英国郵便博物館が地下探索により歴史を 3D キャプチャ

by The Future of Making
- 2017年9月20日
英国郵便博物館
ロンドンの郵便配達を 75 年以上に渡って支えてきた、「メール レール」として知られる郵便鉄道が、3D スキャン技術によりインタラクティブな博物館として蘇った [提供: ScanLAB、郵便博物館]

「メール レール」として知られる郵便鉄道は、ロンドンの郵便配達を 75 年以上にわたって支えてきた。8 つの地下鉄駅を結ぶ全長 10.5 km のこの路線は、ロンドンの混雑する地上交通や代名詞である悪天候にも影響を受けない郵便の配達を実現したものだ。

郵便鉄道は 2003 年、陸路配達と比較した際の運営維持コストの高さが批判を受け、廃止されることになった。また、この路線に関連する地上の郵便仕分け郵便局のほとんども閉鎖されている。

その後 10 年以上に渡り、郵便鉄道と駅は「失われた」状態だった。その存在は人々から忘れられ、訪れるのはごくわずかな、恐れ知らずの違法な「都市探検家」たちだけ。しかし、それも 2017 年 9 月には変わる。自動運転されていた、この狭軌鉄道の歴史を振興すべく、マウント・プレザント (Mount Pleasant) 郵便鉄道駅にロンドン郵便博物館がオープンするのだ。

廃駅を博物館とするには、全面的な改築が必要だった。それは、この場所に残る歴史的建造物のほとんどが永久に失われるということを意味する。記念すべき対象そのものを取り壊す任務を課せられた郵便博物館は、改築に着手する前に何とかして、郵便鉄道のありのままの体験を捉えておこうと考えた。そして最新の 3D スキャンの能力を活用して、かつてないほど極めて複雑かつ詳細なデジタル モデルを作成した。

郵便博物館のデジタル コンテンツ開発マネージャーを務めるマーティン・デヴァルー氏は「当初の動機は、トンネルやプラットフォーム、作業用駅を細部に至るまで保存することでした」と話す。だが博物館はスキャン データを活用することで、この駅のインタラクティブなタイムカプセルを来訪者に提供したいとも考えていた。そのプロセスと最終的な画像が、この分野の先駆者による最新スキャナーでキャプチャできる、驚くべき精密度を明らかにすることになった。

英国 郵便博物館 3D LiDAR スキャン
ロンドンを拠点とする ScanLAB は 3D LiDAR スキャニングを活用して郵便鉄道システムのあらゆるディテールをキャプチャした [提供: ScanLAB 、郵便博物館]

郵便博物館は、当時の姿のまま郵便鉄道の複合施設をキャプチャするため、ロンドンを拠点とする 3D スキャニング会社ScanLAB にコンタクトを取った。ScanLAB は、手作りの建築モデルをコンピューターにインポートし、デジタル上で変更を加える手法を模索していた、当時建築を学ぶ学生だったマシュー・ショー氏とウィリアム・トロッセル氏により 2010年 に設立された。彼らは 3D LiDAR スキャンのテクノロジーに惚れ込み、この分野を専門とすることになったのだ。

科学的な目的の調査に重点を置く大半の 3D スキャン サービスとは異なり、ScanLAB の仕事の大部分は芸術分野で行われている。LiDAR を使用して、大聖堂や博物館、景観や世界各地の文化財、自然の 3D モデルをキャプチャ。そのキャプチャ結果は、エンジニアリング会社のオフィスでなく、ドキュメンタリー作品や博物館で使われることが多い。ScanLAB の取り組みは注目を集めつつあり、2015 年にはロサンゼルス・カウンティ美術館から、名誉ある助成金である Art and Technology Lab Grant を授与されている。

ScanLAB はFARO LiDAR スキャナーを使用し、マウント・プレザントの複合施設を 1 週間かけてキャプチャし、133 点ものスキャン結果を提供した (ScanLAB は対象の撮影に高解像度カメラも使用している)。チームは、外側から見た駅へのエントランス部分、地下のプラットフォームと作業エリア、そして古い地下郵便鉄道の約 1.6 km 分のスキャンを行った。その結果、施設の内部と外部の、シームレスかつ極めて詳細な 3D モデルを構築できた。

ScanLAB 共同設立者兼ディレクターのウィリアム・トロッセル氏は「建物の外観や内部、郵便車の横を通り抜けたトンネルの内部、作業場、作業場トンネルからプラットフォームに入るまで、素晴らしいショットが取れました」と話す。「金曜に置き忘れた (線路用の) スパナが、月曜もそのままにされてしまっている、そんな感じでした。作業服のオーバーオールはロッカーに残され、床の至るところにナットやボルトが転がっています。剥げ落ちたペンキも、良い雰囲気を醸し出していました」。

このスキャンのおかげで、博物館の来訪者はオリジナルの駅と、その魅力的な細部までを体験できる。来訪者はさまざまなスクリーンを通じ、ScanLAB のデータを基に作成された、郵便鉄道が稼働中だった当時の光景を提供する 3D レンダリングと触れ合うことが可能だ。「理想としては、スキャン結果を没入感を持った VR 環境にしたいと考えています」と、デヴァルー氏。「ロケーショントラッキングを強化した Oculus Rift で検証しました。バーチャルな郵便鉄道駅構内を歩き回れるのは、本当に驚くべき体験でしたね」。

トロッセル氏によれば、VR はまだ、LiDAR スキャンでキャプチャされた膨大な量のデータの真価を十分に発揮させるには至っていない。だが郵便博物館の来訪者は近いうちに、壁に塗られたバーチャルなペンキを剥がして、その中をのぞき見たり、さらには数十年前の労働者たちに混じり、バーチャルなタイムカードを押したりできるようになるかもしれない。

本記事は、エディター/著者のトム・ウージェック氏、協力者のマイケル・マッコール氏、オートデスクによる書籍「The Future of Making」(ものづくりの未来) のアウトテイクです。この書籍は、新興のテクノロジーとデザインの新たな手法が、ものづくりをいかに変化させるかを考察しています。

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