機械学習が建設プロジェクト管理を容易にして大事故を回避

by Zach Mortice
- 2017年10月23日
機械学習 建設プロジェクト管理 Swinerton Builders
[提供: Swinerton Builders]

カリフォルニアを拠点とする Swinerton Builders テクノロジー ソリューションズ部門のマネージャー、ダスティン・ハーツアイカー氏は、断片化している建設業界においては「全ての建築物がプロトタイプ」だと述べている。

標準化が進まず、特別仕様の構成要素で組み立てられることの多いビルは、製品製造の世界では前代未聞のレベルのリスクと不確かさによる、容赦のない非効率な製造実験と言える。構造のプロトタイプをゼロから作るということは、ミスや出だしの失敗に悩まされる宿命から逃れられないということだ。

大規模で複雑なプロジェクトの全てにおいて、建設業界の各企業は、プロジェクトを通して何十万ものメモを取り、ボルトが壁にぴったりはまらない、床材が間違っている、雨押さえがないというような問題を洗い出している。プロジェクト管理に際して、こうした問題の優先度の判断は手作業で行われる、時間のかかるプロセスだ。

機械学習 建設プロジェクト管理 Country Club Towers 建設中
Swinerton Builders はデンバーの Country Club Towers プロジェクトに機械学習を応用 [提供: Swinerton Builders]

人間がコンピューターをプログラムするのではなく、コンピューターが自ら判断を下す術を学ぶ機械学習は、優先度判断プロセスの自動化に、大幅な時間の節約を実現できる。この種の人工知能は膨大なデータを分類するコンピューターに依存するが、それは今やインターネットがいとも簡単に提供できる。

ビル建設の計画から実現へのプロセスを簡単にすべく、 Swinerton Builders (ゴールドラッシュ後の 1888 年に、スウェーデン移民が設立) は、Project IQ というコードネームで呼ばれる Autodesk BIM 360 Field のアドオン (英文情報) を、デンバーで進められている Country Club Towers プロジェクトで試験的に活用している。Project IQ は機械学習を応用し、プロジェクトに最大のリスクをもたらす建設の品質、安全性の問題を自動的に識別する。それにより、チームは早急に行動を起こして大事故を回避し、コストの問題やスケジュールの遅延を引き起こす、後工程で生じる問題を防ぐことができる。

建設現場で成功、失敗かを決める要因は、プロジェクトに降りかかる問題の膨大な数ではなく、問題の種類と、それらにどう優先順位を付けるかになる。例えば塗装に手抜きがあった場合、その修正はテナントの入居前に必ず行うべきだ。だが水漏れの原因となる可能性のある、窓の雨押さえの取り付けミスの修正に比べれば、その優先順位はずっと下になる。

machine learning construction project management builders on the job
デジタルの実施設計図は建設プロセス全体を通して、かつてないレベルのデータへのアクセスをデザイナーやビルダーへ提供する [提供: Swinerton Builders]

想像してみよう。もしプロジェクトの現場で起こっていることを理解し、プロジェクト管理ソフトウェアを通じてチームが提供する情報を収集して、優先度を判断できるデジタル アシスタントがいたとしたら? こうした機械学習により、プロジェクト マネージャーと現場監督は、ハーツアイカー氏が言うところの「問題が起きてから対処するのでなく、先を見越した方法で」リスクを特定できるようになる。洗練されたメール管理システムを想像すると、その利便性が分かりやすいかもしれない。休暇から戻ると何千通もの未読メールがたまっているが、こうしたシステムであれば、最初に目を通すべき 20 件を抽出できる。

最も重要な価値は、「思ったほど単純ではないかもしれないリスクを理解するのに役立つこと」だと、ハーツアイカー氏は話す。「リスクの選択と抽出を自動的に行う機能は、全ての建設会社と仕事にとって、極めて有用です」。

こうして集約されたデータにより、注意すべき高リスクの協力会社を特定することも可能だ。「他の会社と比較して、高いリスクをもたらす問題などの要因が多いと、リスク ステータスも上がります」と、ハーツアイカー氏は話す。このプロセスは、度を超えた手抜き仕事に対して特別な注意を促して、ペナルティを科す。締切を守れないとリスク レベルは上がり、システムはレポートを作成して、さらなるリスクをもたらすビル システムを特定する。

「2 つの問題があり、一方は冷水器の傷を修理するべきだと言い、もう一方は水が壁に染み込むかもしれないと言っているとします。どちらも「水」のことを問題にしていますが、機械学習は「傷の修理は大した問題ではないが、水漏れは大きな問題だ」と賢明な判断ができます」と、ハーツアイカー氏。「つまりこの場合、2 つの問題のうち、問題 A よりも問題 B の方が重要だということを理解し、より早い段階で、人々の注意を引くよう問題を表面化させることができるのです」。システムが問題 A における水の存在に惑わされ、冷水機の傷を補修する優先度を手動で変更する必要があった場合は、システムはこの失敗から学んで、アルゴリズムの調整を行う。

機械学習 建設プロジェクト管理 タワー 初期段階
どのビルも、製品製造における不可視のリスクレベルで言うと、ある種のプロトタイプのようなものだ [提供: Swinerton Builders]

Project IQ は、高リスクの安全行動の識別にも機械学習を適用しており、それをチェックリストや観察を通じて行うことが多い。つまり同じ失敗を繰り返す「常習者」である協力会社を見つけ出し、彼らが高リスクだという評価を下すのだ。将来的には、プロジェクト マネージャーはデータを適用して、アメとムチの両方を提供できるようになるだろう。

ハーツアイカー氏が思い描いているのは、プロジェクト チーム全体と協力会社が、色分けされたリスク評価を閲覧できるようなシステムだ。これは、教室に全員の中間試験の結果が貼り出されるようなものだ。現場の入口で、日々更新されるスコアボードが作業員を出迎えるようになれば、これが「高評価を継続したいから、クオリティを向上させよう!」と考える、ちょっとしたアメになることは間違いありません」と、ハーツアイカー氏。「これは成功を収めたプロジェクトに、そして失敗したプロジェクトにもハイライトを当てることになります」。

機械学習 建設プロジェクト管理
機械学習は耐水処理や構造要素など比較的高リスクのシステムに優先度を設定できる [提供: Swinerton Builders]

フラグの種類には、失敗項目、修正の必要な項目、そして時折はその修正方法などが含まれる。アルゴリズムの基準の構築 (ソフトウェアが基準とするリスク評価の優先度の策定)には、特に優れた業績である協力会社に注目し、彼らの仕事をリバース エンジニアリングすることが不可欠だった。優れた協力会社に共通しており、アルゴリズムが他の協力会社に期待できる資質とはどのようなものだろう? それを特定できれば、リスクや緊急性の適切な調整に活用できる。

デジタルの実施設計図は、建設プロセス全体を通して、これまで予想し得なかったレベルのデータ、情報へのアクセスをデザイナーやビルダーへ提供する。次のステップは、ものすごい勢いで流れるデータを、スワイプひとつで扱える情報へと編集することだ。ビルダーが必要な情報を抽出する信頼性の高いツールを持てるようになれば、やがて起こる問題を予見できるようになる。恐らくは、スマートフォンで天気をチェックするのと同様のシンプルさと分かりやすさで。

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