マイ デザイン マインド: 建築家スタンリー・タイガーマン氏から学ぶ貴重なレッスン

スタンリー・タイガーマン
スタンリー・タイガーマン氏 [提供: Tigerman McCurry Architects]

スタンリー・タイガーマン氏が、そのキャリアにおいて、ある程度の敵を作ってきたことは周知の事実だ。

シカゴ在住で知識、経験ともに豊富な、この 87 歳の好戦的な人気建築家は、2013 年 10 月にアメリカ建築家協会から特別功労賞を授与されている。その手荒な率直さは、自身が手がけた建築物と同じくらい有名かもしれない。2013 年に敢行された「Chicago」誌のインタビューで、ミース・ファン・デル・ローエが設計した IBM オフィスビルのシカゴ市による再デザインの、彼による評価は「クソ」だった。

社会問題や後継者育成に高い関心を持っているという面もあり、イリノイ ホロコースト博物館やホームレスの緊急一時宿泊施設であるパシフィック ガーデン ミッションの設計者なのだが、こうしたことは、彼の公衆へ向けたコメントの無愛想な虚勢の中にかき消されてしまう。モダニズムの優勢に異を唱えたシカゴ在住の建築家 7 名からなるシカゴ セブンのメンバーであり、また独創性に富んだ公開討論会を企画してきた扇動者でもあるタイガーマン氏は、単に強気の発言を繰り返しているわけではない。

スタンリー・タイガーマン イリノイ州スコーキー Illinois Holocaust Museum & Education Center
イリノイ州スコーキーの Illinois Holocaust Museum & Education Center (2009 年) [提供: Tigerman McCurry Architects]

建築家、教育者であり、キュレーターでもあるタイガーマン氏が、このインタビューでは寛大でおおらかな面を見せ、自身のロール モデルであるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの不屈の意志を称賛し、どこでインスピレーションを見出し、それをどう育んでいるのかについて説明している。次世代の建築家についても、愛を込めて、次のようなアドバイスを贈る。「ゆっくり進め。コピーはするな。自分の立場を貫け。切磋琢磨せよ」。

あなたはシカゴの建築の伝統と歴史に深いつながりを持っており、事務所はシカゴ市リバー・ノースにあり、イリノイ大学シカゴ校建築学科で学長を務め、さらにはシカゴをモダニズムの街と呼んでいます。シカゴの伝統から、どのようなインスピレーションを受けられましたか?
私はシカゴ生まれですが、この街で建築家として活動することは、メッカにいるムスリムのようなもので、まさに情熱の炎のまっただ中にいるようなものです。シカゴは地球上で最もモダンな都市ですが、それは 1871 年のシカゴ大火で街の大半が焼け落ちた後の、計画都市化に端を発しています。先達である優れた建築家たちと競い合うことは、大変ですがやりがいがあります。

スタンリー・タイガーマン ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ Crown Hall sinking into Lake Michigan
スタンリー・タイガーマン氏が 1978 年に発表した、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが手がけたクラウン ホールがミシガン湖に沈むコンセプト イメージ [提供: Tigerman McCurry Architects]

シカゴの未来は安泰です。若い世代の建築家たちは、理論的な解釈も含めて、素晴らしい才能を持っています。それは私にとって、やりがいと刺激でもあり続けています。私がミース作品のひとつ (レイクショアドライブ アパートメント) に住んでいるのは、明確な意思にもとづいた決断であり、この卓越したデザインと、志すべきレベルに応えるような生活をしたいと考えているからです。

ミースは、あなたの作品に強い影響を与えましたか?
いえ、ミースの作品と私の作品に物理的な関連性はほとんどありません。関連しているのは、彼の思考と仕事への取り組み方です。1938 年にドイツを去らざるを得なくなったとき、彼の 3,000 冊の蔵書のうち、ナチス親衛隊が携行を許可したのは 30 冊だけでした。その 30 冊全てがイリノイ大学シカゴ校図書館の貴重書室にありますが、神学者アウグスティヌスやトマス・アクィナスの書も含まれたセレクションには驚かされます。ミースはかなりの読書家でした。

スタンリー・タイガーマン Illinois Regional Library for the Blind and Physically Handicapped
視覚障害者および身体障害者のためのイリノイ州地域図書館 (1982 年) [提供: Tigerman McCurry Architects]

不用意に言葉を発することはなく、常に真摯な物言いで、とても口数の少ない人でした。彼のことをよく知っていますが、極めて印象的な人です。人生、仕事、建築について、そのコメントにも杜撰なところは全く無い人だったので、大変でした。物事を非常にゆっくりと慎重に進める人で、どのような形、状態、構造であっても、準備なく取りかかるということは決してありません。それは私の中に、今でもある種のロール モデルや模範として、たたき込まれています。私の生来の性格はそうではありません。間違いを犯すことも多いのですが、立ち戻ってそれを修正しようと努めます。ビルが建設上の困難を切り抜ける時のように。ときには、非常に杜撰にも思えるやり方で物事を検討することもあります。考えを重ねて、これもあれもダメだとなった場合、デザインを繰り返し何度もやり直します。建築は、作家にとっての編集作業のようなものです。作品を推敲して、少しずつ良いものにしていくのです。

あなたの作品で、編集の重要性が特に現れているものを挙げることはできますか?
いいえ。でも説明してみましょう。かつて、モントリオールにあるミースのオフィスで、私たちはあるプロジェクトに取り組んでいました。私は誰かと話していたのですが、ミースはそのそばで製図板に向かっていました。若い男性がミースに、あるものの外観についてのアイデアをどう実現すべきか質問し、ミースは考えてみると言いました。それから 3 週間後、私は同じオフィスにいました。ミースもあの若い男性と一緒にいて、どうすればいいのかを彼に説明していました。そして最後までやり通したのが、私の心に残っています。ミースは正しい判断を下すのに 3 週間かけたのです。このことは、私の思考方法にとって大切なものとなりました。

あなたは夫人であり仕事上のパートナーでもあるマーガレット・マカリー氏と建築事務所 Tigerman McCurry Architects を運営されています。これも挑戦ですか?
ええ、簡単なことではありません。常に議論になります。でも、マーガレットは非常に優秀な建築家なので、彼女の意見に従いますよ。ずっとそうしてきたわけではありませんが、今ではそうです。私の影響で、マーガレットは少し機敏になりました。彼女の影響で、私は少しゆっくりになりました。マーガレットのセンスには、非の打ち所がありません。

スタンリー・タイガーマン Instant City project
Instant City プロジェクト モデル (1966 年) [提供: Tigerman McCurry Architects]

2011 年に出版されたあなたの自叙伝は「Designing Bridges to Burn」というタイトルですが、デザイナーのあなたが、なぜ「橋を燃やしたい」のでしょう?
私の仕事への取り組みにおける残念な部分に、必要以上に多くの失言をしてしまう点があるからです。私は軽はずみな発言をしがちです。だからこそ、ミースは私にとって重要なお手本だったわけです。彼が熟考せずに何かを非難することは、決してありませんでした。このタイトルは、マーガレットと私が議論を戦わせていたときに、彼女が発した言葉に由来するものです。彼女は「あなたが裏道でうつぶせに倒れているのが発見されたとしても、警察が犯人を見つけるのには相当長い時間がかかるでしょうね。あなたを殺したい人間はたくさんいるから」と言い、「あなたは、燃やされることになる橋をデザインするような人生のステージに来ているのよ」と続けました。私は必ずしも扱いやすい人間ではないようで、それは申し訳ないと感じています。自分では、そう難しい人間だとは思っていないのですがね。

「Chicago」誌のインタビューで、「特定のスタイルに戻るよりも、毎回まっさらな状態からスタートする」のが好きだと述べられていますが、アイデアはどこから生まれてくるのですか?
アイデアはそれぞれの独自性から生まれるものです。人はそれぞれ、その大志も、目標も、発想も異なっています。また、私の思考がその瞬間にどこにフォーカスしているのかも異なります。特定の瞬間からより一般的な瞬間、現場から作品へと進み、また元に戻るのです。よく「お気に入りのプロジェクトは?」と聞かれるのですが、その答えはもちろん、次のプロジェクトですよ。

建築家としてスランプに陥ったらどうなりますか?
現在、私たちは幾つものプロジェクトに取り組んでいます。ミシガンのある庭園の詳細設計に着手したところで、どうやって困難を切り抜けるか頭をひねっているところです。クライアントに私が考えていることを話してみたのですが、それが別のプロジェクトに役立ちました。クリエイターが突き当たる壁、つまりスランプは、そう大したことではありません。そこから離れて、何か別のことをやっていれば、おのずと道が開けるものです。しばらく忘れてみる必要があるのです。

Redshift の「マイ デザイン マインド」シリーズは、さまざまな業界をリードするデザイナーたちによる洞察を紹介しています。

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