無駄が無ければ不足も無し: 利害関係者から「リーン コンストラクション」への協力を得る方法

by Matt Alderton
- 2016年6月14日

建設業界を人間に例えてみると、その人物は種類と量が豊富なことで有名なバイキング形式のレストラン チェーン、Golden Corral で 3 枚目の皿を手にして料理を選ぶ列に並んでいるところだろう。

カリフォルニア周辺の建築関連のプロフェッショナルに対して「リーン コンストラクション」の原則を教授している、カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするコンサルタント会社 The ReAlignment Group of California 設立者兼ディレクターのダン・フォシェ氏は、現在の建造技術にはダイエットの必要があると述べている。

フォシェ氏は建設労務全体の 57% (PDF) が無駄だと示唆する建設産業研究所 (CII) のデータを引用し、「この 50 年間、建造技術の生産性は向上するどころか低下しています」と話す。「この業界は、あまり良い仕事をしてきませんでした。プロジェクトの建設は実現しても、非常に高額で長い時間がかかり、効率も良くなかった。その結果、オーナーは支払ったコストに十分見合った価値を得ることができませんでした」。

フォシェ氏によると、リーン コンストラクションにより従来の建設方式以上の価値が顧客へ提供され、無駄が減り、コストが低減できる上、引き渡しもより迅速になる。しかし、施工会社に作業方法の変更を納得させるのは非常に難しい課題だ。フォシェ氏は、これを成功させるにはリーン コンストラクションの支持者がその価値を実証し、その利点を伝え説くことで利害関係者の信頼を勝ち取ることのできる、変革推進者による草の根ネットワークを構築する必要があると言う。

「リーン」の概念
建設にも応用可能な「リーン (無駄がないことの意)」というコンセプトは、自動車製造分野からスタートした。「リーンの概念は、トヨタ生産方式から生まれました」と、フォシェ氏。トヨタは無駄を削減することでリソースを節約する、自社の名高い生産方式を開発した。この方式は、その目標を「ジャストインタイム」生産システム、つまり必要な物を必要な時に、必要な量だけ生産することで実現する。さらにこの方式には「人間の手を加えた自動化」を意味する自働化も取り入れられている。

stakeholder buy-in

「デザインや建築の分野では、これを「人間性の尊重」と呼んでいます」と、フォシェ氏。

自働化を実践する生産ラインでは、機械が生産を担当し、人間は問題解決に取り組む。機械に問題が生じたら人間が介入して当面の問題を解決する短期的軽減策を考案し、また根本的原因の分析を行うことで、同じ問題が繰り返し生じることのないよう長期的対処手段を編み出す。これにより、不具合の少ない生産を行うことでビジネスに、より高品質な製品を生み出すことでカスタマーに、より魅力的な仕事を提供することで従業員に、それぞれ利益が生まれる。

ソフトウェア開発には機敏さと反復が要求されるため、「リーン」の原則は特にシリコンバレーでは人気だ。リーンの概念は、テック系スタートアップでは事実上のビジネス モデルとして機能しているが、継続的改善や価値創成、無駄削減の原則がカスタマーおよび従業員と施工会社との間の差別化に役立つ建設現場でも十分な意味を成す。

「無駄を削減するために施工会社と設計者が出来ること全てが彼らのコストの削減につながり、競争力を高めることにもつながります」と、フォシェ氏。「また、この業界は労働力不足に直面していますが、その明確な回答のひとつが、いまある労働力の無駄な時間の削減です。従業員それぞれが知性と体験により作業を継続的に向上させれば、仕事はより楽しいものとなり、生産性も向上します」。

「リーン」を導く
リーン コンストラクション方式の建設現場は、従来の建設現場とは異なって見える。効率が高まり、よりダイナミックに問題解決が行えることによって、現場の以下のような問題が解消される:

  • 混雑 – より少ない人手で作業が行える
  • 散乱 – 現場で運搬される器具や材料が少ない
  • 無秩序 – 障害や邪魔、危険が少ない
  • 険悪さ – 残業が少なく、仕事に対する満足度が高い

stakeholder buy-in

こうした利点にもかかわらず、このリーン・ビジネスモデルに抵抗する人は多い。「物理学上、最も強い力のひとつが惰性です」と、フォシェ氏。「人間は変化に抵抗します。一定の方法を続けて、それでしばらく生計を立てていると、それに固執したくなります。手堅いですからね。私たちは、それを経験から知っています。しかし何かを変える場合には、その未来がどうなるかを分かっているとは限りません」。

リーン コンストラクションの利点を信じるプロジェクト オーナーは、未来がどのような姿かだけでなく、それがどれほど明るいものであるのかを利害関係者に示して、彼らを自らの考え方に引き寄せる必要がある。ここで、利害関係者の信頼を得るための 3 つのアドバイスを紹介しよう。

1. トップから取りかかる
ゼネコンとその協力会社の両方の重要人物、つまりCEO (または常務) とプロジェクト監督の支持を得る必要がある。「この 2 名が熱心に取り組み、自身が先頭に立ってリーンへと進む道の指揮を執ることに前向きならば、残る組織がそれに追従する可能性は大です」と、フォシェ氏。

2. 言って聞かせるのではなく実演してみせる
CEO と監督にリーン コンストラクションを紹介する際、冗長なプレゼンは避けるべきだ。その代わり、彼らがリーン コンストラクションの価値を自ら見出すことができるような演習に参加させるとよい。

フォシェ氏は Villego というシミュレーションを活用している。これはレゴブロックを使用し、参加者にリーン コンストラクション方式を紹介するものだ。この4時間のシミュレーションは 6 ~ 28 名の参加者向けにデザインされ、2 ラウンドから構成されている。まず第 1 ラウンドでは、参加者は従来の工法でレゴ構造を計画、構築する。次に第 2 ラウンドでは、リーン コンストラクションの工法で別のレゴ構造を計画、構築。Villegoによると大抵の場合、参加者は構築にかかる時間を、第 2 ラウンドでは 1/3 から 1/5 にまで削減できる。

「リーン コンストラクションの価値を人に押しつけることはできません」と、フォシェ氏。「ありとあらゆる統計結果の提示はできても、本人が違いを実感できなければ、結局変化は起きないでしょう。こうしたシチュエーションは、この違いを彼らに感じてもらうのに役立ちます」。stakeholder buy-in

リーン コンストラクションの利点を説明するもうひとつの方法は、リーン コンストラクションの概念を利用して、ある単独の問題を解決してみることだ。そこから得られる結果は、より幅広い組織改革に利用できる。たとえば、変更命令の処理に通常 6 週間かかっているとしよう。この場合、オーナーは「バリューストリーム・マップ」と呼ばれるリーン テクニックを使用して既存の変更命令プロセスを分析し、無駄を特定して、より効率的なものになるよう再設計することができる。

「容易に達成できる目標はたくさんあります」と、フォシェ氏。「こういった小さな成功の達成が、利害関係者に次のチャレンジに取り組む勇気と力を与え、そこから話を進めることができるのです」。

3. 身近に感じさせる
リーン コンストラクションに対する CEO と監督の信頼を得たら、次の (比較的簡単な) ステップは、残りの組織を説得することだ。リーンの実践に従業員を参加させることで、彼らにリーンの概念を紹介し、関心を集めることができる。これにより従業員は自らの仕事ぶりを分析し、業務を向上させる手法を自発的に実践するよう促されるのだ。実現のヒントとして、フォシェ氏はポール・エイカース氏の著書「2 Second Lean」を薦めている。

ビデオも役に立つ。フォシェ氏は (もちろん彼らの許可を得た上で) 従業員の勤務状況をビデオに撮り、彼ら自身が録画内容を確認して自己分析することを提案している。たとえば実際に使用される場所の近くに機材を移動することで、時間を節約できると気付く従業員がいるかもしれない。また、タスクを従来とは異なる順番で完了させることで、より早く、あるいはより安全に作業が行えると理解する者もいるかもしれない。

「皆がそれぞれの担当における専門家なのだという事実を本人に気付かせ、自分たちの仕事ぶりをよりニュートラルな目で考察できるよう手助けすれば、従業員は自分たちの業務レベルをより向上させられると悟るでしょう」と、フォシェ氏。「こうして理解が広がり、物事が少しずつ良くなっていけば、従業員もやる気になり、熱心に取り組むようになります。そして最終的には業務の向上に熱心で、チーム全体の流れがより良くなるよう、他者と協力し合う人たちばかりが集まったプロジェクトになります」。

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