VACCO Industries が PLM の導入により衛星と宇宙船を軌道上に維持

by Erin Hanson
- 2016年5月29日
VACCOの充填バルブとドレン バルブを搭載したNASAの探査機キュリオシティが現在火星上を探索中 [提供: NASA]

読者の企業が米国の火星探査機キュリオシティや海軍の潜水艦の部品を設計、製造することになったら、そのデータや文書、プロセスには万全を期したいものだ。

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VACCO はボーイング社 702SP シリーズを含む衛星プラットフォーム用の隔離ラッチ バルブやサービス バルブ、チェック バルブを供給している [提供: Boeing]

これまで 60 年にわたって宇宙や防衛、商業市場向けに特殊バルブやフィルター、流体制御製品を製作してきた VACCO Industries のような企業が、そのデータやプロセスのほとんどをネットワーク ドライブとファイル キャビネットという、あえてローテクな方法で管理していたとは驚きだ。

だが VACCO がデザイン サービスのエンジニアリング マネージャー、リチャード・ノリエガ氏を採用した際には、大きな変革が必要だということを VACCO もノリエガ氏も理解していた。当初、氏は製品ライフサイクル管理 (PLM) の導入を考えてすらいなかった。「VACCO では PLM システムに触れるつもりもありませんでした。これまでの経験では、PLM は極めて高価ですからね」と、ノリエガ氏。「プロセスを向上させるためだけに 100 万ドルを費やす訳にはいきません」。

ノリエガ氏はコストの障壁に加えて、VACCO の経営陣が PLM を理解していないことも把握していた。これは、製造業では珍しいことではない。PLM は、従来の製品データ (CAD モデル、製図など) を包括的な単一のシステムに組む込むことで製品データ管理 (PDM) を新たなレベルへ発展させ、材料費の請求や変更と品質の管理、原価管理、サプライヤー、新製品リリースの追跡も行える。紙の書類のスキャンとファイリングに慣れた従来型企業にとって、オールインワンのデジタル ソリューションへの移行は成功の見込みが無いと思えただろう。

当初は PLM システムというアイデアを避けていたノリエガ氏の考えが変わったのが、Autodesk PLM 360 との出会いだった。転換の最も重要な要因となったがコストだ。氏は経営陣に、PLM 360 が比較的小さな初期投資で、あらゆるビジネス機能に対するソリューションと成り得ることを示すことができた。「ワークスペースを設定して、実際のトランザクションやビジネスの仕組みを実演できました」と、ノリエガ氏。「企業のビジネス機能に合わせて、どのようにカスタマイズできるのかを提示することで、ますます受け入れが進みました」。

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VACCO はボーイング向けに F-15 空中給油口 (レセプタクル) を製造している [提供: Ron Bookout/Boeing]

この受け入れが、ノリエガ氏にとっての次の大きな課題をもたらした。PLM 戦略の基盤固めだ。氏は自身とビジネス パートナー (IT 関連の専門家ではない) 数名で構成された小さなチームで 250 ユーザーの実装を実現したが、その過程で幾つかの教訓を得ることができた。PLM 導入を成功させるための、ノリエガ氏による 5 つのアドバイスをここで紹介しよう。

1. 仕様を把握してプロジェクトのスコープを明確に定義
成功するプロジェクト・マネジメントは、必ず仕様とスコープ (作業の範囲) から始まる。VACCO の PLM 導入戦略において、それはまず技術/設計変更通知や変更要求など、システムに含まれるべき全てのプロセスを再検討し、文書化することを意味した。またスコープを特定し、実行の計画を作成することも含まれていたのだが、当初それらは実施されなかった。その代わりに、まずノリエガ氏は計画やスケジュール抜きで、自身が考えるビジネスの実践のあるべき姿をもとに VACCO の PLM システム構築に着手したのだが、結局はシステムの度重なる変更に悩まされることとなった。

「前もって仕様とスコープを策定しておくことが重要です。そうすれば、そのスコープに基づいて構築し、まとめればよいので、PLMも容易になります」と、ノリエガ氏。「そのプロセスに従えば、PLM に完璧に合致したものになります。PLM はプロセスを構築し、方向を把握して、実行を開始するための仕組みだからです」。

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VACCO 社製バルブとマニホールドはシーウルフ (SSN 21) を含む米国海軍の船舶に使用されている [米国海軍写真提供: Electric Boat Corporation by Jim Brennan]

2. 一度にひとつのプロセスに集中
ノリエガ氏は当初、見積依頼 (RFP) や見積請求 (FRQ)、新製品開発、ドキュメント管理まで全てをカバーする 5 つのプロセスを同時に実行すれば投資利益率 (ROI) が上がると考えていた。だがすぐに、こうした小さなチームでは一度に全ての導入を成功させるのは難しいと悟った。

「スコープと仕様の話に戻ると、この 2 つに十分な時間をかけておかなければ、プロセスの評価を生かすことはできず、単に何かを構築しているだけになってしまいます」と、ノリエガ氏。「プロジェクトをひとつずつ正しく実施することと比較して、5 つのプロジェクトへ同時に取り組むことが時間の節約にはなりません」。

「大きなプロセスの仕様策定には 1 カ月必要なこともあります」と、ノリエガ氏。「ただし、年単位のスケールで考えれば、ひとつずつ取りかかる方が、5 つのことを首尾良く効率的に片付けることができます。進歩を示すことができるので、利害関係者からも好まれます」。

3. 導入前後はプロジェクト実装者と密接に連絡を取り合う
PLM システムが構築され実装される間は、プロセス進行中もプロセス完了後も、ビジネスのニーズを決める責任はあなたにある、というということも重要だ。システムの構築と設定にコンサルタントを登用することは理に適ってはいるが (VACCO も Autodesk のコンサルティングを利用した)、コンサルタントと協力関係を結び、プロジェクトの進路が間違った方向に変えないようにするのは担当マネージャーの責任になる。

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VACCO は CH-148 サイクロンに適格の放出遮断バルブを製造している [提供: カナダ空軍/トゥルーディ・マッカーシー伍長、12 Wing Imaging Services (ノバスコシア州シアウォーター)]

「施工業者がビジネスを理解しているとは限りません。あなたの意向をくみ取って実装しようとするでしょうが、本当にどうしたいのかを知っているのはあなただけです」と、ノリエガ氏。「彼らと共に集中して取り組み、明確な視野を持ち、プロセスにしっかりと関与してください。PLM 360 はあらゆる方向に構築可能であり、その方向をコントロールするのはあなたであるということを肝に銘じてください」。

4. メンテナンス要件のレベルを把握する
PLM 360 がクラウドベースなのは、ノリエガ氏にとって魅力だった。クラウドベースのシステムは、サポートのための内部インフラをそれほど必要としないため、社内の IT 部門ではなく、ビジネス機能に近い人々 (ノリエガ氏とチーム) が実装を実行することができた。ただし企業レベルのシステムにも、ビジネスのニーズに完全に対応するためのカスタマイズと統合は必要だ。必ずしも企業の社内に、変更やアップグレード、その他のカスタマイズの整合性に影響する要素に対応できる専門知識を持つ者がいるわけではない。

「それが何であるかを理解するのに社内に専門知識を持つ者を置いたり、それを理解することのできる (コンサルタントによる) サポートを得たりすることが必要です」とノリエガ氏。「問題が生じたとき、誰に電話し、どうやって不具合を修正すればよいか。こうした実装にどこまで対応する準備があるのか、サプライヤーとベンダーに話をするべきでしょう」。

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NASA の MAVEN 衛星の推進システムに VACCO 製部品が使用されている [提供: NASA]

5. 組織に対して ROI を明示する
経営陣が PLM システムに ROI を期待するであろうことは疑う余地もない。だがこの場合の ROI は 、必ずしも厳密な意味での金銭的価値ではないとノリエガ氏はアドバイスしている。ビジネスが費用を埋め合わせるものになるかどうかでなく、ビジネスの運営がよりよいものになるかどうかを問うべきだ。PLM では、ビジネスの状況とプロジェクトの進行具合を視覚的に提示できる。

「マネージャー自身がモニター上でビジネス全体を視覚化し、ビジネスがどれほど健全であるかを確認できます。従来は、こうしたことは実行不可能でした」と、ノリエガ氏。「このような機能の価値をどう評価するべきでしょう? より効率の良い業務が行えているのでしょうか? 私はそう考えます。可視性と整合性が高まり、自分たちが求める形で、ビジネスの営みに PLM プロセスをシステムに組み込んで使用しているのですから。これは、より優れた製品を作ることにつながり、結果として金銭的価値をもたらすことになるでしょう」。

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