医療シミュレータ : Escobar Technologies が挑む真のディスラプション

by Kimberly Holland
- 2016年7月28日
Escobar Technologies の腕静脈シミュレータ
完成した腕静脈シミュレータのプロトタイプ [提供: Escobar Technologies]

米国の医療制度は、これまで以上に複雑で入り組んだものとなった。医療制度への需要が年を追うごとに重くのしかかるようになり、適切な訓練を受けた看護師や医師、専門医、医療技術者の必要性は増え続けている。こうしたプロフェッショナルたちは、そのトレーニングにますます 医療シミュレータ を活用するようになってきている。

医療シミュレータには、腕など体の部位をシミュレートしたシンプルなものも、実際の患者をシミュレートした複雑なものもある。こうした教育機器は病院や大学、医療シミュレーション センターで使用される。

医療シミュレータ レンダリング
Autodesk Fusion 360 による、取り外し可能部分を除いた腕静脈シミュレータのレンダリング [提供: Courtesy Escobar Technologies]

医療従事者が、そのレベルを問わず訓練を受けられるようデザインされた医療シミュレーション センターは、質が高くリアルな診療体験を提供する。唯一の違いは、実際の患者が存在しないことだ。医療従事者は、問題の解決法や最新の技術、効率的なコミュニケーションに関する実践的な指導を、シミュレーション環境で受けることができる。こうした訓練施設の評価は高まりつつあり、そこで使用される医療シミュレータ機器のニーズも、同様に大きくなっている。

医療シミュレータ業界は現在 3 社が支配しており、2020 年までに約 9 億 6,980 万ドルに達すると予想される市場を占有している。Escobar Technologies の医療シミュレータ デザイナー兼代表取締役デイヴィッド・エスコバー氏は、これらの企業にはほぼ競争が無いため、技術革新の試みを止めてしまっていると話す。

「製造とビジネスの面を見れば、各企業はとてもうまく構築されていると言えます」と、エスコバー氏。「何かが壊れたら、彼らに頼るしかないのですから」。

救命士として 10 年の経験を持つシミュレーション スペシャリストのエスコバー氏は、今日最も広く使用されているシミュレータの主な問題として幾つかの点を挙げている。それは労働集約型であり、清掃が難しく、交換が高価で、ほぼ単機能であるという点だ。

医療シミュレータ 取り外し可能部分
腕静脈シミュレータの取り外し可能部分のレンダリング [提供: Escobar Technologies]

「こういったシミュレータの一部には、ホームセンターの店先にあるチューブとなんら変わりないものが血管として使用されています」と、エスコバー氏。「そうしたチューブは血管とは感覚が異なり、血管のように止血もできず、漏れも多いのです。メンテナンスも困難で、交換もかなり難しい。開発エンジニアが製品のエンドユーザーであれば、こうはデザインしなかっただろうと私は確信しています」。

こうした点が、エスコバー氏と彼の弟で産業デザイナーであるジョセフ氏が医療シミュレータ市場を一変させようと決心した理由の一部になった。Escobar Technologies を通じて、兄弟は訓練をより効率的なものとし、最終的には患者治療に変革をもたらそうとしている。

「より優秀な製品を、より少ない経費で作ることで、製品を支えるデザインとイノベーションにより多くの資金をつぎ込めるということは分かっていました」と、エスコバー氏。「だからこそ、 Autodesk Fusion 360 など、自分が自由に使えるツールを用いて前進を始めたのです」。簡単にデザインが行える Fusion 360 の機能性と 3D プリントのパワーを組み合わせることで、氏は自身の医療シミュレータを現実のものとすることができた。

医療シミュレータのアニメーション
Autodesk Fusion 360 で示された組立機構 [提供: Escobar Technologies]

エスコバー氏は医療シミュレーション訓練センターに常勤しており、高まってきた医療シミュレーション運用のニーズに応えるシミュレータの製作と構想に、実務での知識と、経験を通じて蓄積されたフィードバックを役立てている。現行のモデルと比較すると、Escobar Technologies によるシミュレータは迅速な革新サイクル、多重進行機能、低価格の 3 つの点で優れたものになる予定だ。

この兄弟が初めてデザインしたデバイスが、最もベーシックな腕静脈モデルだ。これは医療従事者に静脈注射の適切な技術訓練を提供することを目的としている。現在市場に出回っている病院や訓練センター向けの静脈注射用の腕モデルはほぼ 1,000 ドルだが、Escobar Technologies 製モデルは 500 – 600 ドルを目標としている。

しかもエスコバー兄弟のモデルではシミュレータを 1 台購入するだけで事足りる(1 台で静脈と動脈両方の処置をカバーする)ため、さらにコストを節約できる。「現在は、1 つの処置を教えるために 2 つの製品を購入する必要があります」と、エスコバー氏。「私たちは両方の処置を 1 台のシミュレータに組み込みたいと考えています」。

より大型で複雑なシミュレータには、10 万ドル以上のものもある。さらに悪いことに、こういったシミュレータが必ずしも正しく機能するわけではない、とエスコバー氏は付け加える。「そうしたシミュレータは非常に複雑です。使い方の問題も一部ありますが、そのほとんどは粗悪なデザインから来るものです」。

医療シミュレータのプロトタイプ
製作中のプロトタイプ [提供: Escobar Technologies]

テスト準備を整えた Escobar Technologies 初のプロトタイプは、2016 年中旬にプリンターで作成される予定だ。ベータ版は厳選された医療関係者やシミュレーション センターに提供され、実地テストが行われる。エスコバー兄弟は、潜在的顧客とのリアルタイムでの連携によってデザインの適応や調整を行い、より大規模市場向けの製造に適した、新たな反復を生み出すことができる。クラウドファンディング キャンペーンも、2017 年末までにシミュレータをカスタマーに出荷するという、兄弟の生産目標を達成する後押しとなった。

「製品の仕組みと人々が望むものに関する知識を持つことが、私たちに大手企業と張り合う力を与えてくれます」と、エスコバー氏。「結局のところ、私たちが医療シミュレーションでやろうとしていることは、患者治療を向上させ、医療従事者間のコミュニケーションとチームワークを向上させることなのです。人助けに莫大な費用がかかってはいけません。それが訓練用の装置であるなら、なおのことです」。

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