TAMassociati による人道的な建築が、建物の外にも癒やしを拡大

by Patrick Sisson
- 2016年9月12日
スーダン ハルツームの心臓外科サラーム センター [提供: Marcello Bonfanti]

建築家のラウル・パンタレオ氏は、自身のデザイン事務所 TAMassociati がいかに多忙であるかを、肩をすくめて説明する。「残念なことに、この数年間、ビジネスは爆発的に拡大しています」。

クライアント数と国際的な売上高の増大は、TAMassociati のような建築/デザイン事務所には歓迎すべきことのはずだ。だが、その活動の分野が病院や医療センター、難民用住居など人道的な建築物の建設プロジェクトの場合、ビジネス モデルとマーケット シェアを同じ物差しでは測れない。

パンタレオ氏は自身の事務所の哲学を語る際に「建物は、私たちが人々に与える最初のメッセージであり、癒やしのプロセスの最初のステップです」と述べている。「戦禍で荒廃したエリアで、最善の未来を信じているという発言は強力なメッセージとなります。施しではなく、何かを共有することが大切です。自分のためのデザインと、難民キャンプで大変な時間を過ごしている誰かのためのデザインが、異なるものであるべき理由は存在しません」。

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スーダン 南ダルフールのニャラ小児科センター [提供: TAMAssociati]

パンタレオ氏は、イラクやアフガニスタン、自身の事務所が 10 年以上活動しているスーダンで、パートナーであるマッシモ・レポーレ氏とシモーネ・スフリーソ氏、その他8名のデザイナー、建築家のチームと、単に効果的なシェルターを建設しただけではない (最も有名なのはスーダン・ハルツームの心臓外科サラーム センターで、2013 年にアーガー ハーン アワードの建築部門賞を受賞している)。現地の生活様式や資材を取り入れてサステナビリティを促進するだけでなく、世界各地のパートナーたちとコラボレーションを行い、機能性がフォーカスされがちなエリアに美意識を持ち込んでいる。

「私たちはユーザーと患者、建物の間で関係性と共感を構築できると信じているのです」と、レポーレ氏。「現地のテクノロジーと職人の技術、地産材料を使用することは非常に重要ですが、機能以上に美しさが必要となります。美により人々をもてなすことが、希望と敬意というメッセージを与えるのです」。

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スーダンのポートスーダン小児科センター [提供: Massimo Grimaldi]

レポーレ氏とパンタレオ氏が、建築の持つエモーショナルな力について、理論に夢中で世界を変えようとうずうずしている学生のように興奮したトーンで語るのは、決して偶然ではない。この二人が出会ったのはヴェネツィア大学で学び、建築や社会住宅、公共空間の最新理論を専門とするヨーロッパの雑誌「Utopica」で働いていた 80 年代初期だった。

建設環境の可能性について意見を交換し、文章で表現する経験が現在の彼らを形成し、TAMassociati の設立へとつながったのは自然な流れだ。初期のプロジェクトのひとつ、イタリア・パドヴァのエシカルバンク (倫理的銀行) Banca Popolare Etica の曲線的な木造建造物は、この事務所を今日に至るまで特徴付けるテーマにつながっている。それは、信頼性に優れた実用的な建造物、社会福祉へのフォーカス、そして大抵は非営利であるクライアント層という制約の中での「美観の向上」だ。

この事務所の国際的な活躍は、スーダンでプロジェクトを開始し、イタリアの救援機関 Emergency と長期的なパートナーシップ契約を結んだ 2004 年に始まった。2007 年に完成したハルツームのサラーム センターは、TAMassociati のアプローチを体現するものだ。広範に及ぶ現地調査 (パンタレオ氏によれば、少なくとも過去 10 年間、チームは年の半分をアフリカで過ごしている) により、チームは土地の風習やスタッフ、患者のためのデザイン方法を深く理解するようになった。

人道的な建築 エコハウス プロトタイプ計画 セネガル
セネガルのエコハウス プロトタイプ計画 [提供: Matteo De Mayda]

タペストリーのような壁 (縄でできている) に囲まれた中庭には伝統工芸が使用されており、地元職人が登用され、文化的関連性を持った、その土地ならではのデザインとなっている。イランの伝統建築要素であるバードギール (風採り塔) など現地の要素を採り入れることは、長い目でみればコストの節約にもなり、建造物がうまく周辺環境へ溶け込むのにも役立つ。

「伝統的なスタイルの検討は、実用的でもあります」と、パンタレオ氏。「スタイルを追いかけるのではなく、雰囲気を捉えるのです。苛酷な条件下のプロジェクトで、かつ資金が少ない場合、最も簡単な選択肢が最良の選択肢であることも少なくありません」。

ウガンダでの Maisha Film Lab や サステナブルなセネガルのエコビレッジのプロトタイプなど、世界各地で数々のプロジェクトが進行しており、TAMassociatiは複数の国にわたる現地施工業者とのコミュニケーションに AutoCAD を使用している。過去には他のプログラムで業務を行っていたが「真の国際的なスタンダード」を使って作業するほうがずっと簡単で、TAMassociati がより多くの仕事を受注するようになった今では、それはもはや必須だ、とレポーレ氏は話す。

心臓外科 サラーム センター 人道的な建築
心臓外科サラーム センター [提供: Marcello Bonfanti]

事務所が現在業務に取り組んでいる数々の紛争地域について、レポーレ氏は「酷い世界です」と嘆く。だが間髪を置かず、事務所のプロジェクトやプロセスが状況を大きく改善できると、楽観的な見通しを持っているとも話す。

「落成後は、デザインした数々の病院で長い時間を過ごしました」と、パンタレオ氏。「子連れの母親が心地よさそうにしているのを見て、建築とは四方に壁を作るだけではないのだと、つくづく思いました。外来には庭があり、そこで植物を育てるのに廃水の一部を使用しています。砂漠地帯で木を育てるというメッセージは強力です。この場所は、単なる建物を超えた何かになっているのです」。

TAMassociati は Autodesk Foundation (オートデスク基金) のメンバーです。Autodesk Foundation は、デザインによるインパクトを実現する人材と組織への投資に注力する初の財団です。インパクト デザインの詳細は www.ImpactDesignHub.org をご覧ください。

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