言葉を超えた専門性: BIM のスキルを生かして米国インテリア デザイン業界で活躍

by Yasuo Matsunaka
- 2017年5月22日
BIM インテリア

海外で働きたいと考えている日本人は少なくない。現在、日本からの海外留学者数は 8 万人以上。この数年で大幅に増えているものの、その 6 割は 1 カ月未満の短期留学で、1 年以上の長期留学の割合はむしろ減少しているという。現地で就職を希望する場合には、就労ビザの取得などの問題も避けて通れない。

米国の大学を卒業後、Team7 International に就職したインテリアデザイナーの山ノ口思保美さんは、その高いハードルを乗り越えたひとり。上海国際ダンスセンターなどのプロジェクトに関わり、現在は高級ホテルやリゾートのデザインを手がける HBA/Hirsch Bedner Associate のサンフランシスコ事務所で働く彼女に、その留学や就職、そしてBIMのスキルを身につけていった過程について話を聞いてみた。

そもそも留学されたのは、インテリアデザインを米国で学びたいと思ったのがきっかけですか?
実は最初は演技専攻でしたが、卒業後もアメリカで働きたいという思いがありました。インテリアデザインや建築にも興味はあったので、日本でBIMインストラクターをやっている母や、建築家だった母方の祖父の影響もあり、留学していたサンフランシスコ州立大学でインテリアデザインを専攻することにしました。

BIM インテリア 上海国際ダンスセンター
Team 7 Internationalで手掛けた上海国際ダンスセンターのインテリアデザイン [提供: 山ノ口思保美]

留学先の大学の授業で、日本との違いを感じられたことは?
とにかく自分で考えないといけない課題が多かったので、覚えることが苦手でも頑張ればできるし、その頑張る姿も見てくれていると感じました。むしろ伸び率の方が大切で、最初がダメでもそこで諦めず、頑張り続けないといけないという気持ちになります。

在学中に Revit の オートデスク認定プロフェッショナル資格を取得されていますね?
学校には AutoCAD のクラスしかなかったんですが、近くのコミュニティ カレッジに Revit のクラスがあって、そのクラスで取った単位を自分の大学にトランスファーできるので、3 カ月間、週 2 日通ってゼロから学びました。

BIM のスキルを身につけようと考えられたきっかけは?
他の大学の卒業生は Revit を使えるし、3ds Max を使ったレンダリングもしている。その作品をポートフォリオに載せて就活をするので、就職を考えるにあたって、学校にRevitのクラスが無いことを言い訳にはできないと思いました。数少ないポジションを勝ち取るには、自分のアイデアを 3D 化し、より美しいポートフォリオを作るプレゼンテーション スキルが必要だと思います。

BIM インテリア Fairmont Empress
6 月末に竣工予定の Fairmont Empress のロビーのインテリア [提供: 山ノ口思保美]

インテリアデザインにも BIM のスキルが要求されますか?
アメリカでは、インテリアデザインの仕事が日本以上に職業として確立していると思います。仕事をしていく上では、構造関係のこと以外は建築の人と同じ知識が必要なので、今の時代は Revit を使えないと大手企業への就職は難しいと思います。

就職に向けてはどのような活動をされましたか?
私は住宅インテリアを手がける小さな事務所 2 箇所でインターンをして、その経歴をレジュメに書きました。就職先を探す際は、希望するポジションを募集している会社を探して、レジュメとポートフォリオ、カバーレターを送ることになります。私も数え切れないほどの数を送りました。送った資料が目に止まれば返事が来て、次は電話か事務所でインタビューを受ける。それで気に入ってくれれば採用という流れです。とにかくポートフォリオが良くないとダメで、自分にどのようなスキルがあるか、デザイン センスも含めて、どれだけポートフォリオに表せているかが重要かなと思います。

そしてTeam 7 Internationalへ入社されたんですね。
はい、そうです。今のトレンドとしてモダンで洗練されたデザインが流行しているし、Team 7 International のボスも日本人の建築家やインテリアデザイナーが大好きという人で、私のデザインの中にそういう要素があると思って採用したのかもしれません。Team 7 International に 2 年半勤めたのち、HBA/Hircsh Bedner Associate へと転職したわけですが、自分の経験からも、まずは小さい事務所から始めて、そこで現場を学んでからより大きな事務所に転職することをお勧めします。

Fairmont Empress ロビー BIM インテリア
6 月末に竣工予定の Fairmont Empress のロビーのインテリア [提供: 山ノ口思保美]

HBA/Hirsch Bedner Associateでの実際の仕事の進め方を教えてください。
ボスがクライアントとのキックオフミーティングで、求められているデザインを理解して、それを事務所で共有します。その後、まずはコンセプトをまとめてクライアントの反応を聞き、そこからはプレゼンしたデザインに対するフィードバックを反映しながら、レンダリングや図面を仕上げていく作業になります。

現在の事務所は少し特殊で、図面もレンダリングもインドのオフィスのチームが作るので、それを添削しながらデザインを固めていきます。そのチームは全員に建築の知識があるわけではないので、できるだけ分かりやすいようにスケッチを送ったり工夫をこらしたり完成まで導きますが、場合によっては自分たちで CAD や Revit、SketchUpを使い、修正したものを提出しています。

HBA での仕事の内容や勤務時間については、どう感じられていますか?
常にやりがいのある仕事で、楽しいです。オンとオフの切り替えはしっかりできますが、締め切りを守るために夜遅くまでや週末に仕事をすることも多いので、終業時刻に絶対に帰りたいという人には向いてないですね。前のオフィスでも、よく夜遅くまで残っていました。インテリア デザイナーや建築家に憧れている人が多く、実際に仕事に就くことができる人は一握りという状況の中で、自分が仕事できるポジションにいることに喜びを感じられないと、モチベーションを保つのは難しいと思います。

女性の職場環境としてはいかがでしょう?
いまの会社は 95% が女性で、産休や育休もありますし、そこから戻って働いている人もたくさんいます。女性だから昇進できないということもないと思います。自分がどれだけ会社に貢献できているかが重要です。

BIM インテリア デザイナー 山ノ口思保美
インテリア デザイナーの山ノ口思保美さん

日本のインテリア デザイナーが、アメリカで仕事をしてみたいと思ったら、どんなことが必要ですか?
仕事の進め方は事務所によっても違うと思いますが、製図など基本的なところは変わらないと思います。もちろん、英語の建築用語が理解する必要はあります。アメリカの建築業界を学ぶ機会を持つという意味では、大学に行った方が楽だと思います。でも英語に問題がなければ、自分の希望する事務所に直接ポートフォリオを送って、電話でインタビューを受けるということも可能だと思いますよ。

デザインをしていく中で、ご自身が日本人であることを意識することはありますか?
日本人だからなのかどうかは分かりませんが、細かいディテールも根気よく仕上げていけることは評価されています。一番重要なのは、クライアントに気に入ってもらえるようなデザインをどう実現するかで、その中に日本人らしいタッチが入るのはいいと思うんですが、日本人らしいデザインをしようとは思っていません。

インテリアデザイナーとしての、今後の目標を教えてください。
現在手掛けている案件が 2021 年竣工予定の 5 つ星ホテルで、地元サンフランシスコの初めてのプロジェクトなので、とても楽しみです。今はこの会社で、デザイナーとしてどれだけ成長でき、どれだけ多くのプロジェクトに携われるかが大切だと思います。私は日本でデザイナーとして働いたことはないのですが、アメリカでデザイナーとして働けていることは、本当に嬉しいです。支えてくれている人たちが誇りに思えるようなデザイナーになれるよう、頑張ります。

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