サステナブル建築が改善する炭鉱地域のコミュニティ

by Kim O’Connell
- 2017年7月24日
サステナブル 建築
地熱パッシブ エネルギーを使用したメリーランド州フレデリックの住居プロジェクト デザイン [提供: Mills Group]

人口約 3,000 人のウェストバージニア州ウィリアムソンに、サステナブル デザインによる Health and Wellness Center が新しく建設された。ここは、かつて石炭で賑わった地域だ。

町の指導者たちは、住民の健康問題やオピオイド鎮痛剤依存症 (住民からは錠剤のピルと地名のウィリアムソンから「Pilliamson [ピリアムソン]」と呼ばれている) のまん延、さらには地域と人間、人間同士のつながりの欠如に懸念を抱いていた。

センターは、支援活動を通じてウィリアムソンに健康文化を生み出し、低迷するコミュニティの改善を目指している。まずは失業中の炭鉱作業員が、センターへのソーラーパネルの取付作業に登用された。これは再生の強力なシンボルとなり、炭鉱中心の地域でも、こうしたサステナブルな建築に貢献する業務など、環境関連の仕事が新たな経済を刺激できることを示す具体例となった。

Lobby sketch of the Health Plan building in Wheeling, West Virginia.
ウェストバージニア州ホイーリングの Health Plan ビルのロビーのスケッチ [提供: Mills Group]

Williamson Health and Wellness Center をデザインした Mills Group でサステナブル デザイン部門のディレクターを務めるライアン・ヘス氏 (LEED AP) は、ウェストバージニア州を拠点とする事務所で「ここはかつて、山に囲まれた谷間にある、自給自足の街でした」と語ってくれた。「その後、炭鉱業は不振になりました。でも屋上のソーラーパネルと新しいライト コート (採光用の中庭) を備えたこのビルは、ウェストバージニア州のこの地域における新たな未来を象徴するものです」。

ここウェストバージニア州は、米国内で最も希望を鼓舞する必要のある地域かもしれない。健康指標年報 Gallup-Healthways Well-Being Index によると、ウェストバージニア州は健康に関しては苦しんでいる。この全米 50 州の住民を対象とした大規模な調査に基づく指標は、個人的感情を目的意識、人間関係、財源、コミュニティ、身体の健康の 5 項目で評価。2016 年、ウェストバージニア州は全 50 州中の 50 位にランクされた。過去 4 年間のスコア合計も最下位だ。

A shading study of the Health Plan building in Wheeling, West Virginia. 
ウェストバージニア州ホイーリングの Health Plan ビルの日照阻害調査の様子 [提供: Mills Group]

極めて豊かな歴史と天然資源を持つこの州にとって、統計結果は憂慮すべきものだ。その要因は複雑だが、主な要因は天然ガスや他のエネルギー源との厳しい競争に直面し、炭鉱業が衰退したことだ。また、採鉱のプロセスで生じる環境悪化に対しても、否定的な反応が強い。ウェストバージニア州は 2011 年以降、炭鉱業関連の雇用の 35 %以上を失っている。ここ数年で、同州で 13 の炭鉱を運営する Patriot Coal など、多数の石炭会社が破産を申請した。また、ハンティントンのマーシャル大学による 2016 年度報告書では、石炭生産は 2040 年まで衰退の一途を辿るか平行線のままだろうと予測されている。

石炭はウェストバージニア州の将来へつながる道に見えたのかもしれないが、これが唯一の道でないことは明白だ。解決策は、かつてのブルーカラーの仕事を復活させるのでなく、サステナブルなエネルギー源や製品、ライフスタイルを促進するグリーンカラーの仕事を生み出すことかもしれない。モーガンタウンとホイーリングにオフィスを構え、建築やプランニング、歴史的建造物の保存を請け負うフルサービスの事務所、Mills Group は州内における環境関連の仕事を推進している。Mills Group のプロジェクト (Autodesk Revit でデザインされている) は、核家族向け住宅から Health and Wellness Center のような大規模な協会、商業建築まで幅広い。しかも事務所の中核メンバーは、その仕事が資源を抽出するのではなく、環境保護やサステナビリティを中心とする新しい考え方や産業を促進するようになればと考えている。

「より若い世代に、こうした新しい感性が見受けられます。彼らは生活や仕事への新しいアプローチを求めています」と、ヘス氏。「彼らは、炭鉱業に従事してきた父親や祖父に敬意を抱いています。ウェストバージニア州には勤勉な人々が大勢いる、という思いがあるのです」。

彼らは、とにかく職を必要としている。ヘス氏は、それはシャッター街や空き物件に対するクリエイティブな投資により生み出すことができると語る。ウェストバージニア州の外縁部に位置するホイーリングでは、Regional Economic Development Partnership (地域経済開発パートナーシップ) が、あるヘルスケア施設の場所の選出にを Mills Group に依頼した。オハイオ州を拠点に活動するヘルスケア施設の非営利コミュニティ組織 Health Plan は、移転に関心を持っていた。建築家たちが都市部に見つけたのは、4 階建てビルに適した 4,738 平米の空き地。その施設内には、バイオスウェール (低湿池) による豪雨時の雨水保水システム、十分な採光、その他の環境に配慮した機構が組み込まれる予定だ。さらに重要なことに、年内に完成予定のこのビルが、地域に 300 人もの新たな雇用をもたらすことになる。この街で実施される、実に 30 年超ぶりの建設プロジェクトだ。

「プロジェクトの発表以来、この地域に他のデベロッパーからも興味が寄せられています」と、ヘス氏。「私たちはサステナブル デザインのレベルをさらに向上し、支援活動と雇用の促進を通じて、コミュニティ内における建設環境のより良い理解が育まれるよう努力しています。長期的に見て、これらの建物がどのような特徴を持ち、どのように管理されていくのかを理解しようと、クライアントと連携してきました」。

ホイーリングの別の場所では、Mills Group は築 120 年の Flatiron Building を修復して、地元の投資家による、低層階が店舗、上層階がリバービュー マンションという多目的施設へ改築する取り組みを支援している。このプロジェクトでは、歴史的建造物を対象とする税控除を利用してコストを埋め合わせている。同州東部に位置するエルキンズでは、Mills Group は、町の歴史的建造物である車両基地のマスタープラン開発に従事している。100 年以上もの間、この車両基地に石炭が集められ、鉄道により各地に輸送されていた。

Preliminary massing options of the Health Plan Building in Wheeling, West Virginia.
ウェストバージニア州ホイーリングの Health Plan ビルの暫定量塊 (マッス) オプション [提供: Mills Group]

Mills Group は、環境関連の職業技能訓練を失業者や潜在就業者に提供する Coalfield Development Corporation などの環境に配慮する組織と連携している。認可を受けたゼネコンとして、Coalfield の作業員たちは、手頃な価格の住宅を建設し、廃屋を取り壊し、建材を再利用して家具を製作、販売する。Coalfield によれば、この取り組みにより、埋め立てゴミから 16,260 平米相当の建材が回収されている。

「この活動についての見方が賛成、反対、無関心のいずれにしても、この州には抽出の歴史があります」と、ヘス氏。「資源だけでなく、人材もです。皆がそれにうんざりしているのです。誰もが「才能ある人材をここウェストバージニア州に留まらせるにはどうすればよいのか」を考えています。「どうすれば州の資源を利用できるだろう?」と問うているのです」。

潜在的なもうひとつのエネルギー源と、それに付随する環境関連の仕事のひとつなり得るのが、この地域の地熱エネルギーだ。地熱エネルギーとは、地球から直接発せられる熱エネルギーだ。Mills Group は既にウェストバージニア州モーガンタウンとメリーランド州フレデリックで住宅プロジェクトに地熱を使用しているが、ウェストバージニア州には未開発の大きな可能性があると考えている。現在不況にあえいでいる、石油産業やガス産業向けの掘削装置の一部を地熱に再利用することも可能だ。

Design illustration of geothermal energy in Frederick, Maryland–based residential project.
メリーランド州フレデリックを基盤とする住居プロジェクトでの地熱エネルギー設計イラスト [提供: Mills Group]

「ウェストバージニア州は、その地形上、特に地熱利用に適しています」と、ヘス氏。「丘が多く、斜面を断熱用の盛り土として応用し、地熱のパッシブ エネルギーを利用することができます。斜面内部に建てられた住宅の背面では、暖房や冷房は摂氏 11.1 度の地温からスタートします。ここアパラチア地方は四季がはっきりしており、湿度の変動が激しいため、室温調整へ地熱を利用することは、とても有益です」。

だが、行動様式を変えるには時間がかかる。資金を確保できた時点でソーラーパネルを設置することを見越して、屋根の傾斜を最適な形にデザインしておくなど、時には未来志向の方策が必要となる。「クライアントとさまざまなオプションへの支援活動を行う際、その結果がプロジェクトスタート時の推測と大きく異なる、ということも多いのです」と、ヘス氏。

だが、この種のプロジェクトが次々と開始され、コミュニティの価値観の一部となるにつれ、これは単なるウェストバージニア州民の雇用の問題だけではなくなる。ウェストバージニア州、そしてウェストバージニア州を「ホーム」と呼ぶ人々の健康の向上につながるかもしれない。

 

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