パナマ運河拡張が米国の港と船舶輸送に及ぼす巨大な波及効果

by Jeff Link
- 2017年7月3日

2016 年 6 月。9 年もの工期を経て拡張されたパナマ運河は、幅の広がった閘門と深さが増した航行水路により、初めての超パナマックス船バロック・ヴァレッタを受け入れることができた。より多くの貨物を運搬できる大型船に対応したキャパシティを持つ新たな閘門は、世界の交易路に変化を与え、ニューヨークからニューオーリンズまで、米国内の港や船舶輸送にアップグレードを促すものとなっている。

現在米国で計画されている新しい改修プロジェクトは、ニュージャージー州ベイヨンやカリフォルニア州ロングビーチでの橋の桁下高さを上げる大規模改修工事から、ニューオーリンズやテキサス州ボーモントの臨港鉄道の整備まで、さまざまなものがある。こうした取り組みを補強すべく、全米港湾当局協会 (AAPA) は老朽化が進む港への投資を増やすようトランプ政権に要請している。AAPA の公報ディレクターを務めるアーロン・エリス氏は、これは新造船や増大する貨物に対応する余裕を確保するためのものでもあると話す。最大の船舶は全長 365 m、喫水 15.2 m で、最大 13,000 TEU (20 フィート コンテナ換算の単位) を輸送でき、これは従来の3 倍の能力に相当する。

“港にばかり投資して、港へのリンクを無視するわけにはいきません。それでは、庭の水やり用ホースに消防車の消火用ホースをつなぐようなものです”
— アーロン・エリス氏 (AAPA 公報ディレクター)

2016–20 年の湾港計画インフラ投資調査 (2016–2020 Port Planned Infrastructure Investment) によると、AAPA は今後 5 年間の船舶輸送、船客インフラへの支出に 1,550 億ドル (約 17.3 兆円) を見積もっている。これは、2012-16 年調査の 460 億ドル (約 5.1 兆円) から大幅に増加している。

最大規模のプロジェクト投資が行われているのはメキシコ湾沿岸部の港に対してであり、液化天然ガスや合成樹脂の輸出業者のための流通、ロジスティクスの重要なハブとして浮上しつつある。またここは、新エネルギーの処理や生成、中継用の施設が多数建設されているエリアでもある。「メキシコ湾沿岸部は突然の再注目に活気づいており、その結果として各都市は寄港誘致の取り組みを行っています」と、エリス氏。

超大型船の寄港への期待は、建設業界やエンジニアリング業界の企業においては、ターミナル拡張、大型クレーン、エネルギー処理プラント、港や貨物船と幹線道路とを結ぶ輸送経路など、設備改修工事の新たな入札機会へとつながる。「貨物をどう扱うか、どう仕分けして、どこに置くのか。これは重要な問題です」と、エリス氏。「港にばかり投資して、港へのリンクを無視するわけにはいきません。それでは、庭の水やり用ホースに消防車の消火用ホースをつなぐようなものです」。

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ニューオーリンズ港 [提供: Port of New Orleans]

ニューオーリンズでは、臨港鉄道網がソリューションの重要な位置を占める。ニューオーリンズ港通商部統括責任者のロバート・ランドリー氏は「鉄道には、単一のシステムで大量の貨物を 30 以上の州やカナダへ輸送できる利点があります」と話す。「港からの鉄道サービスは、輸送コミュニティの多くのニーズに応えます」。

ターミナル上に設けられた新しい複合一貫輸送コンテナ施設は、ナポレオン通りコンテナ ターミナル (Napoleon Avenue Container Terminal) の 48,560 平米の車両基地に隣接しており、港の年間処理能力を 200,000 TEU から計 840,000 TEU まで増加させると予測されている。現在はカナディアン・ナショナル鉄道へのサービスを提供しており、間もなく他の鉄道会社も追加される予定だ。

ニューオーリンズは、米国内の都市としては独特な存在であり、一級鉄道が 6 路線走っている。平均低水位時の深さが 13 m あるミシシッピ川の入り江は、超パナマックス船の喫水にも対応でき、米国各地にある目的地への貨物ポータルを提供する。

ports and shipping containers

この港は、より大型の新たなクレーンの追加も計画している。これにより停泊時間 (現在は平均 7 日) が短縮され、輸送業者にとって、より魅力的な港となる。もうひとつの改善点が、合成樹脂、石油、穀類の地域輸送を迅速化する、ニューオーリンズからバトンルージュまでのバージ () による貨物経路だ。

ニューオーリンズ、コーパスクリスティ、タンパ、ヒューストンなどの都市はパナマ運河拡張により多大なる影響を受けると予測されており、その波及効果はメキシコ湾沿岸部をはるかに超えるものだ。ニューヨーク/ニュージャージー港は、Skanska Koch, Inc./Kiewit Infrastructure Co. (JV) によるチームと 7 億 4,300 万ドル (約 827億円) の契約を締結した。これは、橋桁を 19.5 m 上昇させ、水路上に 65.5 m のクリアランスを生み出す橋建設プロジェクトの一環だ。このプロジェクトと、主要な航行水路の深度を高める 21 億ドル (約 2,337 億円) の浚渫プロジェクトによって、喫水の深い超パナマックス船がニューヨークやニュージャージー州の主要な湾港ターミナルにアクセスできるようになる。

西海岸沿岸部の湾港都市の多くは、水深のある入り江と広範にわたる鉄道網で既に恩恵を得ているが、パナマ運河拡張の影響も感じている。San Diego Unified Port District でエンジニアリングおよび建設部門のマネージャーを務めるディルク・エッパーソン氏は、サンディエゴ港がつい最近サンディエゴ湾南端にある 546,325 平米のNational City Marine Terminal 建造物の全体改修を完了したと話す。米国に輸入される外国車の 10% は、このターミナルが通関手続き地となっている。

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サンディエゴ港 [提供: San Diego Unified Port District]

新規貨物やさらに大型の船舶に備えるため、サンディエゴ港は、B Street Cruise Ship Terminal に充電スタンドを追加した。また、950 万ドル (約 10.6 億円) の Transportation Investment Generating Economic Recovery (TIGER) 助成金から部分的な資金調達を得て、サンディエゴは、2400 万ドル (約 26.7 億円) の Tenth Avenue Marine Terminal 近代化計画のデザイン段階の完了に近づいている。この施設には、冷蔵コンテナ (港はドール社の主要輸出ルートになっている)、全長約 30 m の発電風車用の回転翼など、大型の不定期混載貨物向けのスペースもある。

これらすべてのプロジェクトで、Autodesk InfraWorks などのデジタル 3D モデリングおよびアニメーションソフトウェアは、満潮時の水位上昇を反映した予測のビジュアライゼーションを行う重要な手段となっている。「最大の利点は、未来を推測できることです」と、エッパーソン氏。「何かをデザインしようとするなら、それがきちんと機能することを、船が着く前に確認しておくべきです」。

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