ゲームエンジンでデザインした音と映像、身体性のインタラクティブ アート

TETSUJIN インタラクティブ アート

オーディオビジュアル アーティストの高橋哲人、メディア アーティストのモシ村マイコの両氏がユニットとして活動する TETSUJIN – AUDIO VISUAL は、音楽と映像と身体性を軸とした作品を創造。先日開催された Autodesk University Japan 2017 のギャラリーには、インタラクティブ アート「みんな、かみさまの所為」を出展した。

観客が「かみさま」となって森羅万象杖コントローラーを使い、雲の上から人々が暮らす地上に事象をもたらすこの作品は、絵本のようなアナログ的なビジュアルと和楽器・人声を使ったサウンド、そしてフィジカルなアクションを反映するコントローラーや展示物としてのフォルムのユニークさなどが特徴だ。

「もともとは僕がひとりでコンサートの出し映像や広告映像、映画の VFX などを手がける、いわゆるクライアント仕事をやりながら、時々自分の作品の制作・展示をしていました」という高橋氏は、以前から 3ds Max のユーザーであり、「僕が事故で体が思うように動かなかった時に、花火大会に遊びに来たモシ村が CG やアニメーションに興味があるということで作品集を見せてもらったら面白かったんです。僕が CG を教えながらアシスタントをしてもらうようになり、徐々にアート作品を一緒に作るようになりました」と語る。

当初は、CM やコンサートで“求められているテーマやコンセプトをいかに実現するか”というクリエイティブが中心だったが、その後はもっと自分たちの想いを形にした作品を積極的に発表していく方向にシフト。「僕とモシ村は絵のカラーが大分違うのですが、そこも大切にしています」と、高橋氏。

モシ村氏のカラーがより強く出たという「みんな、かみさまの所為」は、ゲームエンジンである Autodesk Stingray を使って初めてプログラミングを行った作品であり、最初の展示は 2016 年 7 月の信州高遠美術館「高遠 KONJAKU STORY 展」。その翌月にはアクロス博多の「遊べる!デジタルアート展」に出展されている。

作品の制作に際して、絵と音をインタラクティブに動かすために Stingray の勉強を始めた、とモシ村氏は言う。「普段 3ds Max を使っているので、UI が似ていることや、エクスポートが簡単でとても入りやすかったです。プログラミングを一度もやったことなかったので、ノードでプログラミングできるというのが私にとってはとても魅力的でした。勉強、試作、音作り、絵づくりを並行して行い、Autodesk さんの協力もあり、4 – 5 カ月で完成させました」。

TETSUJIN インタラクティブ アート AUJ2017
TETSUJIN – AUDIO VISUAL の高橋哲人氏 (左) とモシ村マイ子氏

長野と博多での展示を通し、「本当に伝えたいことは何なのかを見つめ直すことができました。それから大急ぎでコンセプトをブラッシュアップし、絵と音を 1 カ月くらいで作り直しました」と高橋氏。

「なんだか楽しげ、というだけで終わってしまって“演奏を通して曖昧になっていくかみさまと人間の境界”というキモの部分がバージョン 1 では表現できてなかったと思います」と、モシ村氏も語る。「展示には子どもたちも多く来てくれて、私が予想もしていなかった遊び方をしてくれたりして、それはそれで良かったのですが、アート作品だから一緒に来ている大人のひとにもコンセプトがきちんと伝わった上で楽しんでもらわないと意味がないよねと……」。

そしてふたりは、ブラッシュアップした作品を家の中に展示し、友人に触ってもらったりしながら、コンセプトビデオも制作。こうしてリニューアルした作品は「2016 アジアデジタルアート大賞展 FUKUOKA インタラクティブアート部門」と「北九州デジタルクリエーターコンテスト 2017 中谷日出審査員賞」で入賞するなど、高い評価を受けた。

「その後、デバイス制作についても取り組んでいたところだったので、Autodesk University Japan 2017 への出展に際しては、やっぱりかみさまといえば木の杖だよね!と思い“杖”のかたちのコントローラーを作ることにしました」とモシ村氏。このユニークな杖型のコントローラーは 3ds Max と MudBox (英語情報) で設計し、3D プリンターで出力された。

「既製のコントローラーやソフトウェアでは限界があるので、作品のコンセプトに合わせてデバイスやソフトウェアも設計し、インタラクションまでデザインしていかないと自分たちが作りたい作品が作れない段階に来ていた」と高橋氏。「そこで、2017 年はプログラミングや電子工作に積極的に取り組みました。そこで貯まったノウハウで杖のコントローラーを作れるようになっていたので作品をアップデートしました」。

そして、こうした作品づくりから新たに生まれたのが、高橋氏のカラーを強く出した、ロックスターになれる音と光のホウキギターの新作「I am ☆ Star」(アイ アム ア スター) だ。

「この作品は僕たちが初めてハードもソフトもいちから作った作品です。この楽器だったらこう弾くよな、こういう演奏感であって欲しいよなというのをプログラムや工作で形にして行きました。これまで作ってきた音楽と映像にデバイスが加わることで、より身体的に絵や音を操れるようになりました」。(高橋氏)

演奏者がホウキの柄を握り、ボディの前で腕を動かすとホウキに内蔵されたセンサーによって音と光を演奏できる。ホウキを弾くと演奏者にスポットが当たり、そこはたちまちステージと化し、周りの観客はオーディエンスになり、いつの間にか演奏者はロックスターになっているインタラクティブ アートである。ホウキギターという楽器としての完成度も高く、コードやスケールのアルゴリズムを搭載することでだれでも簡単に気持ちよく弾けるが、高度な演奏もできる仕組みには、常に映像と音楽を一緒に作ってきた高橋氏のこだわりがあった。

「実は「I am ☆ Star」は僕自身が人生に悩み、うつ状態の中でもがく中で、再び自分の夢に向かってぶつかって行くために作った作品なんです」と、高橋氏。「この作品では僕の夢を疑似体験することを通して、夢を忘れないことの大切さを伝えています。人としての生きざまがそのまま作品になるので、一見マイナスに見える感情も、作品を通してプラスのエネルギーになってお客さんに伝わります。悲しみや怒りだって生きる力であるからだと思います。もちろん楽しいことをしたいですが、そういったあらゆる感情を作品として昇華し、展示やパフォーマンスでお客さんと対話する時、作品を作る意味や自分が生きる意味を感じます」。

この新作「I am ☆ Star」も、先日 WIRED 主催の「Creative Hack Award 2017」で SONY 賞を受賞。ふたりの作品と活動に、今後も期待したい。

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