SFMOMA が拡張され再オープン: パーツの組み合わせを超えたデザイン

by Dana Goldberg
- 2016年5月19日

アンディ・ウォーホルやフリーダ・カーロ、マシュー・バーニーらの作品のホームとなってきたのが、サンフランシスコの細長い土地へマッターホルンのミニチュアのようにそびえ立つ、マリオ・ボッタ氏が 1995 年にデザインしたサンフランシスコ近代美術館 (SFMOMA) だ。その拡張工事は、従来の建物を注意深く取り込んだものとなっている。

ニューヨークとオスロ、そして今回サンフランシスコにも拠点を構えることとなった建築事務所スノヘッタ (Snøhetta) は、異なる2つの美的要素と構造を融合させ、エキサイティングな新しい美術館を作り上げるという偉業を成し遂げた。SFMOMA の 10 階建ての拡張部分は、美術館へシームレスに約 22,000 平米が追加統合され、敷地面積は従来の約 2 倍にまで拡大されている。

限界の先にあるもの
この新しいビルは、拡張の際に既存のビル、非常に限られた土地面積という制約にどう対応するかの実習例と言える。プロジェクトに参加した建築家のひとり、ジョン・マクニール氏は、こうした制約がプロジェクトの実現におけるスノヘッタのアプローチにどう影響したのかを、次のように説明している。

「全てが根本的に一変しました」とマクニール氏。「ボッタ氏がデザインしたビルは広く認識され、美術館そのものと重ね合わせられています。また物理的にかなり制約の多い現場で、土地面積にもそれほど余裕はありません」。

拡張されたSFMOMA
スノヘッタが拡張を行った新しい SFMOMA: Photo © Henrik Kam, courtesy SFMOMA.

スノヘッタの責務は新たな SFMOMA を、既存の美術館にできるだけ融合する形で描き出すことだった。

「複雑な階高の調整などの必要はありませんでした。ボッタ氏によるギャラリーはどれも非常に上手く設計されていて、そのおかげで我々の仕事はずっと簡単になりました」と、マクニール氏。「もう関連性を持たなくなった従来のデザイン上の問題に対して、傾斜や階段を導入する必要はなくなりました。その代わりに課題となったのが既存のビルの一部を再利用することで、これまでギャラリー スペースではなかった部分にまで、それを拡張させています」。

この点に関して、スノヘッタが遂行せざるを得なくなった構造変更はかなりの数に上った。「下から支えていた床を上から吊り下げる形にし、新たに連結されるギャラリーのビーム厚を削減して、できるだけ天井を高くして明るさと視界を最大限に確保できるようにしました」と、マクニール氏。

2 つの構造物を一体化
こうした構造上の独自のアプローチ(そしてボッタ氏が手がけたビルが拡張への堅固な基盤をスノヘッタに提供したこと)の結果、一方のビルから他方へ訪問者が明白な違いを意識せず移動できる、シームレスな体験が実現している。外からは 2 つの建物に見えるが、中に入ると 1 つの建物のように感じられるのだ。

sfmoma expansion fiber-reinforced polymer
スノヘッタによる、新 SFMOMA の拡張部分を覆う繊維強化プラスチックの細部: Photo © Henrik Kam, courtesy SFMOMA.

これは、創造的な制約や制限要因によって素晴らしい作品が培われた模範的な例だ。「一定の制約は当然のことであり、心配や再検討は必要ありません」と、マクニール氏。「それによって、設計プロセスの大半が合理化されます。これは、何の制限も無いと設計の時間が足りなくなるのとは対照的ですね。制約が無い場合、様々なオプションを試みて無駄に時間を過ごしてしまいがちです」。

ボッタ氏のビルに関連する部分の拡張は、その美的側面について言えば、アイコニックな 2 つの構造物の間の会話を成立させる意図があった。これは新しい外観と、近辺の通りからこのビルへの歩行者用通路を組み込むことを意味している。

「1 階部分のオープンスペースは外光をふんだんに取り入れて視界を広くし、できるだけ居心地のよい空間にしたいと考えました」とマクニール氏。それには新しいビルの独特な曲線のシルエットが貢献しており、今回の SFMOMA 拡張部分には、ミンナ通りとハワード通りの 2 箇所に入口が設けられている。

(FRP による) まとめ
ファサードは耐用性に優れ、軽量な複合材料の繊維強化プラスチック(FRP)製で、カリフォルニア州ナパ郊外に拠点を構える Kreysler & Associates 社が提供。この強度とサイズを、とても軽量に実現している。新しい SFMOMA は FRP で覆われたビルとしては、この規模では初めてのものとなっている。

sfmoma expansion Sol LeWitt’s massive Loopy Doopy
新しい SFMOMA の 2 階を見渡せる階段。ソル・ルウィットの巨大な「Loopy Doopy」が左隅に見える: Photo © Henrik Kam, courtesy SFMOMA.

色の一貫性は、最も重要な点だった。「パネルはひとつずつ製作されるので、気を揉みました。できるだけ色を揃えたかったので」と、マクニール氏。「ファサード全体に使用された砂は全てモントレー郡から産出されたもので、同時に抽出され、混ぜ合わせられて社内に保存されました。しっかりやってくれましたよ」。

新しいファサードの形状は 2 方向に湾曲しており、マクニール氏が言うところの FRP による「さざ波模様」がその上に重ねられ、吹き付けられた新雪の層のように見える。それでいて不透明なパネルは、窓がないにもかかわらず (展示されている芸術作品には直射日光を苦手とするものが多い) 重さを感じさせない。

模型を作れば、彼らはやってくる
Snøhetta の設計プロセスにおいては模型の作成が重要な役割を果たしており、それは SFMOMA の設計でも例外ではなかった。「コンピューター・モデルのシミュレーションは重要ですが、理屈抜きに本能的な観点で言えば、人間は何よりも模型に反応しやすいものです」と、マクニール氏。「デスクの横を通った人がオブジェクトに反応するということは良くあります。ネットワーク上のファイルやスクリーン上の画像では、これと同じような生きた感覚は得られません」。

現在では画面上で設計図を描くのが一般的な業界において、これは珍しい視点にも思える。「静止画像と映像との違いのようなものです」と、マクニール氏は笑う。「ストーリーを共有できないと、静止画像では共感するのが難しいこともあります。1 フレームに限定されてしまうからです。映像や模型では、それならではの方法で対象と交わることができるのです」。

sfmoma expansion as seen from Howard Street
ハワード通りから望む、スノヘッタ による新 SFMOMA 拡張部分: Photo © Henrik Kam, courtesy SFMOMA.

スノヘッタによる新 SFMOMA の図面のほとんどは Autodesk Revit で作業され、一部にはAutoCAD が使用されている。「今でも最終の記録図セットの生成に Revit を使用しています」とマクニール氏。「我々のワークフローにおいて、この段階では、それが間違いなく最も重要な部分です」。

スノヘッタが新 SFMOMA の最終段階の仕上げに取りかかり、美術館が再び訪問客を迎える準備を整える中、春にその扉を開く雪景色を想起させるビルの外観が感じさせる不調和性についても考えざるを得ない。それなのになぜか、視覚的には妙に説得力があるのだ。

「中心街の路地には日光があまり入りません。このエリアで一番明るいのが、この美術館だと思いますよ」と、マクニール氏は愉快そうに言う。「暗い通りの先に見える灯台のようなもの。非常に独特で、魅力的だと思います」。

拡張された SFMOMA は、2016 年 5 月 14 日に一般公開が開始される。

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