ネット インパクトのデザイン: デザイン思考と学際的教育が世界を変えられる

by Matt Alderton
- 2016年3月13日

新世代のデザイナーたちが世界各地の大学に姿を現し始めている。これは単なるデザインの新しい波ではない。デザインがなされる手法、そして最終的にはそれが生み出す結果の新しい波でもある。問題は、こういった学生が目指すゴールへの到達に必要なリソースやネットワークを得ることが、特に在学中には困難である点だ。そしてこのゴールは、世界をよりよい場所にすることにもつながっている。

カリフォルニア州オークランドに本拠地を置き、社会的、環境的「インパクト」を大学キャンパスや職場に生み出すことを目指して 8 万人を超える学生および若手プロフェッショナルを擁する NGO のネット インパクト (Net Impact) がデザインと STEM 分野の学生を調査したところ、そのうち 88% が“インパクトデザイン”によるスキルと経験の習得に、また 77% が学際的教育に興味を示していることが分かった。

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カリフォルニア大学バークレー校でコラボレーションを行う学生 [提供: ネット インパクト]

「どこで働くにしても、さまざまな訓練を受けた人々が一丸となり、ミーティングやプロジェクトを通して共通のゴールのために協力することになります」と、ネットインパクトの最高コミュニティ/イノベーション責任者、リンダ・ジェラルド氏は話す。「これが実社会の構成であり、学生は同様の機会を持つべきです」。

こうした取り組みは、一部の大学では行われているものの、残念ながら大半の大学ではまだだ。「すべての教育機関をまとめて語ることはできませんが、この調査結果は一部の大学、特に大規模な研究大学では、その資金調達方法や組織、構成によって学際的な方法での取り組みが難しいことを示しています」と、ジェラルド氏は説明する。

制度を変えることは非常に困難だが、そこに属する人間に変化を与える方が簡単だ。ネット インパクトや VentureWell などの団体は、学生を活用して非連携的な形態を打ち破り、学部や学生、ビジネスのつながりを推奨している。

「学生と協力してボトムアップで働きかけることが、トップダウンでは達成しにくい、障壁を取り除く非常にパワフルな方法に成り得ると考えています」と、ジェラルド氏。

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カリフォルニア大学バークレー校でブレインストーミングする行う学生 [提供: ネット インパクト]

事実、デザインの役割は新しい雇用の機会を提供するのに効果的なビジネスの需要となっている。たとえば「最高デザイン責任者 (Chief Design Officer)」というチーフ職を導入する企業の増加傾向を例に考えてみよう。「”デザイン”と名の付くポジションは、今やデザイナーだけのものではありません」とジェラルド氏。「その活動が非営利でも社会事業でも、ビジネスであっても、誰もがデザインする方法を理解する必要があるのです」。

実際のところ、デザインを必要とするのは製品だけではない。歯ブラシや高層ビルからランプ、ランボルギーニまだ、あるいはブラウスやビジネスモデルからプログラム、プロジェクト、さらにはサービスに至るまで、成功を収めるにはデザインや設計が必要だ。「プロダクト・デザインの世界から生まれた指針の多くは幅広い適用が可能で、あらゆる階層の人々に活用されるようになりつつあります」とジェラルド氏は話す。

これらの指針には、まだ満たされていない人間の要求を満たすプロセス、製品、体験の創出に焦点を絞ったデザインを意味する「人間中心のデザイン」などの概念が含まれる。また建築家やファッション・デザイナー、CEO や科学者まで、デザイナーと非デザイナーが同じようにデザイン思考を実践するようになれば、それが水不足や気候変動などの問題を人間が解決するための助けとなる可能性もあるのだ。

「すべての企業と社会事業はデザインという課題に直面しています」とジェラルド氏は説明する。「どのようなビジネスに関わっているのかに関係なく、根本的なレベルで、人間が直面している問題を深く理解し、それに対処するためのクリエイティブな解決策を考え出すことが必要です」。

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カリフォルニア大学バークレー校でコラボレーションを行う学生 [提供: ネット インパクト]

ネット インパクトの Impact Design Initiative は、学生によるデザイン思考とビジネス感覚を促す学際的ネットワークの構築を支援することでインパクトデザインの振興に努めている。2015 年にAutodesk Foundation (オートデスク基金) とのパートナーシップにより登場したこのイニシアチブは、世界各地の大学と大学院キャンパスにおける最大 20 の Design/STEM Net Impact 支部の立ち上げとシードファンディング、Design/STEM 支部を既存の Net Impact 支部と結び付ける付加価値のあるプログラミングの作成、および、STEM、デザイン、ビジネスを学ぶ学生に対してネット インパクトの年次会議でコラボレートする機会とプログラムを提供することに重点的に取り組んでいる。

ネット インパクトのカリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス支部と Net Impact Social Engaged Engineers 支部は、2015 年 9 月にイニシアチブの支部設立イベントを共催したが、このキャンパスでの連携は Impact Design Initiative の目的と可能性を示す好例となった。Autodesk Foundation 後援で開催され、チケットが完売となった24時間イベント「デザインアソン」では、ビジネスとデザインの学生によるチームが人間中心のデザインという方法論を使用してカリフォルニアの歴史的干ばつの解決に役立つ製品、サービス、プロセスについてのブレインストーミングを行った。優勝チーム (“DripIt”と呼ばれる) は Autodesk Fusion 360 を使用し、ユーザーのお気に入りの料理をいちから作るのに必要な水の量を視覚的に表現することで、人間が干ばつに与える影響をより明確に認識させる製品をデザインした。

「学生たちはこの非常に難しい課題に対して素晴らしいデザイン・ソリューションをいくつか提案しました」と、ジェラルド氏。彼女はまた、他のネット インパクト支部も、インパクトデザインを学術的手法で説明、解説する同様のイベント、シリーズ講義、キャンパス/コミュニティ プロジェクトを企画しているとも説明した。「またその過程で、学生たちは実社会の問題の解決にデザインを活用する手法について、より深い理解を得ることができました」。

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プロトタイプの作業を行うネット インパクトの Villanova チャプターのメンバー [提供: ネットインパクト]

このイニシアチブはまだスタートしたばかりだが、ネット インパクトの「2020 ビジョン」は、インパクトデザインのネットワークを 100 キャンパスまで広げ、年間 15,000 名の学生をメンバーに加えて、これらの学生にインパクトデザイン分野でキャリアを進める動機付けを提供し、ネットワークの結果として年間 400~500 の持続可能またはインパクトデザイン的コンセプトや実施可能なプロジェクトの創出を目指す意欲的なものとなっている。

最終的に、このプログラムや類似する他のプログラムが、世界で最も困難な問題を解決する力を備えた、デザインを重視するビジネス関係者とビジネスを重視するデザイナーによる新たな仲間を生み出すようになるのが狙いだ。

「私たちがキャンパスに創出しているコミュニティが、その活躍の場がどこであるにしろ、デザインを主なスキルセットに持つ 21 世紀のリーダーを輩出するようになればと考えています」とジェラルド氏は締めくくった。「社会起業家であれ、アーティストであれ、デザイナーであれ、またその活動範囲がビジネスであれ非営利であれ、世界が必要としている、人間が直面する困難な問題に取り組むリーダーとなるためにデザイン思考を活用して欲しいと願っています」。

参加に興味をお持ちの方は、Net Impact をご覧になるか、インパクトデザイン・プログラムマネージャー Natalia Vasquez (nvasquez@netimpact.org) まで英文にてご連絡ください。

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