザインのインターンシップ中に、彼女は垂直に並べられたボトルガーデンを目にして「これはもっと素敵なものにできるかもしれない」と考えた。そして、自分なりのバージョンを作成する。この初プロジェクトは大成功を収め (国際デザイン賞 IDA を受賞)、そこから本格的にキャリアをスタートさせると、ニューヨークのブルックリンに自身のデザインスタジオを設立した。それが 5 年前のことだ。

Danielle Trofe Design は、現在もあの Vertical Hydroponic Garden (水耕栽培を利用したボトルガーデン) や、キノコの菌糸体を (素材として使用するのではなく) 成長させた Mush-Lume 照明コレクションなど、評価の高い製品を提供している。トローフ氏のデザイン全てが、テクノロジー、サイエンス、デザイン、サステナビリティという 4 つの柱を具象化したものだ。「イノベーティブなテクノロジーや材料科学をデザイン プロセスに組み込み、持続可能なソリューションを作り出すことにフォーカスしています」と、トローフ氏。

5 年を経た現在も、氏の活動は留まることを知らない。彼女は、生物学にインスパイアされた自身のスタジオの守備領域をより深めるもうひとつのツールとして、バイオミメティクス (生物的模倣) 分野で2つ目の修士号を取得しようとしている。トローフ氏はこのインタビューで、需要を生み出すための忍耐や、ビジネスと芸術性のバランスを取る秘訣、全ての苦労を吹き飛ばす情熱について、インダストリアル デザイナーとして、またスタジオ オーナーとしてのリアル ライフを公開してくれた。

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Mush-Bloom Large Orb Planter [提供: Danielle Trofe Design]

新しいデザインのアイデアは、どのように生まれてくるのでしょう?
私のデザインは、例えばキノコから生長するランプのように素材から生まれる場合と、水耕栽培や、運動エネルギーや太陽エネルギーを活用するもののようにテクノロジーから生まれる場合があります。そこを出発点として、素材の制約内でうまくやるよう心がけています。自然からインスピレーションを受けることが多く、有機的な形状や構造を多用していますね。

使用してみたいと興味を引かれる素材はどのようなものでしょうか?
製品のライフサイクル全体について考えるので、新しい素材を検討する場合、それがどのようにして作られるのか、どこから来るのか、最終的にはどうなるのかが気になります。リサイクル可能か、生分解可能かなど、素材をあらゆる角度から検討するのです。

デザインのプロセスについてお聞かせください。
製図やスケッチは苦手なんです。ペンと紙でコミュニケーションができないんですね。Autodesk Fusion 360 をスケッチブックのように使用しています。スカルプティングで、モデリングやモールド、メッシュなどを活用して、いろいろと動かしたりします。これが私のスケッチ モードで、次にラピッド プロトタイプを行います。スタジオに3Dプリンターを備えているので、3Dプリント製カスタム パーツを使用して短時間で製品クオリティのハードウェア部品を作成し、手にしたときの感触やサイズ、バランスなど、オブジェクトのあらゆる部分を理解できます。迅速で安価であるほど良いものになります。

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Mush-Lume Trumpet Pendant [提供: Danielle Trofe Design]

これまでのデザインで、あなたにとって特に意味深いものは?
作品はどれも我が子のように感じられます。私のデザインスタジオは主要な幾つかの製品に集中して取り組んでおり、年単位で時間がかけられています。最初の作品は5年目になりました。ランプは2年半です。だから、どれもが近しい存在であり、それぞれ大切なものに感じられるのです。

キノコの照明は特に気に入っています。人々に考える機会を与え、それは多くのプロジェクトに共通するものです。デザインや美観、素材、機能に隠されたコンセプトを仕込んで、「こういったモノは全て、永久に存在し続けるべきなのか、それとも使命を果たしたら生分解されるべきなのか?」と人々に考えさせるのが好きなのです。

クリエイティビティとビジネスの両立はどのように?
バランスを取ることには苦労しています。スタジオ オーナーやデザイナー、パートタイムの学生にとっての現実は、とにかくバランスを取るのが難しいということです。平衡を失ってしまうと、人生の他の部分にも大きく影響してしまいます。なすべき最も重要なことを見つけ、優先順位を付けることが重要です。私はマーケティングから事務処理、会計まで全てを自分でやっています。たくさんのことを同時に行っていますが、全て私自身です。仕事ではなく、情熱であるからこそ、ずっと容易に感じらます。

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Mush-Lume Table Lamp [提供: Courtesy Danielle Trofe Design]

あなたにとって、毎朝仕事に向かうモチベーションは?
これまでの5年間で、「もう無理」と思ったことは何度もあります。「困難過ぎるし、利益を上げるのが難しく、持続可能なビジネス モデルなのかどうか分からない」と。それでも私を前に進ませたのは、それ以外のことはやりたくなかったから。今自分が取り組んでいることに情熱を感じているからです。私がやっている類いの作品には、需要は無いかもしれませんがニーズはあると思うのです。

スタジオ オーナーとしての役割で苦手な点は?
得意ではないと感じる分野、例えば自分のウェブサイトのグラフィック デザインやソーシャル メディアへの書き込みなどです。コミュニケートするには十分ですが、私が望むブランドとスタジオのイメージを完全に表現するには至っていない気がするんです。でもこれもギブ & テイクです。最も重要なことは何か? 資金をプロトタイプの促進に使用するべきか、あるいは対外的に見栄えを良くするために使用するべきか?これも、やりくりすべき点です。

現在のところ、ビジネスは望み通りの展開となっていますか?
どのような段階にあっても、前進し続けたいと思っています。このプロセスで学んだことのひとつは忍耐です。あらゆることに、予想を大幅に上回る時間がかかります。でも自分の仕事がオーディエンスの進化に役立つことは分かっているので、需要を同じ段階に到達させる必要があります。縦型のボトルガーデンを初めて製作したとき、水耕栽培について知る人はいませんでした。それが今年には、ミニチュア水耕栽培が一番人気のホーム製品のひとつとなっています。

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ダニエル・トローフ氏と Mush-Lume Hemi Pendant [提供: Courtesy Danielle Trofe Design]

Danielle Trofe Design の今後についてはどう考えていますか?
Danielle Trofe Design はバイオデザインの世界に飛び込むようになるでしょう。他のデザイナーも参加してもらいたいし、キノコの照明コレクションも拡大させたいと思っています。たくさんのことがスケールアップして規模を広げつつあります。でも一番の焦点は、私の作品の核である信念、つまりテクノロジー、サイエンス、デザインをひとつに組み合わせるというコンセプトをさらに進めることになるでしょう。

Redshift の「リアル ライフ」シリーズは、建築家やエンジニア、施工業者、デザイナー、その他のクリエイター/メイカーの取り組みや成功例、現実について話を聞いています。

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