ニューロマーケティング: 感情的な反応を計測して、より効果的な広告イメージを作る Saddington Baynes の手法

by PJ Brown
- 2016年5月26日

フォント サイズを拡大したり、イメージを左から右へ移動したり、あるいはアイデアを実現するためにベンダーを選択したり。広告業界の制作部門はキャンペーン コンテンツ制作の際、その決定を長年にわたって直感に頼ってきた。この種の決定は、大抵は本能的な直感や過去の経験、場合によっては市場調査を基に行われるが、それはもちろんニューロマーケティングほど洞察力に満ちたものではない。

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Saddington Baynes が検証した各イメージはビジュアル要素の複雑な組み合わせで構成され、ビジュアル要素を個別に変更できるようになっている。[提供: Saddington Baynes]

イギリスを拠点とするクリエイティブ制作会社、Saddington Baynes の CEO であるクリス・クリストドゥル氏は、デジタル レタッチャーとして制作部門や写真家たちに混ざって意志決定の場に同席してきた経験から、そうした決定については熟知している。Saddington Baynes は、ホンダやキャデラック、日産などのクロスプラットフォーム・キャンペーンに使用される自動車の CGI イメージを専門とする会社だ。

「我々は制作者として言語と論理を司る左脳を、視覚と感情を司る右脳に同期させるよう努力しています」と、クリストドゥル氏。「制作部門との仕事では、彼らがコミュニケートしようとするもの、見たいものをビジュアルで表現できるよう、その考え方を理解する必要があります。さらに重要なのは、人々が何かを感じ取れるようなイメージを作りたいという点です。ビジュアルのコンセプトを言葉で説明するのでは、使われるのとは逆側の脳へ訴えていることになります」。

どのようなキャンペーンでも、その効果を計測するのは難しい。たとえば消費者行動の予測であれば、フォーカス グループでも問題が生じることがある。参加者にとっては潜在的な (意識下または無意識の) 感情を正確に述べることは難しいし、それに対して質問するという行為自体が、その感情を変化させてしまうこともある。イギリスでは最も有名なコマーシャルのひとつである、ギネスのサーファー広告を例に挙げると、フォーカス グループからは、代理店はこれを却下すべきだと示唆されたのだ。

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上のイメージからモーション・エフェクトを除いたもの。真実味が高まるが信頼感は低いと評価された [提供: Saddington Baynes]

クリストドゥル氏も、キャンペーン イメージの決定に際しては、大抵は単に正しいと「感じられる」かどうかを基準に判断していたと振り返る。だが彼は、その後ハミッシュ・プリングルとピーター・フィールドが 2009 年に発表した画期的な研究「Brand Immortality: How Brands Can Live Long and Prosper (ブランドの不朽性:いかにブランドは長生きし成功することができるのか)」を読む機会を得た。

イギリス広告代理店協会 (IPA) の依頼で実施されたこの研究では、過去 10 年間に最も成功した広告でカギとなっていたのは感情だと書かれている。理性的なメッセージより感情的なメッセージを採用したキャンペーンの方が「採算性、シェア拡大、価格弾力性の向上など、より効果的な成果をもたらした」とされる。

この研究で消費者の意志決定プロセスの 95% が無意識であることを知り、人々の感情の科学的計測に焦点を当てた Warc セミナーに参加したクリストドゥル氏は、キャンペーンの実行前にその成功の可能性を評価できる、より優れた方法があるに違いないと考えたのだ。

「コンテンツのローンチ後に感情面を計測することに関しては、かなりの論議が行われていました」と、クリストドゥル氏。「でも、それでは遅すぎると思いました。キャンペーンの実行前にできないかと考えたのです」。

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[提供: Saddington Baynes]

このアイデアを探求しようと、Saddington Baynes は NeuroStrata に所属する応用脳科学分野の著名な専門家トム・ノーブル氏と提携し、キャンペーン ビジュアルの制作中に感情の関与や視覚顕著性、ブランドの適合性を計測できるツール、Engagement Insights™ を開発。これにより Saddington Baynes は、制作中にイメージを最適化できるようになった。

「Engagement Insights™ は、作成するイメージが狙い通りのものであり、クライアントが獲得しようとしている層の心に響くものだという安心感を与えます」と、クリストドゥル氏。「これは制作会社としては世界初の試みです」。

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ホンダ HR-V の検証では、Engagement Insights™ テストにより、このアングルの方がより高級感があると評価された [提供: Saddington Baynes]

Engagement Insights™ はオンラインの潜在連合テストを使用している。これは、視覚刺激に対する潜在意識の反応を計測し、次に被験者の潜在意識の関与を計測する。意識のプロセスが作動する前に、反応パターンと知覚の変化をミリ秒単位で測定するのだ。ノーブルは無意識の潜在テストによって、消費者行動の予測も、さらに精度が上がるという。

このプロセスでは、アニマティック (プリビジュアライゼーションとも呼ばれる) から最終グレーディングまで、定義済みの一連の属性に突き合わせ、キャンペーンのイメージをさまざまな段階で検証する。属性には一般的なセットも、ブランドに合わせて特別に作成されたものもあり、スタイリッシュさや洗練性、ダイナミックさ、エキサイティングさ、欲求、画期性、高級感、信頼感などが含まれる。反応者サンプルは、ブランドにとって重要な購入者の統計学データ (年齢、性別、場所など) に基づいている。一般的なテストは 24 ~ 48 時間内に結果が得られるが、よりカスタマイズされた調査では 1 週間から 10 日間ほどの時間が必要だ。

このテストは脳科学者が考案したもので、上記のような特定かつ所定の属性により、どのイメージが人々の心に共感を呼び寄せるのかの程度を診断する。

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上と同じホンダHR-Vの検証で、このアングルはよりスタイリッシュだと評価された。提供: Saddington Baynes

イメージのバリエーションを生成するため、チームはテスト中に Autodesk VRED と Autodesk Maya を使用している。「VREDは、イメージの素早い作成に役立っています」と、クリストドゥル氏。「万能なリアルタイム CGI レンダリング ツールで、コンポジションの検討や、非常に素早くシーンを置き換えることが可能です。Maya はより洗練されていて、写実的なイメージを繊細に調整できます」。

たとえばホンダ HR-V のキャンペーン用イメージの評価においては、チームはカメラのレンズや車のアングル、異なるロケーションなど、最終的なイメージに大きな影響を与えるビジュアル的な構成要素のひとつひとつを検証した。それ以外の要素を全て同じ状態に維持して、カメラ アングルを変更した際の検証が行われたが、屋外ショットのアングルの中には、より高級感を感じさせると評価されるものがあり、また別のアングルには、よりスタイリッシュであると評価されるものもあった。アングルはそのままで、背景を屋外のシーンからスタジオのバックドロップに変更することで、イメージはより説得力のあるものとなった。

脳科学の研究では、人間は脳内の構造により画像が左、文字が右にある方が短時間で理解できる傾向があるという結果が示されている。入り組んでノイズの多いメディア環境では、こうした迅速な処理が、より効果的なコミュニケーションにつながる可能性が高い。ただし一般に認められているレイアウトは、それとは逆で文字が左、画像が右だ。

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Engagement Insights™テストで、このイメージは車が左向きであるより好ましく、かつ美しいと評価された [提供: Saddington Baynes]

Saddington Baynes は、イメージに対する感情的な反応の評価に意識下の System 1 テクニックを応用した初の制作会社だ。だがクリストドゥル氏によれば、Google やコカ・コーラ、P&G、BMW、PayPal、シスコ、NBC など多くの大手企業が、研究開発や製品デザイン、ブランディング、パッケージングに認知脳科学の成果を導入してきた。こうした企業は、消費者の視点とその行動への影響の理解を向上させることで、自社のマーケティングを改革しようとしている。

「今日のマルチチャネルなマーケットでは、ユーザーは日常的に何千というブランド メッセージに曝されています」と、クリストドゥル氏。「イメージは見る者の関心を集めるという重要な役割を担っていますが、消費者を取り込み、傑出した存在になるには、どうすればいいでしょうか? それは対象となるセグメントに対して、より効果的なブランド独自のイメージ構築に役立つ、感情的な反応のパターンと、その無意識の誘因やきっかけの理解を深めることです」。

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