雲からヒントを得た Neuschnee の人工降雪システム

by Drew Turney
- 2017年5月2日
雪の結晶 [提供: Neuschnee]

スキーに行ったことがあるなら、もしくはそのドキュメンタリーを観たことがあるなら、人工降雪機をご存知だろう。円筒状のガンタイプや大型の扇を使ったファンタイプの人工雪の散雪装置により、スキー場のシーズン期間を延ばしたり、天然雪が不足した年にはスロープ上の雪を補足したりできる。

従来の人工降雪システムは効果的だが、水とエネルギーに関しては非効率な部分もある。オーストリアのスタートアップ Neuschnee (ドイツ語で「新雪」を意味する) の目標は、それを変えることだ。最高の雪生成装置である自然にヒントを得て、天然の雪が作られるのと同様の、効率的かつエレガントな手法を思い付いたのだ。Neuschnee の CEO、ミヒャエル・バッハー氏は「自然を模倣して雲を生み出し、雪を降らせる方が簡単ではないだろうかと考えたのです」と話す。

人工降雪機は、どれも水と空気を混合して雪を生成するが、その手法によって生成される雪片に、またさらに重要なことに、システムによって水の使用量と環境への影響に違いが生まれる。「オーストリアだけでも、人工雪の生成に毎シーズン約 5,000 万立方 m (編注: 深さ 3 mの競泳用国際規格プール 約 13,000 個分) もの水が使用されています」と、バッハー氏。「より効率の良い人工雪の生成手法を開発することが、我々の責任だと考えています」。

Image of the Neuschnee cloud chamber.
クラウド チャンバー [提供: Neuschnee]

「雲の部屋」の開発

この会社の設立以前、バッハー氏は、雪のレオロジー (流動学) と呼ばれる学問を学んだ。これは雪が重力により下方に移動 (降雪) する際に、どう変形するのかを研究する分野だ。バッハー氏はウィーン天然資源大学 (BOKU)、ウィーン工科大学の同僚たちとともに、雲による降雪と同じ原理によって、氷点下の施設内で自然降雪を生じさせる可能性の検証を始めた。人工降雪機は、これとはかなり異なる物理特性を利用して、人工雪の生成と吹き出しを行っている。

「我々の方法では、同じ体積の雪を生成するのに、時間単位あたりの水の使用量が少なくて済みます」と、バッハー氏。「ポンプによる水の汲み上げ量が少なくて済めば、大量の水と電力を節約できます。水をスノーガンに送る役割を果たしているのはポンプだからです」。

Neuschnee はこの降雪ユニットを「クラウド チャンバー (雲の部屋)」と名付けた。郊外で見かける貯水槽ほどのサイズの構造体で、アルミ製フレーム内に、地上から浮いた状態でぴんと張られた丈夫なポリエチレン製の生地から構成されている。この装置は、1 立方 m の水から 15 立方 m の雪を生成できる。

「水滴を冷却する際に、その水滴が蒸発する状態を作りたいと考えました。それが自然環境における降雪の仕組みだからです」と話すバッハー氏が、チャンバーが雪の結晶を生成する仕組みを説明してくれた。「非常に細かい氷の結晶を注入し、雲に含まれる水蒸気を、この結晶に集めさせます。氷は、水滴よりも分子に引き寄せられます。これが磁石のような役割を果たし、雲内の温度に応じて氷や樹枝状の雪片が形成されるのです」。このようにして、チャンバー下部の排出口から天然雪が放出される。その全てを、人工降雪機よりもずっと少ないエネルギーで実行可能だ。

従来の人工降雪機用のポンプ、配電所、ファンについて、バッハー氏は「スノーガンを稼働させるのに必要なインフラを無視することはできません」と言及している。必要な電力を別にしても、スノーガンの水損失率は 15 – 40% にもなる場合もあり、これは雪の生成時に最大 40% の水が無駄になっていることを意味する。

「環境に配慮した」人工雪市場を見出す

Neuschnee がこれまでに得た見解では、このテクノロジーのセールス ポイントは、少なくとも現時点では、広いエリアを雪で覆うことはではない。「スキー場のスロープ全体をカバーすることを重視するのでなく、狭い面積に毎日新雪を降らせることから始めようと考えています」と、バッハー氏。

Snow crystals produced in Neuschnee's cloud chamber. 
Neuschnee のクラウド チャンバー内で生成された雪の結晶 [提供: Neuschnee]

スキー場は、このテクノロジーの今後の市場となるかもしれないと氏は話す。スキー リゾートの広告写真では天然雪が描かれていることが多いが、実際にはまとまった量の密度の高い雪があった方が、整備はより簡単になる。「開発を進めることで、雪の生産能力は確実に向上するでしょう」と、バッハー氏。「1 時間あたり 0.65 立方 m から 15 – 16 立方 m まで向上させる予定で、これは既存のスノーガンに匹敵するレベルです」。

だが Neuschnee の実験場は、現時点では小運動場やスノースケート/スノーボード場になる予定だ。クラウド チャンバーは、スキー場など、より広いエリアにも応用可能かもしれない。だが科学者としての自身の原点に忠実なバッハー氏は、まずは明確なデータを集めたいと考えている。

「初年度と 2 年目のプランは、このシステムが機能することを実証することです」と、バッハー氏。「現時点では、スキー場がこのアイデアを採用して 100 基を納入できる、などとは言えません。でも我々のテクノロジーを従来の人工雪生成技術と比較できる、充実したデータを提供できるようになれば、今後のシナリオとしてはありえます。現時点では、テスト装置から得たデータしかありません。このデータから推定する限りはとても前途有望ですが、それを現段階で検証するのは困難です」。

Portrait of Michael Bacher.
ミヒャエル・バッハー氏 [提供: Neuschnee]

バッハー氏はまた、新しいテクノロジーを導入する際のコストの問題についても現実的な見方をしている。環境への好影響と、十分な数のクラウド チャンバーがあればスキー場全体にサービスを提供できるという、彼の信念に揺らぎはない。だがスノーガンによる人工降雪機のインフラは、スキー リゾートにおいて確固たる地位を築いている。「スキー リゾートは、これまでかなりの投資をしてきたし、まとまった雪が得られています。他のスキー場も皆同じものを使用している、と言うでしょうね」とバッハー氏。

「我々のシステムは、生産能力 (時間単位での雪の生産量) で言えば、他のシステムほど高効率ではありません」と、氏は続ける。「システムの価格も、より高くなります。小さな会社なので、競合他社と同じ価格帯では装置を提供できないのです」。

だが、この会社の未来はスキー リゾートにもあるとバッハー氏は話す。オーストリアには、今後 Neuschnee を支援するのに十分な数のスキー リゾートが存在している。国際市場での見込みを考慮すれば、未来の可能性はまさに無限だ。

Neuschnee は、オートデスク 起業家サポート プログラムのメンバーです。

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