知こそ力: シミュレーションに関する 5 つの誤った俗説を正す

by Subi Shah
- 2016年7月14日

シミュレーション ソフトウェアを使用することにより、エンジニアたちは製品デザインへのストレスを、物理的試験を行うことなく分析できる。これはかなりの時間節約になる!と考えるかもしれない。実際、その通りだ。また、シミュレーションがコスト節約にも役立ちそうだと考える人もいるだろう。これまた、その通りだ。

ではなぜ多くのエンジニアが、製品デザインにシミュレーションを使用しないことを選択しているのだろうか。これまで長い間、その理由はシミュレーションは高価過ぎる、使用するのが難し過ぎる、あるいは製品が成熟し過ぎていて再設計できないことが理由とされてきた。だが、どのような製品でも設計の見直しが遅すぎることはない。また、欠陥を予測するためだけのツールだと捉えられている場合もある。しかしシミュレーションには、それ以上のことが可能なのだ。こうした俗説を、今こそ一掃しよう。

俗説 1: シンプルな製品にはシミュレーションは不要
これはシンプルな製品であれば、物理的に簡単に検証できるのでシミュレーションは不要、という論理だ。だが、それは間違っている。ジェネレーティブ デザイン のパワーをもとに考えてみれば、コンピューターは人間の脳に不可能なことをやってのけると考えて、まず間違いない。

シミュレーションの俗説

シミュレーションは、物理的試験では見つけることのできない欠陥を明らかにすることができる。エンジニアリング コンサルタント グループであり、3D 計測技術のデベロッパーおよびメーカーでもある Creaform で数値シミュレーション チームのリーダーを務めるピエール-オリビエ・デュヴァルは「物理的試験を行うことで、物理上の結果が変わってしまうこともあります」と語る。物理的試験は、製品内部に手を入れる手法が必要となる場合がある。こうした手法は製品の構造や環境を変えてしまい、物理的試験の結果が有効でなくなることがあるのだ。

シミュレーションでは、時間経過に伴うストレスの影響を測定し、製品の経年劣化を計算することができる。これはエンジニアにとって、製品寿命を延ばすためにデザインの見直しが必要かどうかを判断するのに役立つ。シミュレーションはまた、パーツ軽量化のための設計改良にも使用されている。問題なく機能しているパーツであっても、材料が不要に多く使用されている可能性があるのだ。シミュレーションを使用することによりエンジニアは、材料を使用し過ぎないよう、あるいは複雑過ぎる構造にならないよう製品の設計を見直して、材料費や製造時間、製品コスト全体を削減することができる。

俗説 2: 古過ぎる製品、成熟している製品にはシミュレーションは不要
設計段階の後期では、プロセスが進行しているため、変更を加えるにはもう遅過ぎだとエンジニアが考える場合もある。だが設計に問題が生じた場合、シミュレーションなら素早く安価に変更を行う方法を提供してくれる。セスナ、ビーチクラフト、ホーカーといった航空機メーカーを擁するテキストロン・アビエーションで応力解析マネージャーを務めるジーン・ポールセン氏は「シミュレーションなら、こういった変更に素早く対処し、とても非常に迅速に設計を変更できます」と話す。

シミュレーションに関する俗説
Creaform は Go!SCAN3D (写真) のような携帯用スキャニング機器を設計、製造している [提供: Creaform]

空気注入、展開式の宇宙装置メーカーである L.Garde の応用解析者ユーキ・ミチイ氏は、シミュレーションは製品サイクルの初期にスタートさせる方が良いと述べている。「問題は初期段階で捕まえておくべきです。そうしないと、後で痛い目にあうことになります」と、ミチイ氏。「リスクの緩和です」。既存製品や、既にサイクルが先の方へ進んでいる製品の場合は、シミュレーションにより問題の把握にかかる時間が削減され、試験に関連する追加コストやリスクを最小限に抑える方法が提供される。「製造の停止には多額の費用がかかりますが、長い目で見れば時間とコストの節約になります」と、ミチイ氏は言う。

俗説 3: シミュレーションは高額過ぎる
シミュレーション ソフトウェアの購入には確かに初期費用が必要だが、 材料費を削減でき、コストのかかる検査装置 (風洞など) の必要性を排除でき、物理的試験の必要範囲を制限できるため、一定期間を経れば十分に元が取れる。「実際に何かを構築する前にデザインを最適化できるので、費用を節約できます」と、ミチイ氏。

「シミュレーションは費用削減に役立ちますが、コストがかかることも事実です」と、デュヴァル氏は話す。「追加の初期費用はかかりますが、シミュレーションを使用することで製品についての理解が深まり、予測不可能な故障を低減し、また性能と効率を向上できるため、将来的なコストを削減できます。たとえば材料を大量に使用する重機をカスタム製作する場合、重機自体にかなりの費用がかかるし、エラーがあっては困ります」。

myths about simulation
テキストロン・アビエーションはセスナ ブランドの航空機を製造している [提供: テキストロン・アビエーション]

以前はシミュレーション ソフトウェアの実行にはハイエンド ハードウェアを装備した専用ワークステーションの必要性があり、それがもうひとつの参入コストになった。だが現在、テクノロジーの進歩によりこの費用は大幅に低下している。安価なラップトップ上でソフトウェアを実行し、クラウド上で問題を解決できるようになった。

俗説 4: シミュレーションは難解
シミュレーション ソフトウェアを活用するには確かに一定のスキルが必要だが、果たして本当に難解なものだろうか? 「扱っている構造の境界条件を適切に設定し、荷重条件構造を正しく把握することが重要です」と、ミチイ氏は話す。境界条件とは、製品にかかる既知の応力を指す。この判断は難しいが、どのようなスキルや専門技術も、習得にはある程度の時間と練習が必要だ。

だが、シンプルな仮定に基づき常時分析を行う Autodesk Moldflow Design のように、プログラムのバックグラウンドでシミュレーション機能が実行中である場合は別だ。シミュレーション機能は、今や Autodesk Nastran In-CADFusion 360 など数々のツールに内蔵されており、初期段階でのシミュレーションが問題の早期防止に役立つことから、より多くのデザイナーがシミュレーションを導入するようになっている。

myths about simulation
L.Garde は NASA 初の宇宙空間におけるソーラーセイル (太陽帆) ミッション向け Sunjammer を設計、開発した [提供: NASA]

「シミュレーション ツールがなかったら開発試験を実施しなければならず、それには信じられないほど長い時間がかかります」と、ポールセン氏。「それは、製品を市場へ早期投入する妨げとなります」。つまりシミュレーションを活用するには習得が大変であったとしても、大抵は試験用の製品を物理的に構築するよりシミュレーションを行う方が簡単であり、時間もコストもかからない。。

俗説 5: シミュレーションは欠陥予測のためだけのもの
ここまで読んできたなら、この俗説が正しくないことは理解できるだろう。シミュレーションを使用してデザインを最適化し、プロトタイプを作成することなく、複数のデザイン オプションを素早く検証できるのだから。またシミュレーションは、たとえば宇宙空間などで加わる応力に製品がどう反応するのかの判断にも使用されている。「宇宙空間では荷重は非常に小さいのですが、そうした荷重を地球上でモデリングして試験するのは簡単ではありません」と、ミチイ氏。「この構造の反応を得る唯一の方法は、重力を無くすことです」。

宇宙空間向けの構造を地球上で物理的に試験しようとすると、必ず何らかの妥協が必要となる。環境が大きく異なるためだ。「このソフトウェアを使用すれば、荷重下の製品の偏差を予測し、航空機が本来あるべき姿で機能するということを保証できます」と、ポールセン氏。

では、自分の製品の設計にシミュレーションを使用するべきだろうか。その答えはイエスだ。これにはパーツをより短時間かつ低コストで適切に設計したければ、という前提条件が付くが、それを望まない者などいるだろうか。

関連記事