急速な都市化が生み出す危機からテクノロジーで救済

by Dominic Thasarathar
- 2017年7月27日

新たな機器やテクノロジーは変化を約束するが、都市部における未来の住宅は多くの点において、現在人々が居住する家屋と大きく異なるものとはならないだろう。それに残念ながら、プライベートジェット用エアポートやホバーボードは、まだまだ先の話になりそうだ。

都市が発展し、急激な拡大を遂げても、居住や労働、余暇のための空間のニーズは依然として存在する。その一方で、建築やエンジニアリング、建設 (AEC) 業界がこうした空間を計画、配置、デザイン、建設する手法には大きな変革が起ころうとしている。世界じゅうの都市で史上最大の建築ブームが起こりつつあり、建築家やエンジニア、建設業界関係者は「根本的な変化」に備える必要があるのだ。国連の予測では、1,000 万人以上の人口を擁するメガシティが 2030 年までに 41 都市に達する。インドや中国では、地方に住む住民が都市部へと移動するに従って、全く新しい都市が形成されつつある。都心部は 2050 年までに、さらに 25 億人を受け入れることとなるのだ。

現在の中国の総人口の 2 倍にも上る、新たな都市生活者たちが押し寄せる波。その人々に向けてスマートかつサステナブルで頑丈な住宅を建設することは、従来の技術と複雑で能率の悪い建設施工では実現不可能だ。より密度の高い都市環境で生活するのであれば、従来同様の旧態依然とした方法で生活を続けることはできない。それを選べば、非常に高価だが低水準な住宅という結果しか得られないだろう。建設業界は未来の住宅を提供することで、より多くの利益と成果を得るべきだ。居住のニーズを、再考すべきときだ。

より迅速に、より広範にテクノロジーを応用する必要があるだろう。マッキンゼー・アンド・カンパニーは 2016 年に、建設は最もデジタル化の遅れている業界のひとつだとレポートした。だが、ジェネレーティブ デザインや IoT、プレファブリケーション建築、モジュラー建築などのテクノロジーの組み合わせにより、住宅建築はハイテク化を遂げようとしている。

プレファブリケーション・ネイション

今後 10 年の間に、例えば 1 億棟の住宅を新たに建設しなければならない状況を考えたら、プレファブリケーションの採用以外の方法はないだろう。住宅やホテル、マンション、宿舎、そして今や超高層ビルでも採用されているプレファブリケーション建築やモジュラー建築では、家屋部分 (ときには 1 部屋まるごとの場合もある) は工場で事前に作られ、建築現場へと運び込まれる。実物大のレゴブロックのようなこのプロセスは、建設を規格化することでコストを低減し、建設にかかる時間を短縮する。

こうしたブロックを徐々に積み上げるテクニックが、その人気を高めつつある。昨秋、ニューヨーク・ブルックリンのディーン通り 461 番地に、SHoP Architects デザインによる 32 階建ての高層ビルがモジュラー建築により完成した。これは、プレファブリケーション建築の可能性を示すステートメント タワーだ。ロンドンではウェンブリー・スタジアム近くのエリアに、モジュラー ユニットを使用した 25 階建ての学生寮 Apex House の最終区分が完成。ベッド、ランプ、机を含む部屋全体が工場で組み立てられ、トラックで建築現場へと運び込まれた。

組み立てラインで製作される住宅の進歩が、増加し続ける需要を満たすのに役立っている。だが、今後の住宅不足は単なるスピードやスケールの問題ではない。西洋諸国における戦後の公営住宅の大ブームは、鉄筋コンクリートの高層ビルと個性に欠ける公共住宅を大量に生み出した。今日建設される新たな建造物が未来の都市の基盤を構築するには、速度と計画立案を両立させる必要がある。

課題となるのは、密度を上昇させつつ、都市をより住みやすい、あらゆる人々を受け入れる、環境に配慮した場所にすることだ。

これは、単なる空間の有効利用には留まらない。都市の優れた要素を育み、それを強化する建造物であることが重要なのだ。人間は、協力しあうことでより優れた仕事を行い、役割を果たすことのできる社会的な動物だ。マッキンゼーによる 2011 年のレポートによると、世界の GDP の 60% を 600 都市が創出している一方、その住居提供率は人口のわずか 22% に留まっている。より多くの人が都市部へと移動するため、課題となるのは、密度を上昇させつつ、都市をより住みやすい、あらゆる人々を受け入れる、環境に配慮した場所にすることだ。

これは、高性能なセンサーや分析を使用して、よりレスポンシブな (応答力に優れた) 都市計画を実施し、交通インフラや社会基盤の問題解決に役立てることを意味している。例えば、新駅の設置は近隣地域にどのような影響を与えだろうか? 地元の小売業界への波及効果はあるだろうか?

「システムズ オブ システムズ」的デザイン

これまで建設業界は伝統的に、個々の資産と、それに関連するコスト、資産の単体としての機能にフォーカスしてきた。だがデザイナーやエンジニア、ビルダーには、もはやそうした考え方をする贅沢は許されない状況だ。今後は、システムズ オブ システムズ (複合システム) という観点から考える必要がある。ビルダーとプランナーは、単体としての資産ではなく、複数の建築資産が全体として提供できる、実現可能な最良の結果を求めて努力する必要があるのだ。

都市計画の設計者は、データを収集し、それに基づいて行動するべきだ。人々は都市においてどのような移動手段を利用しているだろうか? 占有率パターンは? こういった情報は、例えばプランナーが、都市の住宅供給能力に活用されていない部分があることを理解するのに役立つ。また、都市が供給過剰や供給不足に陥らないようにすることにも一役買う。

IoT やクラウドコンピューティングを活用し、建築環境を形成し、無駄を削減し、環境パフォーマンスを向上させ、すべての人々にとって優れたよりレスポンシブなデザインとなるよう、都市は少しずつ前進を続けている。

データは、都市が大変革への資金供給についてより説得力のある主張を展開し、新しい建設プロジェクトが経済的に実行可能なものであることを説明するのにも役立つ。現在、地球規模では 1 兆ドルの資金ギャップとなっている。これは民間セクターから、より多くの資金提供がもたらされる必要があることを示している。こうしたプロジェクトに潜在的投資家を呼び込むことが、ますます重要になりつつある。

官民パートナーシップの例を見てみよう。現在、政府には道路新設の資金がなく、そうした道路を民間セクターが利権として建設、運用することを期待している。だが、その道路を、果たしてどれほどの車が利用することになるのだろうか? リスクは? その道路の価値の下落は、どれくらいのスピードになるだろう? 不明な要素、特に投資利益率を損ねる可能性のある要素は、その全てが投資家の不安材料となり、資金コストを跳ね上がらせることになる。忠実度に優れ、より大量かつ上質なデータは、資産のライフサイクルコストから利用パターンに至るまでより良質な見識を提供することにより、投資家の信頼を高めることにつながる。

こうしたデータは、未来の建造物とインフラ資産のデザインの向上にも活用できる。ロサンゼルスのプレファブリケーション住宅メーカー Cover は、デザイン プロセスにアルゴリズムを使用し、未来のオーナーにニーズとライフスタイルを尋ねて、窓配置や通風、自然光を最適化するカスタムのユニットや間取図を生成している。この種のテクノロジーは、BIM や VR と並んで、レスポンシブな次世代の住宅ソリューションの着想と提案に役立つかもしれない。

評価可能なものは、向上させることができる。進歩したデータと建設技術を用いることで、住宅やビル、インフラは、分析や理論を基に大きく前進するだけでなく、リアルな人間の行動とニーズに基づいて有機的に成長し、進化するだろう。こうして、生活の質、経済活力、ソーシャル インクルージョン、環境パフォーマンスを後押しする、21 世紀とそれに続く未来に完全に適合した都市が生まれるのだ。

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