労働力としてのロボット: エンジニアにとっての新時代となる自動化

by Andrew Anagnost
- 2016年7月20日
Brandon Au

製造業の黎明期以来、デザイナーとエンジニアは、モノづくりの限界に繰り返しぶつかってきた。

彼らのアイデアを市場へ投入する実力とキャパシティは、求める製品を生産するために地元または海外で見つけることのできた、製造施設に制約を受けてきた。

だが、進化したロボット技術や工場の自動化、3D プリント、ジェネレーティブ デザイン設計・製造・運用のコンバージェンスが実現する新たな世界においては、エンジニアが理由となるプロジェクトの制約は姿を消すことになるだろう。労働力としての機械学習や計算能力、ロボットが、より有能かつインテリジェントになってきたためだ。

間もなくエンジニアたちは最良のモノをデザインし、それを詳細に分析するようロボットへ渡して、3D プリンター製のコンポーネントを組み合わせるようになるだろう。あり得ない世界だと感じるかもしれないが、この 10 年のうちに、ずっと可能性の高い話になるはずだ。

では自動化の増大は、製造業や建設業に従事するプロのエンジニアにとっては何を意味するだろう。自動化が彼らの仕事を奪うのだろうか、それともエンジニアの役割が進化するのだろうか。

私の答えはこうだ。ロボットの死神を恐れるな。より地域的な特徴を持ち、カスタマイズされクリエイティブな産業革命が、その姿を現しつつある。

ようこそ、未来のエンジニアたち
クリエイティブなエンジニアたちは、現在はデザインのアイデアの実行可能性を評価するため、CAD システム内でのジオメトリ作成を余儀なくされている。だが将来的に彼らの時間は、より効率的に問題の分析と問題文の作成へ費やされるようになり、コンピューターが新たなジオメトリのオプションを生成し、エンジニアの迅速な反復を支援する。結果として問題に関する視野が広がり、新たなチャレンジや可能性が生み出されるようになる。

その一例が今年、(5 回の失敗の後に) ボートへロケット 2 基台の着陸を成功させた SpaceX だ。エンジニアたちがプロセスの開始時に、プロジェクトの制約をジェネレーティブ デザイン ツールに入力していたら、どうなっていただろう。ロケットに取り付けられた全てのセンサー (着陸装置にかかる応力や油圧の不具合、その他の異常をキャプチャする) が、即座にデータをジェネレーティブ デザイン ソフトウェアに返し、デザイン変更の反復をスピードアップできたとしたら。コンピューターはその後、エンジニアが思いも付かなかったような、さらに良質で安価なオプションを生成することができ、より迅速に適切な答えを得るための支援を提供できる。問題の定義付けは、単点の集合から、デザイン/製作/利用のプロセスで進行中のダイナミックな相互作用へと広がる。

その一方で、構造工学と機械工学のエンジニアたちは、モジュラー建築業界 (英文PDF) におけるジェネレーティブ デザインとプレファブリケーションの自動化の助けを借り、複雑な問題を解決していくようになる。製造と建築のコンバージェンスは、より多くの建築部材とシステム (設備 (MEP) のヘッドウォール ユニット、パイプ ラック、カーテンウォールなど) が、現場から離れた工場で事前に製造されるようになることを意味している。そして、より複雑で新しいチャレンジにおける問題に取り組めるよう、エンジニアたちを解放する。

これは全てプロのエンジニアにとって朗報である一方、自動化が工場労働者と建設労働者にどのような影響を与えるのかについては、今も長い議論が継続している。労働力はそれに適応するため、より高度な作業を行えるよう訓練を受けたり、(医療、教育、クリーンエネルギー分野などの) 成長産業に移ったりする必要が出てくるだろう。ロボットが一部の反復的で危険度の高い大変なタスクを引き受ける (つまり、人間に取って代わる) ようになる一方で、ロボットによる自動化と拡張の時代は、総体的には吉報だ。

かつて米国内における雇用の大きな割合を製造業が占めていたが、それは低下し、長きに渡る減少を続けている。しかし、米国における海外生産の動きは終息しつつあり、製造業の雇用喪失も底を打った形跡が見られる。底辺と上向きに戻りつつある曲線が生み出す三角形内のどこかに、自動化された工場を動かす人々と、カスタマイズされた製造のニーズに応える新しい企業が存在しているのだ。

ニーズに合わせて現地で生産
自動化は、理にかなった価格による、消費場所の近くでのものづくりを可能にする。これは中国のような海外生産のメッカに依存するようになっていた米国などの国々へ、より多くの製造業が回帰することを意味する。

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(英文) によると「ロボットがより低価格で入手しやすくなれば、小規模製造業者が大手と肩を並べるようになる力添えとなる」。それは最低賃金が高い国々で、特定のプロセスを産業ロボットに移行させることでコストを削減できるからだ。

2014年の時点では、産業ロボットの販売の大半が中国、日本、米国、韓国、ドイツの5カ国に集中している。他の国々が追随するようになれば、外国企業も同じように、現地市場向け施設の自動化の動きを見せるようになるだろう。

では、米国の製造業はかつての偉大さを取り戻すのだろうか。その答えはノーだ。では製造業の復活により、製造業が雇用総数の大部分を占めるようになるだろうか。もちろん、そうなるだろう。自動化によるコスト削減により、製造業は消費市場へより近くなり、カスタム商品に注力する新しいタイプのメーカーを創出するからだ。

ボルチモアを拠点とするシューズ会社アンダーアーマーは Project Glory 計画の実現に尽力している。この計画は自動化を拡大し、「地元のための地元における」製造業 (米国の消費者向けに米国内で製造し、南米の消費者向けにブラジルで製造するなど) を可能にしようというものだ。

その一方、Rickshaw Bags はサンフランシスコで、カスタマイゼーションと現地生産を組み合わせた。また、アディダスのスピードファクトリー (昨年12月にドイツ・アンスバッハに初オープン) は、ロボット製造でパーソナライズされた靴を生産し、現地のニーズに応えて素早く消費者へ届けている。

robots in the workforce Adidas speedfactory robot
ドイツ・アンスバッハにあるアディダスのスピードファクトリー・ロボット [提供: アディダス]

クリエイティビティのビッグバン
ではカスタマイズされた靴と同じ原理を、より複雑な製品にも適用できるとしたら、どうだろう。エンジニアが 3D プリントやジェネレーティブ デザインなどオートメーションを利用するシステムを使い、個人の仕様に合わせて複雑なデバイスをカスタマイズし、素早く製作できるとしたら。これは、より多くのエンジニアが、より幅広いアイデアに取り組んで、どのアイデアが機能するかを確認し、より多くの問題を解決できるようになることを意味している。製造の方法に頭を悩ませる時間を減らし、生み出そうとしているモノが何であり、それがどう問題を解決するのかを考察することに、より多くの時間を費やすことができる。

私は、エンジニア関連の仕事は今後増大するだろうと考えている。創造の障壁が少なくなることで、より多くの人々がプロセスに関与するようになるためだ。工場のフロアにいる人数は減るかもしれないが、デザイナーやエンジニアは、より多くのモノを構築することができるようになり、クライアントが持つ選択肢は増えて、ニッチ市場を埋める機会は拡大するだろう。これはつまり、ArchiBlox のカーボンポジティブ ハウスや、自転車としてもベビーカーとしても使用可能な Taga のように、優れたアイデアを生み出すために、より多くの時間を費やすことができるということだ。

エンジニアにとって、エキサイティングな時代の到来だ。現地市場向けの、より低価格な製品を、ロボットを中心とした、より効率的な工場で生産するためにデザインできる。またロボットは人間には不可能な加工作業が行えるため、エンジニアは、より多くのアイデアを模索し、より多くの製品を生み出すことができるようになる。

さらにモノ作りに関わり、こういった環境を支持する人々の連鎖も生まれ、よりよい工場をデザインおよび構築する新たな職業も生まれるだろう。また工場はより小さく、よりコンパクトなものとなるため、その数が増える可能性もある。ナイキやメルセデス・ベンツなどのグローバル ブランドは別として、今後は大規模生産経済の恩恵を受ける人は非常に少なくなることを意味している。

だが、アイデアの提供先がグローバル ブランドであれスタートアップであれ、エンジニアは、以前のように制約によるフラストレーションの屈辱を感じることはないだろう。世界は、エンジニアたちの大いなる活躍の場となる。そしてモノは、ロボットの手で製造されるようになるのだ。

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