Loowatt が流さないトイレでマダガスカルの節水に貢献

提供: Loowatt

クリス・ホールデン氏はドツボにはまっている。いや、失敗したわけではない。「廃棄物問題」に、想像以上にのめり込んでいるのだ。

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[提供: Loowatt]

ホールデン氏は、ロンドンを拠点とする Loowatt でデザイン部門を統率している。Loowatt は特許を取得したシーリング・システムを使用し、排泄物を生分解可能なフィルムで密封するトイレを製造している。排泄物はカートリッジに格納され、容量や使用パターンに応じて随時処理される。このシーリング・ユニットは、既製部品や現地調達可能な資材を使用し、あらゆるタイプのトイレに取り付け可能。この特殊トイレは水を一切使用しないため、節水にも有意義だ。

Loowatt 設立者であり CEO のヴァージニア・ガーディナー氏は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでイノベーション・デザイン・エンジニアリングの修士号取得を目指していた 2008 年、このトイレのデザインを思い付いた。彼女のプロジェクトは、排泄物を商品に変える方法を考える過程で、トイレの水を流すという無用の行為を問題として取り上げたものだ。2009 年に大学と個人投資家から資金提供を得て、彼女は Loowatt Ltd を立ち上げる。

Loowatt のトイレは水やエネルギーを必要としないため (「流す」機構は手や足を使って機械的に操作可能だ)、資源消費型でなく、送電線網を利用せず金銭的にも持続可能なトイレを必要としている場所、つまり開発途上国に適している。密封型の筐体は悪臭が漏れるのを防ぎ、また人間が排泄物に接触する機会を排除する。この 2 つは、公衆トイレでは場所を問わずにしばしば問題となる点だ。

Loowatt は 2012 年末、首都アンタナナリボに公衆トイレ 1 基を設置するパイロット プロジェクトと共にマダガスカルに入った。その活動範囲は、2016 年末までにアンタナナリボに家庭用トイレ 100 基を設置するという新しいプロジェクトで、さらに広げられている。どちらのプロジェクトも、賄っているのはビル&メリンダ・ゲイツ財団からの助成金だ。

マダガスカル・アンタナナリボにおける2012年のLoowattパイロット プログラム展開の様子と、プロジェクトが首都の住民の生活とビジネスに与えた影響。

「私たちが活動している地域では、家庭用トイレは一般的ではありません」と、ホールデン氏は話す。「人々は屋外にある簡易トイレを使用したり公衆トイレまで歩いたりしていますが、公衆トイレは日中しか開いていません。需要は非常に高いため、かなりの場所に設置することができるはずです」。

マダガスカルにおいては公衆衛生と固形廃棄物が大きな問題となっており、WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme for Water Supply and Sanitation (WHO/ユニセフの水供給および公衆衛生共同監視プログラム) の 2015 年の調査によると、マダガスカルはトイレ普及率でワースト 4 位にランクインしている。マダガスカル総人口の 40% は戸外での排泄が当たり前であり、上水道網による飲料水を利用できているのは地方および都市居住者のわずか 7% でしかない。

「マダガスカルでは水不足が深刻で、トイレで水を流すことなど考えられません。その点、水を必要としない私たちのソリューションは有利です」と、ホールデン氏。

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適切な公衆衛生と飲用水の確保はマダガスカルにおいて大きな問題となっている [提供: Loowatt]

水を必要としないことに加えて、このトイレは地域密着型の嫌気性消化システムにもリンクするようデザインされている。嫌気性消化システムでは、微生物が無酸素の環境で有機性廃棄物を分解する。廃棄物の分解が進むにつれて発生するバイオガスは、調理や電力、その他の用途に活用できる。嫌気性消化によるもうひとつの産物である肥料は、草花や農作物に使用できる。これも開発途上のコミュニティにとっては恩恵だ。

これまでに Loowatt はマダガスカルに民間用トイレ 100 基のうち 40 基を設置しており、約260名が利用している。Loowatt は首都で開催されるローカル イベントでこのトイレを展示し、家庭への設置に興味のある人々からの問い合わせに応えている。 Loowatt のトイレは、サービスが実施されているアンタナナリボ内の特定の地域で使用可能となっており、既に市民に波及しつつある。

マダガスカル人の店主で 3 人の子を持つフェラーナ氏は、これまでは地中に穴を掘っただけのトイレを 3 家族で (保守、管理、掃除も含めて) 共同で使用してきた。現在は屋外に設置された Loowatt Tsiky Toilet を使用している。「くみ取り式トイレでは、子供が使う際に落ちるのではないかと不安でした」と、フェラーナ氏。「でもこれならもうそんな心配はありません。安全ですし、使用も簡単です。まさに生活が一変しました」。

「このトイレは田舎でも機能しますが、排泄物をクリーンな方法で回収して安全に輸送できるため、都市環境には特に適しています」と、ホールデン氏は話す。Loowatt はトイレ所有者向けのトイレのアフター・サービスと廃棄物処理を組織しており、またアンタナナリボには廃棄物を収集するトラックや民営の処理場が用意されている。

「これは世界各地の公衆衛生における最も大きな問題のひとつです」と、ホールデン氏は話す。「アンタナナリボの人口は 200 万人を超えますが、稼働中の汚水処理施設はひとつもありません。トイレ保有率が 50% を超える国々でさえ、インフラや組織上の問題により、排泄物の 90% が周辺環境に投棄されているのです」。

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マダガスカル・アンタナナリボに設置された新しい Loowatt Tsiky Toilet とマダガスカルの少女 [提供: Loowatt]

今年、GSM アソシエーション (GSMA) からの出資を得て、Loowatt はモバイル プラットフォームと、Loowatt システムにおけるトイレのアフター・サービスと廃棄物管理に関するデータを収集するアプリをローンチする予定だ。このアプリは輸送中の廃棄物カートリッジを追跡し、すべてが確実に処理場に搬入されるよう確認する。このアプリを使用するため、運送業者はカートリッジの QR コードをスキャンし、処理場でもう一度スキャンする。

マダガスカルにおける地盤をさらに強固なものにして活動範囲をさらに広げるため、Loowatt は首都に業務拠点を置いている。現在、Loowatt はマダガスカルに 10 名、ロンドンに 8 名の社員を擁している。大陸を超えたコラボレーションに、Loowatt のエンジニアたちは Autodesk Fusion 360 を使用。クラウドベースの CAD/CAM ツールを使用することで、ロンドンとマダガスカルのエンジニアは、同じオフィスで働いているのと同じようにデザインと設計のコラボレーションを行える。

このデザイン・ワークにより、Loowatt は一部のパーツの 3D プリントを開始することができるようになった。主にギアやその他の小さな機械部品など、トイレの見えない部分に使用されるものだが、現地の印刷会社を使用してマダガスカルで製造できる。パーツをより簡単かつ安価に製作できるということは、Loowatt とトイレ所有者にとって時間とコストの節約を意味する。「製品用のパーツを現地で製造できるようになるのが理想ですが、それにはまだ時間がかかります」と、ホールデン氏は話す。「プリントでどこまで実行可能なのか、様子を見たいと思っています」。

Loowatt の業務はマダガスカル内で拡大を続けている一方、本社はロンドンに留まっている。イギリスでの業務も天然資源保護への取り組みではあるが、ここでは主に、田舎の野外で開催され水の利用が限られているフェスティバルに重点を置いている。Loowatt カートリッジは簡単に交換できるため、従来のバキューム式簡易トイレよりも素早く設置が可能。。それがイギリス国内のパーティ会場の簡易トイレであれ、切望されている開発途上国でのトイレの設置であれ、Loowatt は世界の公衆衛生におけるリーダーとなる態勢ができている。

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