Husqvarna のクラシックなバイク デザインを先進的に蘇らせる方法

by Drew Turney
- 2018年7月3日
バイク デザイン husqvarna svartpilen 701
KISKA は Husqvarna のオーナー KTM に向け、この Svartpilen 701 コンセプト バイクを、1955 年に発表されたアイコン モデル Silverpilen の最新版としてデザインした [提供: Schedl R]

広告業界で働く有能な人であれば、売り込みを成功させる秘訣は感情的な結びつきを作ることだと言うだろう。ライフスタイルやファッション、憧れが商品なのであれば、売ろうとしているのは製品ではなく感情なのだ。

それを理解している数少ないインダストリアル デザイン スタジオのひとつである KISKA は、アイコン的なバイク モデルと言える Silverpilen (スウェーデン語で「銀の矢」) を蘇らせ、最新の状態へアップデートするには最適な存在だった。Silverpilen を開発した Husqvarna (ハスクバーナ) ブランドのオーナー、KTM のデザイナーである KISKA は、1955 年発表のオリジナルからインスピレーションを得た 2 種類のゴージャスな新モデル、SVARTPILEN (黒い矢) と VITPILEN (白い矢) を生み出した。

デザイン主任のクレイグ・デント氏は、共通言語は感情だったと話す。オーストリア オフィスで働く彼は「製造する製品がカスタマーに情緒面で何の反応も引き起こさないのであれば、私たちは良い仕事をしているとは言えません」と述べる (KISKA はドイツ、米国、中国にもオフィスを構え、230 名を超えるデザイナーを擁している)。

刺激的なデザインを行うべく、デント氏とデザイナー チームは、目の前にあるオブジェクトのずっと先の姿を思い描く。その成果として誕生した SVARTPILEN と VITPILEN は、製品を支える体験とブランド全体をデザインする KISKA のプロセスを存分に示したものとなっている。

「全てをどう一体化するのかを示す、ひとつの壮大なストーリーです」と、デント氏。「あらゆるクライアントに対して、単に彼らがラインナップに加えたい製品の簡単な説明でなく、こうした私たちのビジョンを提供するのです。そのため、クライアントのブランドについて大いに興味を持ち、深く関与して、クライアントの製品の分析や、その成り立ちに関する質問を投げ掛けます」。

塹壕からスターの座に

では経済的な面やプレゼンの締切、機能する美しいパーツを生み出すための競争など実務上の現実が凄まじい勢いで押し寄せる中で、目を輝かせたドリーマーのままでいるには、どうしているのだろうか?

「私たちの日々の業務を完璧にまとめましたね」と語るデント氏は、全体像を見失わないという課題について次のように述べる。「私の仕事は、ディテールにとらわれず、問題の核心からズレないようにすることです。例えばチームが実際の構成部品に取り組んでいる場合も、私たちは常に“これは、このブランドに対して私たちが持つビジョンに沿ったものになっているだろうか? エンジニアリング チームのソリューションは、エモーショナル デザインに何らかの役割を果たすものになっているだろうか?”と問うのです。KTM のエンジニアたちが常に目の前にいて、打ち解けた関係でいると、自らが生み出したいと考える感情的な反応を認知する能力を失ってしまい、より簡単なソリューションを選ぶ方向に流れてしまうでしょう。距離を保つことで、ズームアウトしたところから冷静に全体を眺めるというアプローチができます」。

バイク デザイン silverpilen
VITPILEN 701 (スウェーデン語で「白い矢」) は、 KISKA が 1955 年発表の Husqvarna 製 Silverpilen を再想像してデザインした 2 モデルのうちのひとつ [提供: Mitterbauer H]

過去と現在

復刻するモデルとして、この Silverpilen が選ばれた理由はどこにあったのだろう? 50 年代、60 年代は Husqvarna の全盛期だった。その後オーナーは何度か変わったものの、どのオーナーも Husqvarna にそれほど気を配ってこなかった。だが当時の Husqvarna はクールで、世界のモトクロス レースで勝利する象徴的なバイクだったのだ。

当時のデザインとエンジニアリングを、デント氏は「美しいまでにシンプルで、見事にまとまったもの」だったと言う。「私たちは当時の製品の機械美に魅了されました」と、デント氏。「眺めるだけで、その性能と仕組みをすぐに理解でき、とても興奮させられます。今ならカバーをかけ、エンジニアから受け取ったもの全てをマスクのように覆って隠すことは簡単です。それではクールではありません」。

その代わりに KISKA が採用した、デント氏がインサイドアウト (裏返し) アプローチと呼ぶ方法は、核心となる部分を詳細に調べ、その根本的なシンプルさを表現するアーキテクチャーを提案するものだ。「私たちは、このバイクの持つ実直で信頼性の高いアプローチに大いに触発されました」と、デント氏。「今風の解釈、モダンなアーキテクチャー、現在ならではのまとめ方で、全く同じことを実現しようと考えました」。

モダンなプロセス、クラシックなインスピレーション

常に感情的な反応を基準にするという KISKA のアプローチは、決して簡単ではない。だが KISKA は、このゴールを考慮しながら SVARTPILEN と VITPILEN を実現するための、適切なテクニックとツールを見出した。

全ては紙面に描かれた鉛筆スケッチからスタートする。デザイン スタッフはデスクとスケジュールをきれいに整理するとヘッドフォンを装着し、3 – 4 週間は誰にも邪魔されない状態で作業に取りかかる。デント氏は、ここで魔法のようにアイデアが生まれると言う。彼らは社内とクライアントの両方に感情を呼び起こす、イノベーティブで新しい成果を模索するのだ。

次のステップは、これらのスケッチを CAD 化することだ。デント氏は、2D のスケッチを 3D のデザインへ変換するには Autodesk Alias が“頼りになる”ソフトウェアだと言う。だが感情を引き出すには、たとえ 3D 画像でもフラットな画面上では限界がある。

バイク デザイン Vitpilen 401 Aero
KISKA はこの VITPILEN 401 Aero のように、レトロなシンプルさと未来志向のアーキテクチャーと組み合わせようとしている [提供: Schedl R]

次は、3D 切削加工でデザイン プロトタイプを作成するステップだ。CAD ソフトウェアでまとめられたデータは、 Autodesk PowerInspect を使ってツールパスに変換される。KISKA が所有するミリングマシンで、G コードを実行してクレイモデルを作成。その後、このクレイモデルは製造用の最終デザインのベースとなるよう、細部まで丁寧に仕上げられる。

実物大に製作されて適切な色に塗装され、極めて高解像度でスキャンが行われた後、そのデータは再び CAD ワークフローに送られ、仕様と厳密に一致するよう CAD 内で面と容量が修正される。

このプロセスに VR も役立つ。VR システムに 3D データが接続されることで、ユーザーは切削加工の前段階で、できるだけ現実の完成品に似せたバーチャルな物体を手に取り、回転させたり、裏返したりして、あらゆる角度からデザインを検討できる。

現在のバイクの多くが、素人目には漫画から出てきたかのように見える (2014 年の米国市場トップ 4 のうち 3 社を日本のオートバイ メーカーが占めていることを考えれば、それも不思議ではない)。そうしたブランドの個性は、センセーショナルな色使い、プラスチックのコーティング、そしてコンピューター処理による構造が特徴だ。

Husqvarna の新モデルのデザインは、そうした美学的思想からは距離を置いたポジショニングのようにも思える。それに関する話は尽きない、とデント氏は語る。

「ここ最近の市場におけるクラシック バイクの解釈はさまざまです」と、デント氏。「Husqvarna は、常に先駆的でした。そして私たちも過去に耳を傾けるばかりではなく、先進的な考えを大切にしたいと考えています。競合他社がバイクにレトロなデザインを採用しようとしているのに対して、私たちは最新鋭、超ミニマリズム、先進性をアプローチに求める一方で、かつての製品がそうであったようなシンプルさも兼ね備えたものにしたいと考えています」。

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