スター建築家の時代から、ドリームチームによる実践の時代へ

by Taz Khatri
- 2017年5月18日
スター建築家 ラファエル・アランダ カルマ・ピジェム ラモン・ピラルタ
スペイン・ジローナ県オロットにあるワークスペース Barberí Laboratory 内のラファエル・アランダ、カルマ・ピジェム、ラモン・ピラルタ。[提供: Pep Sau/Pritzker Architecture Prize]

建築はこれまで、著名な建築の達人が生み出すものだと理解されてきた。

フランク・ロイド・ライト、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエ、最近ではレム・コールハース、ザハ・ハディド、フランク・ゲーリーなど。建築界でおなじみの名前は、そのアイコニックな作品への独占的な貢献者だと認識されているだろう。だが、その建築家たちのビジョンを実現する上で決定的に重要な役割を果たす事務所スタッフたちの存在は、それほど知られていない。

権威あるプリツカー賞を例に挙げると、1979 年に創設されたプリツカー賞の受賞者 40 組のうち、建築家個人が37 名を占めている。精力的な活動を行うジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンのデュオが、このパターンを2001 年に打ち破り、2010 年には妹島和世と西沢立衛が再びチームとして受賞している。

3 月 1 日に発表された 2017 年度のプリツカー賞受賞者は史上初めて、スペインのカタルーニャを拠点とする RCR アーキテクツ の、ラファエル・アランダ氏、カルマ・ピジェム氏、ラモン・ヴィラルタ氏の 3 名のチームだった。その審査員評では RCR 作品のクオリティに欠くことのできない、協調性も讃えられている。「彼らが発展させてきたプロセスは、プロジェクト全体も、その一部をとってみてもパートナーの中の 1 名だけに帰することのない、真のコラボレーションである。そのクリエイティブなアプローチは、継続的なアイデアの混合と、絶え間ない対話によるものだ」。

建築は、実際にはこれまでも、ずっとチームによる取り組みだった。IE School of Architecture and Design 学部長でプリツカー賞事務局長を務めるマーサ・ソーン氏は「どのような建築物も、その実現には建築家だけでなくクライアントや優秀な職人たち、ビルダーなど多数の人々が必要とされてきました」と述べている。「最近では、建築物の完成にはコンサルタントやプロジェクト マネージャー、建設管理者、施工会社などが必要です」。

Architectural Record」誌のキャスリーン・マクギガン編集長は、建築プロジェクトの成功にはチームワークの果たす役割が非常に大きいと話す。「建築の仕事の大半は、映画のようなものです。確固としたビジョンを持つ監督と、クレジットにリストされている、彼らなしにはプロジェクトを実現できなかったであろう多数のスタッフがいます」。

建築は変化しつつあり、また同様に「Architectural Record」誌が取り上げるテーマも変化している。「建築は変化を遂げてきています。それは我々の雑誌も同じです」と、マクギガン氏。「都市というコンテキスト内における建築と、分野を超えたコラボレーションに重点が置かれるようになりました」。

スター建築家 Les Cols Restaurant Marquee
スペイン・ジローナ県オロットにあるレストラン、Les Cols Restaurant Marquee。2017 年の受賞者ラファエル・アランダ、カルマ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタによりデザインされた。[提供: Hisao Suzuki/Pritzker Architecture Prize]

建築の教育手法もまた、よりコラボレーティブなプロセスになりつつある。建築家による高尚な天才の崇拝は、学校で始まる。「教育機関の多くがいまだに 19 世紀のボザール モデルを踏襲しており、学生は机に座って、師匠である教授から直々に批評の言葉をもらうのをじっと待っています」と、ソーン氏。「しかし今では、新しく、より協調的な手法が用いられるようになりました。この手法では、スタジオの中で学生たちが学際的なグループとしてプロジェクトに取り組み、意見は 1 名の教授から各学生へ個別にではなく、学生から学生、学生から教授、また複数の教授から学生グループに対して与えられます」。

こうした建築の教育方法の変化は、より実社会を反映したものだ。「さまざまな意見に耳を傾けて理解し、そうした異なる意見を有益な方法で具体化できるよう学生を指導しています」と、ソーン氏。

誰もが憧れる、由緒あるプリツカー賞にすらこうした進化が反映されているのであれば、この動きへ注目し、その根底にある要因を検討する価値がある。建築の実践をコラボレーション (Autodesk Collaboration for Revit などのツールが支えている) の領域へと推し進める要素は、グローバル化と新技術だ。

「建築におけるコラボレーションのモデルは、以前より優れたものになっています」と、ソーン氏。「その理由のひとつは、情報の流れが大幅に増大していることです。コラボレーションを妨げる障害は、世界の異なる場所にいる人々同士の間であっても、ほぼ無くなりました。また BIM などの新しいテクノロジーにより、建築家とエンジニア、施工業者の間で、以前ほどは情報が分断されなくなりました」。

マクギガン氏は、建築のコラボレーティブな側面が強調されることが増えたとは認めてはいるものの、それを二者択一的な現象だと断じることには躊躇している。建築は、連携のチームワークと、明確なビジョンを持つクリエイティブな人物が演じるダンスのようなものだと、マクギガン氏は考えている。

「現在も、優れたビジョンを持つ一人の建築家が運営する大規模な事務所は存在しますが、“孤高の天才”という考え方は流行遅れだと思います」と、マクギガン氏。「どのプロジェクトにも違いがありますし、そのプロジェクトで何を具現化するのかを決定する際には、非常に多くの要因を考慮に入れる必要があります。有能な建築家であっても、チーム無しで複雑かつ大規模なプロジェクトを実現することはできません。そのデザインの特色の決定や、デザイン展開の監督を行うのが、その建築家自身であったとしても」。

マクギガン氏は、新進の建築事務所の台頭に伴い、建築においてコラボレーションがますます大きな役割を果たすようになっていると感じると話す。「コラボレーションは、かつてないほど重要になっています」と、マクギガン氏。「新興の建築事務所では、“孤高の天才”という考えは、それほどまん延していません。従来の例はというと、スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル (SOM) など、有名建築家の名を冠した有名事務所です。新興の事務所にはスキッドモアも、オーウィングズも、メリルもいませんが、その名を一般には知られることのない主任クラスのデザイナーたちが素晴らしい仕事をしています」。

だが、他のクリエイティブ分野と同様、「孤独を好む巨匠」という神話はしぶとく残っている。ドウィン・ヒースコート氏は、「フィナンシャル・タイムズ」紙に寄稿した「Age of the Starchitect (スター建築家の時代)」で、「近代建築は、スター建築家、「孤高の天才」的建築家、ナプキンに書き留めたアイデアの閃き、セレブリティ、世界的名誉などのストーリーそのものです」と書いている。だが建築の教育と実践が変化するにつれて、スポットライトは徐々に舞台裏へと向けられるようになり、真にコラボレーティブな共同芸術を浮き彫りにするようになるだろう。

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