コンクリートを排したスマート建築を実現する 4 つの力

by Massimiliano Moruzzi
- 2018年7月23日
スマート建設 One Thousand Museum
ザハ・ハディドが遺したデザインのひとつ、米フロリダ州マイアミの高層住宅ビル One Thousand Museum は、ガラス繊維強化コンクリート仕上げの曲線を描く外骨格が特徴的だ [提供: Zaha Hadid Architects]

橋を建設するにあたり、耐久性に優れた、耐用年数の長いサステナブルなものを作ろうと考えた場合、それを阻むものは何だろう? 最大の敵となるのは? それは実は橋そのもので、その重量が問題となる。

現在の建設プロセスで作られた橋や建造物は、本質的にサステナブルでない、エネルギーと材料が過度に集結したものになっている。

コンクリートは、文字通り今日の建設技術の基盤となっているが、最良の建築材料とは言えない。汚染の影響に敏感で、亀裂や染みができやすく、雨や二酸化炭素に反応して崩れやすい。そして、沈下と傾斜を続けるサンフランシスコのミレニアム・タワーの例からも分かるように、ずっしりと重い。

最新のスマート建設により、それを将来にわたって改善可能だ。一連のテクノロジーのコンバージェンス (収束) によって、建設業界における建設の手法とその手段は急激に変化することになるだろう。

新たな材料、アディティブ マニュファクチャリング、ロボット工学、そして新世代の人工脳 (購入者や設計者が製造後に構成を設定できる集積回路 FPGA など) へと総体的に転換することが、イノベーティブな「建設のセル生産方式」を推し進めることになる。これはロボット工学を使用し、スマートなサーフェスやオブジェクトからビルまでも建設する、自動化された製造エコシステムだ。建設業界は、これら 4 つの力を組み合わせることで大転換の中を前進し、よりスマートでサステナブルな都市を実現できる。

ここで、建材にスマート機能を吹き込む知性を持った建設ロボットを想像してみる。いま読者が座っている部屋が、暑すぎだと感じられるとしよう。その部屋は、あなたが持つ不快感には無反応だ。要望を判断することはできず、設定を変更しない限り室温は変わらない。だが、この部屋がスマート複合材料で構築されていると、その壁はまるで「肌」のように機能して、あなたの気分を感じ取り、それに反応する。

スマート建設 One Thousand Museum タワー 組み立てパネル
マイアミの One Thousand Museum タワー向けにクライスラー氏が製作している組立パネルの近写 [提供: Kreysler & Associates]

「スマート」な橋や道路とは、さまざまな意味を持つ。それがスマートである理由は、IoT テクノロジーによって反応できるからだろう。また、コンクリートと鉄筋ではなく、天然繊維と人工繊維を組み合わせた先進の繊維で建設されることで、サステナブルだという点も寄与するかもしれない。

こうした反応性を実現するには、橋や道路に多機能を組み込む必要がある。外付けのワイヤーを建設の二次プロセスで加えるより、橋桁内部にワイヤーを 3D プリントする方が、はるかに効率的ではないだろうか? こうした機能性を、ひとつのプロセスに統合してしまえば良いのでは?

アディティブ マニュファクチャリングにより、もはやデザインの複雑性は問題ではなくなる。ロボット工学と 3D プリントにより、スマート インフラ (橋や道路、住宅など) を、これまでは人間の手作業では不可能だった方法で製造できるようになった。例えば、人間は伝統的に直線的かつ直角の構造体を構築してきた。だが 3D プリントを行うロボット作業員は、そうした偏見や制約にとらわれずに作業する。

今後の建設プロジェクトでは、炭素繊維やポリマーなどの工業材料、絹や綿などの天然材料など、より柔軟な材料が使用されるようになるだろう。高密度で柔軟性に欠けるコンクリートに代わる、サステナブルかつ軽量で、低価格な材料がますます増える。こうした先進材料は、既に最先端の家具や 3D プリント製ヨット (英文情報) など高性能の移動手段の製作に使われている。

建設の新たな世代は、情報を伝達する、さらには電池のようにエネルギーを備蓄できるセンサーを、より軽量でパワフルな材料に組み込むことで現実のものとなる。FPGA を組み込んだ複合材料は、コンクリートとは異なり、継続的かつサステナブルだ。3D プリント技術を用いることで、センサーとワイヤーを建設プロセスに組み込み、橋桁や道路、住宅、構造体に自らを管理する機能を与えることができる。人間の神経系のように、温度や圧力、その他のパラメーターを測定できるのだ。こういった構造体は、さらには人体のように情報をやりとりして自らを修復することも可能だ。これにより、建物の耐用寿命はさらに伸びる。

Kreysler & Associates のプレジデントであるビル・クライスラー氏は、この種の反応性に優れた生物のような材料の分野における草分けであり、そうした材料をタルサの Boathouse Pavilion からマイアミにそびえ立つ Zaha Hadid Architects 設計の One Thousand Museum レジデンシャル タワーまで、さまざまなプロジェクトに使用してきた。また、レース用ヨットの製作でキャリアをスタートさせたクライスラー氏の功績により、現在ガラス繊維は一般的な建材となっている。

スマート建設 Boathouse Pavilion 建設中
米オクラホマ州タルサに建設中の Boathouse Pavilion。帆のような形をした 130 点のガラス繊維強化ポリマー製パネルから構成されている [提供: Kreysler & Associates]

複合材料は、進化する自動車産業においても中核を成すものとなっており、車両の重量を削減し、排気ガス量を低減するために軽量の人工材料が使われている。

これらの種類の材料が持つ生物に似た反応性のポテンシャルにより、肌を用いた先の表現も、より適切なものとなる。ビルがさらに向上したセンサー機能を持つことで、環境の変化へ即座に順応。未来の壁は生体材料のように機能し、損傷した際にも自らを「治癒」できるようになる。

スマート繊維材料で何かを建設しているところを想像してみよう。この繊維には、人体における血管のように樹脂が編み込まれている。この樹脂は、硬化前のエポキシ樹脂のような物質のマイクロバブルを包含。樹脂の血管が破れると、中を流れるこの物質が空気と触れ合って酸化が始まる。こうして亀裂がふさがれるプロセスは、傷の治癒を開始する人体の反応とほぼ同じだ。

肌と同様、メカニカル センサーが神経の末端のように機能して、恒常的な適応が可能となる。自己治癒可能なコンクリートを用いた数々の試みが、このアイデアが定着しつつあることを示している。このコンセプトは、建設の構成要素として複合材料を使うことで発展し、さらにサステナブルなものとなるだろう。

スマート建設 自己治癒 コンクリート
このコンクリートのように自己治癒可能な材料は、人体が傷を治癒するのに似た方法で亀裂を埋める

SF の中の話のように思えるかもしれない。だが今や、こうしたテクノロジーの全てが実在している。突拍子もないものに思えるこれらのアイデアも、人間のサポートによって今後 10 年のうちに現実のものとなるかもしれない。だが、この種の先進的な建設技術が主流となるには、業界がこうしたプロジェクトの実現可能性を、ランドマークとなる複数の建設で示す必要がある。クライスラー氏や、氏と志を同じくするイノベーターたちは、ファサードや、それ以外の必ずしも重要でない構成要素に新たな概念を応用。こうしたプロジェクトが安全であり、サステナブルかつコストも手頃で、効率にも優れていると証明している。

建設業界は、今後の可能性を示すためにも、今こそ教育と情報のインフラを構築する必要がある。今後の建設業界の進展は、ビルダーが現在の可能性を活用することによってのみ起こりうるのだ。

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