クラウドが実現する、インド製造業の曇りのない未来

by Soo Song
- 2016年10月31日
インド製造業 クラウド テクノロジー with cloud tech
Image composite: MIcke Tong

世界各国の消費財に「Made in China」のラベルが付けられ、至るところで目にするようになっている。

だが、この 10 年で中国が急躍進を遂げた一方で、他の新興経済国もペースを挽回しつつあり、その成長をさらに加速させるツールを模索している。その一例となるのが、クラウド テクノロジーの活用では先駆けとなるインドと、その国内の小規模ながら強力なメーカー各社だ。

インドの製造業は、中国の歴史の影を追いかけるものとなってきた。2014 年、インド経済における製造業の割合はわずか 13%、一方の中国は 30% だった。それ以来、中国は製造業および輸出業全体の 22% を制している。両国とも非常に安い労働力を提供しているのに、なぜ企業はインドに集まらないのだろう? その理由は、インドにおける規制の重荷と、安定性に欠けるエネルギー網や乏しい交通網などインフラ整備の問題にある。

ここ数年の賃上げが中国の訴求力に影を落としていることもあり、インド政府はインフラ問題を解決する挑戦へ意欲的に立ち向かっている。ナレンドラ・モディ首相は 2 年ほど前、インドをグローバルな製造拠点へと変貌させる大型構想の計画に着手した。

Manufacturing in India
Precision Tool Room and Molding House 施設内部の様子 [提供: Autodesk India]

モディ首相による 2 つのキャンペーン
Make in India」という、そのものズバリの名が付けられたキャンペーンは、人口 12 億の国による大胆な手法として歓迎された。このキャンペーンには当初から、持続的な雇用創出や、より多くの海外直接投資、なお一層の製造業の拡大など、大きな期待が含まれていた。政府は新たな措置を盛り込み、国内企業や多国籍企業がインドに拠点を構えることを奨励。この構想の成功が、インドにどれほど関心が寄せられるかにかかっていることを理解していた。

モディ首相はその後、2015 年になって、もうひとつの軸となるキャンペーンを始動させる。今度は、インドの技術力とコネクティビティに焦点を置いたものだ。「Digital India」と銘打たれたこの計画は、デジタルにより実現する改革の新時代を追求するもので、全国民を 2018 年までに、政府が提供するサービスへオンライン アクセス可能とする。それが意味するところがグローバルに理解され始めると、その影響はすぐに国際的なものへと発展した。マイクロソフトは、インドをクラウド サービスの拠点として、インド全域のデータ センターに接続すると発表。同年、Qualcomm は、インドに芽吹きつつある起業シーンに 1 億 5,000 万ドルを投入した。

「Make in India」と「Digital India」が明らかにしたのは、このように長期間に渡る野心的な計画を実現させるには、それが単なる改革以上のものであるとグローバルに認識されることが重要だということだ。より良いパートナーシップとインフラを生み出すには、政府のプロセスも変わる必要がある。

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ムンバイでの「Make in India Week」のスタート [提供: Google, Image Capture February 2016]

政府の変革: 規制主体からビジネス パートナーに
モディ首相は、重要な公約を掲げる。2014 年 2 月の「Make in India Week」で、「政府の理念の徹底的な改革」を公表したのだ。旧態依然とした政府の方針を刷新することを目指し、それまでのような厳格で伝統的な規制主体ではなく、ビジネス パートナーとなると約束したのだ

この変革は既に利益をもたらしている。過去 1 年で複数の地方運営組織が、台湾の電子機器メーカー Foxconn などさまざまな企業と「Make in India」契約を交わした。この先 5 年間、Foxconn はインド西部のマハーラーシュトラ州のインド新工場と研究開発センターの建設に 50 億ドルの投資を行う予定だ

5 月、マハーラーシュトラ州政府はまた、産業省に登録された特定の小規模および中規模製造メーカーに対して Autodesk Fusion 360 を無償提供するという、オートデスクとの覚書に署名した。このパートナーシップは、クラウドベースの CAD/CAM ソフトウェア ツールへのアクセスを提供するだけでなく、各企業が適切なトレーニングを受けられることも保証している。統合を試みる前に、各メーカーはシステムへ親しむことが可能だ。

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Precision Tool Room and Molding House 製造プロセスの様子 [提供: Autodesk India]

まずは、こうした親近感を得ることが重要だ。クラウド アプリケーションは、その潜在的な安全性のリスクに対して、世界中で賛否両論の反応がある。だがインドの中小製造メーカーの多くが、その利点を活用することを選択した。彼らは、例えばクラウドを使用することで、離れた場所の間でも簡単に連携できことを理解している。切削、機械加工の工具を提供する中規模メーカー Unique Tooling Solutions Pvt. Ltd. は、2 都市で製造センターとデザイン センターを運営。このメーカーは地理的な距離を埋めるのにクラウドベースのソフトウェアを使用し、両チームが同時進行で反応よく、最新の状態で業務を遂行できるようソフトウェアが支援を提供している。

Unique Tooling Solutions ディレクターの V.S. クルカルニ氏は「各チームはソフトウェアとマシン プロセスを最大限に活用しています」と述べている。「重要なのは、私たちは単なるメーカーではなく、コンプリートなマシン ソリューションを提供できるという点です」。

そして、どのビジネスにも歓迎されるのが「低コスト」だ。材料、造型メーカーである Precision Tool Room and Moulding House ディレクターのサンジェイ・マッドホルカー氏は「Fusion 360 には CAM 機能があり、マシンのコストを正確に把握できるので、それがツールを完成させる成功率の向上に役立ちます」と述べている。このテクノロジーが Precision のモールド デザインとシミュレーションに役立てられ、その生産性を向上させているのは明白だ。

Manufacturing in India
[提供: Autodesk India]

クルカルニ氏も、これに同調する。Unique Tooling Solutions でのクラウドベースのデザイン ソフトウェアの活用が、時間のかかる製造プロセスの削減に役立っている。

「(このテクノロジーの) 導入によってプロセス全体で労働力や操業に必要な時間、デザインに必要となる時間の削減につながっています」と話すクルカルニ氏は、小規模企業が継続的に成功を収める、こうした時間の節約が極めて重要だと指摘する。

インドにおけるクラウドの課題
マッドホルカー氏は、「Make in India」と、それが小・中規模企業に提供する機会に手放しで称賛を送っている。自身の会社がこのムーブメントに参画するためのデジタル運用能力は、このムーブメントを導くイニシアチブとパートナーシップによって提供されたものだ、と氏は話す。だが、こうしたサポートにもかかわらずプロジェクトの多くはまだ初期段階にあり、結果を出すには時間がかかるとも認めている。

この予想された遅れの原因は、単純なことだ。インドのクラウドは、未だに黎明期にある。「クラウドベースのソフトウェアでは、デザインの速度はインターネットの速度で決まります」と、マッドホルカー氏。

実際のところインドの大部分では、クラウド テクノロジーを使用できないか、強力なインターネット接続が要求されるため、その使用が望まれていない、という状況だ。高速で安定したネットワーク接続がなければ、データ転送など重要なプロセスが非常に低速になってしまう。だが、希望はある。

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[提供: Autodesk India]

「インドへ 4G が到来することで、(クラウド テクノロジーは) ますます現実味のあるものになるだろうと期待しています」と、マッドホルカー氏。切望されているオンライン インフラをインドにもたらすべく「Digital India」は奮闘中だが、その検討課題が高速インターネット接続だ。

こうした全ての要素が揃えば、インドの製造業界は大きな将来性を持つだろう。クラウドにより、単に効率が上がるだけでなくシームレスな連携が実現する。メーカーがプロセスの効率と精度を向上させられれば、より高品質な製品がインドで製造されるようになる。そうした製品への需要が爆発的に増えれば、インドはさらに世界的な競争力を持つ国となるだろう。

このムーブメントにおけるクラウド テクノロジーの導入は、インドにおける根本的なイノベーションが起こっていることの表れだ。それが実現すれば中小企業各社は、変化がゆっくり浸透するのを待つより個人に導かれる形で新しいテクノロジーを取り入れ、必要なリスクを負うようになるだろう。大幅な成長を経験中の国家では、こうしたイノベーションがキーとなる。そして幸いにも、全てはまだ始まったばかりだ。

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