土木エンジニアのリアルライフ: ダニエル・イリイン氏が語る交通デザインというパズルのピース

Daniel Iliyn ダニエル・イリイン 土木エンジニア
ダニエル・イリイン氏 [提供: David Evans & Associates]

特定のキャリアの道を、心からの興味を抱くことなく長年進む人は多い。だが、中には最初から強い衝動に従って一貫したキャリアを築き、アイデンティティ クライシスを回避する人もいる。その幸運な選択の理由は、自身の DNA に息づくものだ。

ダニエル・イリイン氏も、そうした選択をしたひとりだ。米国の PE 資格を保持する彼は現在、オレゴン州ポートランドの David Evans and Associates, Inc (DEA) で道路、高速道路の土木エンジニアを務めている。彼には幼少時代から、将来エンジニアになる明らかな兆候があったという。

2010 年には土木工学の学士号を手にオレゴン州立大学を卒業し、DEA のチームに加わる。PE 資格を取得して間もない段階で、稼働中の採石場内での約 8 km の車道延長プロジェクト (英文情報) など、大規模計画設計の数々に関わっている。

そのイリイン氏に、クリエイティビティを要する課題、困難を極める周辺住民との話し合いから、自身がデザインした新設道路での 3 歳の息子とのスリリングな初乗りまで、土木エンジニアのリアル ライフを聞いた。

土木工学の道を選んだのは、どのような理由からですか?
私の幼いころの興味は、数字とパズルでした。母によると、2 歳のときには 100 ピースのパズルをひとりで仕上げていたそうです。文字通り、パズルのピースを手に取れるようになって以来、それを組み立てることに夢中になりました。

私にとって、土木工学はまさに巨大なパズルです。特に交通の設計で、スペースに余裕のない既設の通路に歩道や自転車専用道路を、既存の車線や機能を生かしつつ新設する場合などにはそう感じます。

土木 エンジニア 道路拡張プロジェクト モデル
オレゴン州テュアラティンとシャーウッドを結ぶ 124th Avenue Extension プロジェクトの InfraWorks モデルのビジュアライゼーション ショット [提供: David Evans & Associates]

仕事における、でクリエイティブな部分は?
3D の世界で、さまざまな制約に対処する場合に、クリエイティビティが重要になります。交通のエンジニアが直面する最大の試練は、クライアントや周辺住民による複数の要望の帳尻を合わせつつ、法に定められた設計基準を満たし、安全で効率に優れ、費用対効果の優れたデザインを提供することです。

道路の設計では、道路の勾配や幅、必要なレーン数、走行する車両の種類に応じた設計基準など、外部のさまざまな情報を考慮する必要があります。同時に、環境への影響などの外的要因もあります。例えば、湿地帯や森林の一部が河川周辺の緩衝帯やその他の環境保護上の指定地域内にあり、触れることができない場合などがそうです。文化財に指定された建造物や地域のため、干渉できない場合もあります。こうした制約のある箇所が含まれる場合、クライアントの要望を叶えるには、相当の考慮とクリエイティビティを要します。

またクライアントや周辺住民などエンジニアでない人々も、プロジェクトの早い段階でそのデザイン目標や構想を理解できるよう、副次的にビジュアライゼーション、画像、ビデオなども生み出せる、[Autodesk InfraWorks 360 を活用して] BIM と連携した 3D 視覚化デザインへの移行を進めています。

周辺住民への対応を重視しているのは、裏庭を突き抜ける道路を新設したり、住居やオフィスに面した道路を拡張したりしているからです。周辺住民はプロジェクトに強い関心を持つので、進行中のデザインを目にすることができるよう、意見交換会やオープンハウスを開催しています。

InfraWorks モデル 124th avenue インターセクション オレゴン」。124th Avenue 拡張プロジェクトの InfraWorks ビジュアライゼーション ショット [提供: David Evans & Associates] [/caption] <strong srcset=
周辺住民の懸念やフラストレーションを、どのように緩和していますか?
クライアントとオープンハウスを訪問する際には、工事が必要な理由と、その影響がどうしてこれほど大きいのかという理由の説明に注意が必要です。エンジニアではなく、設計基準について知識を持たない人からの「この道路のスロープを、なぜ自分の土地に割り込むほど幅広にする必要があるのか」という質問に対応するようなミーティングは、最も緊張感の走る瞬間だと言えます。デザイナーとして、プロジェクトのデザイン意図を周辺住民が理解できる形で伝えるべく最善を尽くす必要がありますが、それは決して簡単でない場合もあります。

仕事で不安になるのは、どのような場合でしょう?
コンサルタントとして頭を悩ませることのひとつが、クライアントや周辺住民から寄せられる、さまざまな要望の調整です。クライアントから、必ずしも賛同できないような方法でデザインを依頼されることがありました。もっと効率に優れた方法があるように感じられましたが、こうした場合、どこまでクライアントに抵抗するべきか熟考する必要があります。

あるプロジェクトでは、クライアントが維持を望んでいた既存の歩道を、車道の一部にどう組み込むかで頭を悩ませました。新たに歩道を設置するのに、その周辺に既存の歩道の一部を温存するのは、デザイン上は無意味で、無駄なことだと私は思いました。そのため、歩道を単に置き換えるより、より多くの時間がデザインにかかってしまったと思います。

また、土木分野でのデザインは反復プロセスになるので、道路の一部のデザインの修正が 5 回目あたりになると、フラストレーションを感じることもあります。イライラさせられる一方で、解決案に達したときは、まさにパズルの最後の 1 ピースをはめるときのような達成感が得られます。

[caption id="attachment_11951" align="alignleft" width="960"]土木エンジニア DEA ライトレール プロジェクト ポートランドとミルウォーキーを結ぶライトレール プロジェクトのティリクム・クロッシング橋上で写真に収まるダニエル・イリイン氏と妻のボニー、息子のジョサイア [提供: Daniel Iliyn]

これまでで最もやりがいを感じたプロジェクトは?
ここポートランドで建設された、川にかかる新設の橋を含む 12.8 km の、長いライトレール (軽量軌道鉄道) かもしれません。大学卒業後に関わった、初めてのプロジェクトでした。プロジェクトのデザインの一部を 300 時間未満という約束で手伝う予定でしたが、最終的には数千時間にわたって関わり、車道デザインの大半を行うこととなりました。

こうした難しい状況に最初から放り込まれることで非常に多くを学ぶことができ、有意義な体験となりました。建設工事は数年にわたって行われ、開通の日を迎えたときは、このライトレールに 3 歳の息子と共に乗車しました。父親が設計した道路を眺めて喜ぶ彼の姿を見て、充実した気持ちになりました。道路を横切る際、息子に「ジョサイア、あの道はお父さんが設計したんだよ」と言うと、木々のそばを通り過ぎる際に息子が「お父さんは、この木も設計したの?」と聞いたんです。本当にかわいかったですね。

Redshift の「リアル ライフ」シリーズでは、建築家やエンジニア、施工業者、デザイナー、その他のクリエイター/メイカーの取り組みや成功例など、現実世界における生活を紹介しています。

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