元溶接工がエンジニアリングへのユニークなキャリアパスを築いた方法

by Drew Turney
- 2017年1月26日
ユニークなキャリアパス SAFE Boats ヘッダー
SAFE Boats は世界各地の救助機関や軍隊向けに船舶を製造している

デザイナーのジョン・ゴッドボルト氏が溶接工場の床を初めて掃除したときには、それがユニークなキャリアパスの第一歩になるとは思いもしなかった。

その道は、軍用および救助活動用特殊船舶のデザインと製造を行う、375 名の社員を抱える SAFE Boats のリード デザイナーのポジションへと続いていた (SAFE は Secure All-around Flotation Equipped: 安全な統合水上装備の略)。だが、氏のキャリアパスは、全く一般的なものではなかった。

unique career path welding

ワシントン州エドモンズのコミュニティ カレッジに通っていた十代後半、ゴッドボルト氏はキャリアについて深く考えたことはなかったが、手を動かす仕事が好きなことには気付いていたという。生活のためパートタイムの仕事が必要だったので、友人の勧めに従って溶接工場の床掃除の仕事に就く。その掃除をするうち、会社の業務に興味を持つようになった。

その溶接工場が、SAFE Boat の協力会社だった。当時 19 歳だったゴッドボルト氏は、本物の溶接作業を目の当たりにして、まさに一目惚れをした。カレッジを中退して初歩レベルの製造工の職を得ると、程なくして主任格の溶接工となる。翌年 SAFE Boats が協力会社との提携を止めると、ゴッドボルト氏はSAFE Boats に入社し、出世の階段を上って 60 名の溶接工を管理する立場に至った。

unique career path Godbolt
ジョン・ゴッドボルト氏

入社後すぐに製図とモデリングのソフトウェアに触れる機会を得て、すっかり夢中になった。これは、彼が既に知っている分野でもあった。「最高にクールでしたね」と、ゴッドボルト氏。「習得するのに全く時間はかかりませんでした。チームと連携して工場床の溝の問題を解決するのは、日々行っている業務に関連していたからです」。

自らの手で切り抜ける
デザインをより深く研究するようになり、AutoCAD LT の使い方を独学で身につけると、氏は工学に関する自身の知識に自信を持つようになる。デザイン ソリューションがワークフローのパイプラインから出てくるのを待つのではなく、独自の方法で解決策を生み出す習慣を身に付けた。「そうしたタスクを、エンジニアになるつもりで引き受けるようになった訳ではありません」と、ゴッドボルト氏。「返事をもらうのに時間がかかることは分かっていたので、自らオフィスに出向き、ソリューションをスケッチしたほうが良いだろうと考えたのです」。

こうした形式張らずに何でも自ら引き受けるという態度が、製造上の些細な問題解決を、パーツ全体の再設計へと変化させた。SAFE Boats は、顧客満足度の問題に巧妙なデザインで対処するポジションを設けるにあたり、ゴッドボルト氏がこの会社を必要としているのと同じように、この会社には彼が必要だとすぐに気付いた。今回は SAFE Boats の経営陣も、この仕事にぴったりな人物が誰なのかを把握していたのだ。

経営陣がゴッドボルト氏に調査を依頼したとき、彼の反応は「私の意見が知りたいんですか?私はただの製造工で、この件にエンジニアリングは関係なさそうですが?」というものだった。もちろんエンジニアリングも関連はしているが、上司たちがゴッドボルト氏のところに駆け付けた理由は簡単だった。彼が自ら行動する、問題解決に長けた人物であることを、自身の行動で示していたからだ。

自ら出世した男
レトロフィットを成功させ、氏はその能力を再度証明することになる。クライアントにも高評価を得て、6 カ月後にはデザイン エンジニアのポジションに昇格した。

ユニークなキャリア SAFE Boats logo

興味深いことに、ゴッドボルト氏は自身を「エンジニア」と呼ぶことはない。「エンジニアと同じ職務を相当量こなしてはいますが、学位はありません。だから私は決してエンジニアではありません」と、彼は主張する。実質的にはエンジニアとして業務を行っていることは認めつつも、彼は学位を持つ同僚たちが、より多くの「教科書的」知識を有していることを強調する (それが彼の現段階のキャリアで必ずしも重要だという訳ではないが) 。

だが、他のエンジニア志望者が、どうすればキャリア上で同様の成功を得られるのか、ということ問題だ。とりわけ、大抵は正式な訓練が最も重要だとされる重工業の分野においては。

一般的な大学進学というルートに比べれば間違いなく困難だが、時代は変わった。ゴッドボルト氏がスタートした 16 年前に比べると、ツールやテクニックはさらに分化され、複雑になった。また、SAFE Boats のような企業が学位のない技術者を最初から雇用することはないだろうが、SAFE Boats は内部での人材昇格に誇りを持って取り組んでいる。ゴッドボルト氏は、機械工が地域営業部長になった例や、初歩レベルの溶接工がサービスマネージャーになった例などを、数多く知っている。

「こうした機会は、SAFE Boats のような企業内ではまだ存在していると思います」と、ゴッドボルト氏。「ひとたび社内に足を踏み入れられさえすれば、そこから徐々に出世することは今でも可能です。そういった機会が、この国からなくなってしまったとは思いたくありません」。

ユニークなキャリアパス SAFE センターコンソール
SAFE の Center Console Offshore モデルは、スピード、パフォーマンス、燃費重視でデザインされた監視艇だ

「デザイナー」とは?
もちろん、いまや全てが一周して元に戻っている。ジェネレーティブ デザインやクラウド プロセッシングなどの進歩により、デザイナーとエンジニアに要求される仕事は日々変わりつつある。「2D での描画から 3D 形状の理解へ、そしてフル 3D モデル作成へと進んできました」と、ゴッドボルト氏。「エンジニアである必要すらありません。3D モデルを開き、拡大縮小するだけで、どこに何が構築されているのか確認できます。日常的にソフトウェアを使用することすらない人に対するアクセシビリティは、本当に素晴らしいものです」。

だが、こうした変化は、彼が長年にわたり懸命に取り組み培ってきたスキルを不要なものにしてしまうのではないだろうか? 「それはどちらとも言えません」と、ゴッドボルト氏は笑う。「日々の些細な職務、反復作業は、今では簡単に完了できます。来たばかりのインターンに、ソフトウェアを使った作業を行わせるのは本当に簡単です。彼らはあっという間に習得してしまいます。まるでテレビゲームのように」。

unique career path U.S. Coast Guard SAFE Center Console
アメリカ沿岸警備隊は視界とクルーの動きが遮られない SAFE Center Console を使用している 

だが、ツールやソフトウェアに関係なく、エンジニアという職種は、教育を受けたかどうかは別にせよ、特定の種類の人を選ぶ。「コンピューター プログラムを最終ステップとして考えることからスタートすることを勧めます」と、ゴッドボルト。「まずそこに飛び込み、業界についてしっかり理解することです」。

先導となる知識を用いて、キャリアの最終目標を念頭に置きつつ、仕事に身を投じることが重要。これは優れたアドバイスだ。

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