プロダクト デザイナーはタイムラインのハッキングを計画せよ: 旧正月がやってくる

by Sarah Stern
- 2016年3月2日

ニューヨーク市全体が毎年クリスマスには空っぽになることを想像してみてほしい。ニューヨークには 900 万近くもの人達が住んでいる。米国でも最大級の経済的ハブの休止が、休暇シーズン毎に起こったらどうだろう。それがもし、毎年 3 週間続くとしたら?

春節とも呼ばれる中国の旧正月では、まさにそれが起こっている。1 月下旬から 2 月末の期間、都市部で勤労する何百万人もの人々が家族に会うため、そこを離れて故郷へ向かう。大抵はこれが唯一の休暇であり、この慣習によって工場だらけの都市がゴーストタウンとなる。例えば深セン市では、人口 1,200 万のほとんどが帰省する。国家発展改革委員会は、今年の春節にあたる 40 日間で車や列車、船、飛行機による移動は延べ 29 億人に上ると推測している。

これは米国における休暇旅行の季節でなく、感謝祭やクリスマス、新年の休暇の極端なものと言える。

親密な貿易関係を持ち、中国の労働力へ大きく依存する米国のメーカー、とりわけ家電メーカーは、その製造カレンダーの中に毎年、潜在的に大きなギャップがあることに気付いている。

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アジアのパートナーによって製造された Dojo モデル [提供: NewDealDesign]

Flairの CEO であるダン・マイヤーズ氏は、「いまや従来の人形ですら、ある程度は家電なのです」と言う。「それはつまり、中国と仕事をするということです。そこにサプライ チェーンが存在しているのですから」。

この 1 月に Flair 統合冷暖房システムのプロトタイプを製造していたマイヤーズ氏と Flair の CTO であるケニー・テイ氏は、その生産サイクルのど真ん中に旧正月があることに気付いた。Autodesk Fusion 360 でデザインされた Flair は、スマートホーム システムとその能力を各部屋のサーモスタットとベンチレーターへ拡張する。

このボトルネックは、各メーカーが工場休止前に中国のメーカーへ押し寄せる 1 月中旬に始まる。休暇が押し迫る中、マイヤーズ氏とテイ氏は深セン市にいる中国のパートナーへ生産プロセスを急がせる代わりに、自らのタイムラインと優先度の再評価を行った。

「ほかの場所であれば移住が必要になるでしょう」とマイヤーズ氏。「でも、ここでは (旧正月は) 毎年の儀式です。金属加工プレスやレーザー加工など、外部のサービスに依存できないことが何度も起こると警告されました。街が空っぽでも、ほかにできることがあります」。

マイヤーズ氏とテイ氏は、プロトタイプを予定通りに作り、重要な回路基板の生産に重大な遅れを生み出さないよう、サイズの旧正月を春節の後まで先延ばしすることでソリューションをハッキングした。オートルーターを活用して、ファームウェア開発とテストの次の段階に進めるよう、最終的に必要となるものよりは大きいが作業可能な回路基板を作った。

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左: 2015 年の旧正月の前にオートルーターでカットされたプロトタイプの回路基板。右: 休暇後にサイズを調整した最終的な回路基板 [提供: Flair]

「ファームウェアの作業は自分達で行えるため、工場で正しい形になるよう1日か2日後に送って様子を見るより、機能する回路基板が手元にある方が理にかなっています」とマイヤーズ氏。

いまや Flair チームは、旧正月による中断期間を最大活用する術を理解している。工場が休止すると、テイ氏は深セン市のオフィスにこもってファームウェアに集中。これがプロトタイプの開発とテストにおける重要な時間となった。

だが先見の明と準備をもってしても、旧正月にはグローバルな関連性がある。中国、米国間の物資の移動には、オークランド港が重要な役割を果たす。昨年はこの港で約 230 万個ものコンテナが扱われた。

この港の月別の荷揚げコンテナ数を 1997 年まで遡ってみても、旧正月による減速は簡単に見分けられる。1 月と 2 月のコンテナ数は、9,000 から 30,000 も少ない。

昨年の減速はさらに劇的なものだった。2015 年の休暇まで、この港における毎月の荷揚げコンテナ数は 200,000 前後だったが、1 月になるとその数は 32% も減り、2 月にはさらに 12% も減少している。

オークランド港のコミュニケーション・マネージャー、ロバート・ベルナルド氏は「春節祭に向けて貨物が押し寄せ、中国が旧正月休暇に入って工場が休止すると落ち込みます」と語る。「2 月は大抵、出荷サイクルが遅くなります」。

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アジアのパートナーによって製造された VivaInk Fever Scout モデル [提供: NewDealDesign]

オークランド港はこうした変動に慣れており、それに従ってスタッフ配置を行っている。中国の工場と仕事をする米国の事業者全てがそうすべきだ。

モデル作成、中国のメーカーとのコミュニケーションの両方で Fitbit を支える、サンフランシスコを拠点とするインダストリアルデザイン会社 NewDealDesign は、旧正月中には業務を停止する。そのため、その前にプロジェクトが生まれたとしても、生産計画に時間の余裕ができる。

NewDealDesign のマスター・デザイナー、ヨシ・ホシノ氏は「できることは、春節が終わるまでスケジュールを延期するか、その前に終わらせるようアジアのパートナーへ仕事を急がせるかのどちらかです」と言う。「彼らを必要以上に強くプッシュしなくても済むよう、事前に計画しておいたのです」。

回路基板に関して NewDealDesign に“プロセスを前倒しで始めさせる”アプローチを採らせた Flair のハッキングにより、生産のタイムラインへ旧正月がどうインパクトを与えることを認識し、それに応じた調整をすることが共通のテーマとなる。

読者が中国で製造を行うインダストリアルデザイナーやエンジニアなら、Flair の例に習ってタイムラインをハッキングすべきだ。中国の労働者や工場に依存していても、赤いランタンが灯るや否やプロジェクト全体に急ブレーキをかけるべきだということにはならない。

まずはプロジェクトを、工場に依存するものと、そうでないタスクに分ける。そして中国のパートナーを必要とすることを、工場が休止する前に得られるようタイムラインを調整する。そして中断期間を活用し、旧正月中にはチームへ、工場へ依存しない作業へ集中させる。

だがこの中断期間中は、そうしたタスクを深セン市で行わない方がいいかもしれない。「人口 1,200 万の真新しい都市が、真っ暗になります」とマイヤーズ氏は言う。「食事できる場所も、コーヒーを飲める場所もない。食料品店にも行けない。まるでゴーストタウンです」。

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