時間もテクノロジーも、常に先へ進み続ける。特に、ハイペースで絶え間なく進化するハードウェア製造業の世界では。

材料やコネクティビティの進歩だけではない。BoltLemnos Labs などハードウェアのベンチャー資本企業やインキュベーターは、高価なツールや機械に対するシード ファンディングから、ハードウェア エキスパートやイノベーターとの貴重な時間に至るまで、従来のビジネス手法を書き換えようとしている。また都市部の物件を新世代のソフトウェア スタートアップのために利用する不動産会社 WeWork などにより、ワークスペースの共有も増加傾向にある。

では、サイズを問わず、最新の製造業界のトレンドからメリットを得ているビジネスは、今後どうなるのだろう?

製造業界のトレンド 材料テクノロジー フューチャリストとして知られるジョーダン・ブラント氏は「物理的な製品を製造するスタートアップの熱意、活動ペースは飛躍的に上昇しています」と解説している。「現在、最も興味を持たれているのは、こうした企業の長期的な有用性、そして製造の規模生産の実現性です」。

以下に、ブラント氏が明かす 4 つの製造業界のトレンドを紹介しよう。

1. 次世代材料
ブラント氏は、真の革命はデータでドライブされる材料デザインにあると考えている。現在、製品に使用されている中身の圧倒的多数は、アルミニウムや熱可塑性プラスチック材料、セラミックなど標準的で均一なバルク材から成る。そのほとんどは第 1 次産業革命以来存在している成型や鋳造、成形、機械加工といったプロセスを経て製品に変わる。このプロセスでは、材料の実際の構造やパフォーマンスを変更するように調整できるが、バルク特性による制約はそのままだ。

アディティブ マニュファクチャリングは、材料を望む場所へ正確に配置していくプロセスであり、全く新しい機会を生み出す。今や、製品をデザインするように材料をデザイン可能となり、熱を加えると縮む金属、(蝶の翅と同様に) 色素ではなくミクロ構造により生み出される色など、興味をかき立てる特性を用いて「計算材料」の類を生み出すことができるのだ。「これを「メタマテリアル」と呼ぶ人たちもいます」と、ブラント氏。「材料科学におけるポストモダンの世界です」。

今後、こうした新しいメタ機能を本当の意味で活用できるスタートアップが、先導的な立場に立つようになるのは確実だろう。

2. クラウド
あちこちで耳にするが、「クラウド」はいまだに不可解だ。Dropbox、Google Drive、Box など名の通ったホスティング サービスのおかげで、クラウドの最も一般的な用途はオンライン ストレージだと考えられているかもしれない。だが、労働力がよりモバイルかつグローバルになる中、ソートリーダー達にとって、これは以下のような、いま最もホットな問題へ対する回答のヒントとなった。非常に特殊で、しかも非常に大きなことの多い種類のデータを扱う異種チーム間で、どのようにリアルタイム コラボレーションを実現すればいいのだろうか?

製造業界のトレンド クラウド デザインそれは、コミュニケーションから始まる。先日公開された「Business Insider」の記事 (英文)article によれば、リアルタイム メッセージング&コラボレーション ツール Slack の評価額は現在 20 億ドルを超えており、ユーザー数は 50 万人を誇る。シンプルで洗練されたプロジェクト管理オンライン ツールは巷にあふれている。Google Docs、GitHub (ソフトウェア コーディング向け)、Splice (音楽向け) などがそれぞれの分野でコラボレーションの問題の解決に役立っているが、映画や建築の分野には、業界に特化したソリューションが必要だ。

「ビルを建設したり自動車を設計したりするには」と、ブラント氏。「電気モデル、構造モデル、デザイン モデルなど、それぞれが独自の専門分野に重点を当てたモデルを用いる、大規模なチームが世界各地で必要です。どんなシステムでも 10 ~ 20 の異なるモデルが使用されます」。

Autodesk Fusion 360 のようなソリューションと、リアルタイム マークアップやレビューを含めて 3D モデルや仕様を共有できる機能は、製造スタートアップへ、より低リスクで規模を拡張する機会を提供する。Autodesk PLM 360 などクラウドベースの製品ライフサイクル管理 (PLM) ソリューションは、ビジネスにおいて、より効果的なサプライ チェーンとのコミュニケート、その管理が可能。これは諸経費を節約し、再加工の量を最小限に抑えて、市場投入までの時間を短縮するのに役立つ。

3. 製品のパーソナライゼーション
ここで言うパーソナライゼーションは、 NIKEiD や、コカコーラ ボトルにガールフレンドの名前を入れるという類のものではない。パーソナライゼーションの次なる波は、色のカスタマイズというより、パフォーマンスの最適化が主となる。靴の「見栄え」だけでなく、それが足へどうフィットし、ユーザー独自の競技スタイルにどう影響を与えるのかが重要なのだ。

製造業界のトレンド 3D プリントオーダーメイドのアパレルは既に増加しており、広告業界も足並みを揃え、数々の企業が完全な受注生産の商品を提供するようになっている。もちろん、3D プリントも既成概念の枠を超えようとしている。特に顕著なのが医薬分野だ。補聴器、歯科矯正用の固定器具、その他の医療用インプラントは、向上するパーソナライゼーションの恩恵を受けている。例えば中国の 3 歳児ハンハンは、今年夏、3D プリントで作成されたチタン製頭蓋骨移植で先天性の欠損を修復する処置を受けた。また 22 歳のオランダ人女性は、頭蓋骨全体をフル 3D プリントによるプラスチック製の頭蓋骨で置換する手術を受けている。これは世界初の処置例となった。パーソナライゼーションとは、まさにこのことだ。

だが需要を拡大させているのは、こうした極端な例ばかりではない。経済が弱体化すると、人々は合理化を目指す。大量の使えない「モノ」に束縛されることを嫌がるようになるのだ。目的に合わせて作成された商品は、ブランドへの親近感と、より満足度の高い消費者体験を生み出す。これはまた、理論的には生産性の向上にも役立つ。

「新商品を売り込む方法は何とかして見つけられるにしても、生産性を根本的に向上させない限り、本当の意味で経済の発展に役立つことはありません」と、ブラント氏。

4. コネクティビティ
「私たちは今、その新しい空間の入口にいます」と、ブラント氏。「ウケを狙うキッチュなものから、実際に影響を与える方向へと進んできました。デバイスはひとつの側面でしかなく、その情報を用いて行うことから真の価値がもたらされます。よりよい選択を行うのに役立つもの、ユーザーのために選択を手助けするものとは何なのでしょうか?」

製造業界のトレンド IoT人々はつながりの世界 を生きている。Fitbit や Nest Learning Thermostat から、インターネットに接続できる冷蔵庫まで、デバイスは暮らしをより良く、効率的なものにするのに役立つ膨大な量のデータを収集している。だが、これらのデータ全てを解釈する時間のある人などいるだろうか? いったい誰が、読者のAppleヘルスケアのデータをじっくり研究し、最適なトレーニング プログラムやダイエット プランを提供してくれるのだろう? 分析がなければ、Fitbit はただの高価なアクセサリーに過ぎない。つながるデバイスの次の波は、ただ事実を提示するだけではない。判断を下す手助けをしてくれるようになるのだ。

パロアルトを拠点とする Cubic Robotics が開発した Cubic は「個性を持ったパーソナル AI」だと謳われている。Amazon Fresh もハイパーコネクティビティに向けて準備を整えつつあり、ブラント氏によれば「ユーザーがその週にどれくらいトレーニングを行ったのかを調べ、自宅にいる時間帯を把握して、適切な食事を注文する」ことができるようになる。多くのビジネスでビッグデータが活用されているが、分析とAIの組み合わせは、知覚を持った人工意識の到来が差し迫っている前触れなのだろうか?

「皆が、IoT と「ターミネーター」の世界を結び付けて考えているのかどうかは、私には分かりません」と、ブラント氏は冗談めかして話す。「どちらかというとそれは、四足歩行ロボット工学の研究分野での話だと思います。私自身は、信頼できるデバイスと AI があるのなら、日々の様々な意志決定から喜んで解放されたいと考えます」。

 

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