太陽光マイクログリッドがハリケーンに襲われたプエルトリコに再び光を

マイクログリッド
2017 年 10 月、ハリケーン・マリアがプエルトリコの建物と送電網を壊滅させた

4 月に発生した島内全域にわたる停電の数日前には、プエルトリコのほぼ全域で電力は回復していた。プエルトリコの電力当局によれば、電力が供給されていないのは全顧客のわずか 3% に過ぎなかった。その発表直後、倒壊した送電塔の送電線に関連する事故により、プエルトリコは突如として暗闇に包まれる。住宅、商業用ビルのほぼ全棟への電力供給がストップした。

ラスベガス消防署のリチャード・バート隊長によると、国内の送電網がダウンした際、島内最大の都市サンフアンと、島東部の小さな町ナグアボの 2 カ所にある消防署では電力が確保されていた。これらの消防署では、太陽光マイクログリッドから電力供給を得ていた。屋上に設置されたソーラー パネルが電力貯蔵ユニットに接続されているのだ。「この国で機能する唯一の緊急電話番号システムはサンフアンにあり、私たちが設置したものです」と、バート隊長。「100 万人の命を守ることは重要です」。

昨年 10 月、プエルトリコ沿岸地域がハリケーン・マリアで大きな打撃を受けた後、バート隊長はベイエリアを拠点に活動する NGO の Empowered by Light、米国最大の家庭向け太陽光エネルギー関連会社 Sunrun と連携して、サンフアンの 2 カ所とナグアボの 1 カ所の消防署の屋上へマイクログリッドの設置をコーディネートした。また Zero Mass Water とも連携し、ウトゥアドの消防署に太陽光エネルギーで駆動される飲料水生成装置を設置している。

24 枚のパネルから構成される、Autodesk AutoCAD でデザインされた 6.6 KW のソーラーシステムの設置には 2 日もかからなかった。このパネルは鉛酸蓄電池システムに接続され、公共の送電網から独立した自家蓄電が可能になっている。バート隊長は消防署の人命救助活動において、管制システムへの電力供給、ラジオの充電、扉の開閉、照明の常時点灯などのため、電力確保は絶対に不可欠なものだと話す。

マイクログリッド 屋上 ソーラーパネル
4 月の島内全域にわたる停電後、消防署の太陽光マイクログリッドが初期対応の従事者に最低限の非常用電力を提供した [提供: Sunrun/GivePower]

Sunrun の広報部門でシニア マネージャーを務めるアンディ・ニューボールド氏は、同社がプエルトリコの最初の訪問で 6,800 kg の太陽光設備の輸送をコーディネートしたと話す。そこには、軍用輸送機ロッキード C-130 ハーキュリーズに積み込む前に、設備をマイアミで保管することも含まれる。積み荷には、ソーラーパネルと電力貯蔵ユニット、Zero Mass Water から寄贈された太陽光エネルギーで大気中の蒸気から飲料水を生成する装置、GivePower から供給された太陽光エネルギーで駆動される脱塩装置も収められていた。Sunrun は、さらに 5 カ所の消防署に電力を供給し、食料品の販売店や病院に追加の太陽光エネルギー設備を提供する計画だ。

バート隊長の行動のきっかけとなったのは、ハリケーン・マリアの余波が続くプエルトリコで、消防士たちが緊急通報を受けていないという報告だった。バート隊長は、2017 年 10 月 1 日にラスベガスのカントリー ミュージック フェスティバルで発生した銃乱射事件を経験したばかりだった。警備勤務中だった彼は、悲痛な通報を受けて対策チームの調整を行っている。その後、自立型の太陽光マイクログリッドと、プエルトリコでの危機における初期対策を行う者たちの連絡手段との間で、点と点が結び付き始めたのだ。「人々を適切な場所へと誘導し、生き延びさせられるかどうかを決めるのは、連絡手段でした」と、バート隊長は話す。

その後まもなく、バート隊長は、サンフアン消防署長アルベルト・クルス氏とプエルトリコ行きの飛行機に乗り、送電網から切り離された消防署の電力復旧の戦略を練った。幾つかの消防署では、緊急通報を受信するための安定した電力供給が行われていなかった。ラジオが機能しない消防署では、倒壊した屋内競技場への消防士の対応に遅れが出た。「情報をやりとりするツールがなかったのです」と、バート隊長。「人々は消防署に助けを求め、まさに駆け込んで来ました。風速 90 m の暴風を経験した血まみれの彼らは、完全にパニック状態でした」。

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大規模な停電後に電力を確保できていたプエルトリコの消防署は、実質的なコミュニティセンターとなった [提供: Sunrun]

多くの消防署で電力は確保できていたが、それはディーゼル発電機に依存していた。ディーゼル発電機は、災害救助の状況ではリスクを伴う。「発電機は 3 日間の停電に耐え得るよう設計されていますが、メンテナンスのため毎週 1 回、1 時間運転する必要があります」と、バート隊長。「使用しないと、燃料の燃えかすが付着して不具合が発生してしまいます。まさにその連鎖がプエルトリコで起こり、全域で完全な大失敗になりました。アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁 (FEMA) はディーゼル燃料を利用していますが、交通障害で燃料が輸送できない、あるいは燃料が底をついた場合に困ったことになるのです」。

その後、クルス氏は 3 カ所の消防署にマイクログリッドを導入すべくバート隊長にゴーサインを出し、サンフアン市内でも最貧地域のひとつ、バリオ・オブレロの消防署からスタートすることになった。バート隊長は、サンフアン市内の 96 カ所全ての消防署へ電力供給を行うため、資金調達を継続するつもりだ。

サンフアンで設置の手助けを行ったニューボールド氏は、荒れ果てた街と農村地帯をニュース映像のようにドラマチックに思い出す。ディーゼル発電機により電力の供給を受けたホテルの 1 室に 8 名で宿泊する救助活動家たちや FEMA スタッフ、根こそぎ倒された樹木、車道に横たわる電線、そして編み糸の玉のようになった送電線。

だがバリオ・オブレロ消防署やその他の消防署の構造そのものは、あまりダメージを受けていなかった。Sunrun チームは、地元の消防士や建設会社 Aireko と連携し、しっかりとしたコンクリート製構造物の屋上にマイクログリッドを設置したと、ニューボールド氏は話す。夜半に消防士たち数名と屋上に座り、地平線上に遠方のカジノや空港の光がかすかに光る以外、ほぼ暗闇に覆われたサンフアンの街並みを、ニューボールド氏はいまも覚えている。混沌の渦中に心を動かされた瞬間のひとつだ。「住民は、消防署をコミュニティセンターだと考えています」と、ニューボールド氏。「命を救う支援を提供する場所というだけでなく、人々が集い、コミュニティを見つける場でもあるのです」。

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サンフアン市内にある 96 カ所の消防署全てにマイクログリッドを設置すべく資金調達が進められている [提供: Sunrun]

バート隊長は、これまで 15 年以上にわたり、「トーマス・エジソンが自動車ショー向けに設計したニッケル鉄電池」に接続した自家製の住宅用太陽光システムを使い、ラスベガス北西部の太陽光エネルギー コミュニティで暮らしている。彼はプエルトリコにおいて、初期対策を行う人々が緊急通報に応じて支援を提供し、レジリエンスを強化して家庭と企業の公衆衛生と安全を支援する上で、独立して動作する自家充電式ソーラーパネルと電力貯蔵ユニットの組み合わせが不可欠だと考えている。

「電力供給がダウンしている間も、自宅で酸素供給装置を使用している人やインシュリンを冷蔵保存しておく必要のある糖尿病患者たちに配慮しなければなりません」と、バート隊長。「米国内の各大都市圏に、レジリエンスを持つコミュニティが存在するようになることを願っています。プエルトリコを含む米国民は、国として次の段階への発展を望んでいるのです」。

ニューボールド氏は、プエルトリコにおけるこうした未来について、慎重ながらも楽観的だ。「送電網が短期間のうちに復旧すれば、現在開発中のソフトウェアにより、島内全域の各住宅や商業ビルの屋上のソーラーパネルや電力貯蔵ユニットから供給される分散型のエネルギー資源を用いて、広範囲の送電網の負荷を緩和できます」と、ニューボールド氏。「その電力は全て島の遠隔地からのもので、送電線で伝送されます。こうした発電システムを地域毎に設置できれば、巨大な広域送電網は不要になります」。

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