ベンチャー キャピタルに関する 5 つのアドバイス: ハードウェアスタートアップは製品だけにあらず

by Avidan Ross
- 2016年4月27日

ハードウェア スタートアップをスタートするには、他のスタートアップ同様に資本が必要となる。だが、標準の運用マニュアルのようなものに頼って始めることは難しい。ハードウェア スタートアップは非常に新しい世界であり、低コストの部品やデジタル製造によってこの領域へのアプローチが可能になったのは、ごく最近になってからなのだ。

シリコンバレーのベンチャー キャピタリストのほとんどは長年にわたり、「ハードウェアには手を付けない」という、暗黙だが時として明らさまなルールに従ってきた。ここ数年で変化はしているが、資金調達の傾向を論じるレポートやインフォグラフィック、ブログは、どれもソフトウェア中心になっている。現在も、新規スタートアップの 90% 近くはソフトウェアにフォーカスしたものだ。

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だが今日ではハードウェアのためのシードやエンジェル、早期機会も存在可能となっている。スタートアップを、より低予算でスタートできるようになったからだ。3D プリントと Fusion 360 などのツールのおかげで、かつては数百万ドルのコストがかかった実用レベルのプロトタイプ製作が、数十万ドル、あるいはそれ以下で実行できるようになった。初期資本の調達は、すべて製作するものの複雑性次第だ。

ハードウェア スタートアップの一部は、クラウドファンディング キャンペーンのスタート前に投資家から資金調達している。外部資金を募る前に、真っ先にクラウドファンディングを利用している場合もある。どういう方法を採るかを問わず、投資家や、私が共同設立者を務める Root Ventures のようなベンチャーキャピタル (VC) 企業の注目を引きたいと考えている方に、5 つのアドバイスを贈ろう。

1. 製品製造の核となるものを理解し、その役割に関与せよ
Root Ventures では「インダストリアル・デザインはこの事務所、機械技術はこの企業、電気工学についてはこの企業が担当し、製造は中国で行います」という説明を行うような個人事業主には警戒している。サードパーティ に依頼するつもりなら、しっかりと関与して、現場で直接指揮を執る必要がある。中国の製造業者を使用するなら、中国に出向くべきだ。どのような工場なのかを実際に見て確認し、プロセスを理解し、いまも関係性が重要な業界であるということを自覚すべきなのだ。

製品を市場投入するのは簡単ではない。製品の製造がどれだけ大変なことなのかを理解することが重要だ。この理解が欠けているなら、成功の見込みは完全に営業担当の力量次第になってしまう。サードパーティの営業担当は美辞麗句を並べるだろうが、最終製品に投資しているのは彼らではない。危険にさらされるのが自分のブランドではない彼らの視点では、稼ぎが出るだけ製品を売ることが出来れば十分なのだ。

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2.トロイの木馬を造る
我々は利益率を優先した、素晴らしい製品を製造しようという起業家に会う機会も数多い。プレミアムな価格で販売されるが、経常利益は無い。これは極端な大量販売を意図したシンプルなデバイスか、利益率が高く非常に複雑な製品のいずれかだ。どちらも優良なビジネスになる可能性はあるが、Root Ventures をワクワクさせる類いのものではない。我々がより興奮を覚えるのは、WiFi や Bluetooth がもたらすユビキタスな接続性に、クラウドによる無制限のストレージやプロセッシングのパワーを組み合わせ、トロイの木馬のようにさらに重要な何かに化ける可能性を秘めた製品だ。

例えば Nest は単なるサーモスタット・ビジネスではないし、DJI も空飛ぶおもちゃだけを製作しているわけではない。いずれも自社の製品を使用して、全く新しいプラットフォームを構築している企業だ。製品が接続性によって提供できる価値について考え、相互接続された数千の製品により価値提案をいかに変わるかを熟考しよう。

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Momentum Machines のハンバーガー製造ロボット [提供: Root Ventures]

3. 主力製品を反映した主力チーム
Root Ventures が出資している Momentum Machines を例に挙げてみよう。Momentum Machines は人間の手を一切借りず、オーダーメイドのハンバーガーをゼロから生産するロボットを製作している。設立チームは、家族経営のハンバーガー・チェーン出身者と、スタンフォードで機械工学を学んだパートナーで構成されている。業界を知る者と、ロボット製作を知る者。パーフェクトな組み合わせだ。

Mashgin というメーカーにも投資を行っており、こちらはコンピューター ビジョン技術をベースとするセルフレジ・システムを製作している。バーコードをスキャンするのではなく、カメラの視界に製品を置くと製品を認識し、認識結果に基づいて代金を請求する仕組みだ。素晴らしいハードウェアだが、Mashgin の技術の難しさは機械部分ではなく、コンピューター ビジョンにある。この企業に必要なのは電気技術者ではなく、優秀なコンピューター ビジョンの専門家、まさに設立者達自身なのだ。解決すべき課題を認識し、核心となる問題の解決に適切なメンバーを、チームに確保することが大切だ。設立メンバーがある目的に突き動かされているなら、人材確保はより簡単になる。

4. 常に最高の人材を確保せよ
設立チームと同じく重要なのが、チームの人材採用の手腕だ。チームメートを、究極の投資家と考えてみるといい。彼らの持つ財源は、特殊にして限られたもの、つまり時間とエネルギーだ。だが投資家とは異なり、彼らはひとつの企業に全力を注ぐことができる。才能あるチーム・メンバーに、自分自身に投資する気持ちを起こさせられれば、同じことを投資家にさせるのも、ずっと簡単になるだろう。

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Mashgin のセルフレジ・システム [提供: Root Ventures]

挑戦や自律性、興奮に満ちたスタートアップ立ち上げの機会には、驚くほど多数の経験豊富な機械技術者や電気技術者、ファームウェア エンジニア、デザイン エンジニア、UX デザイナーが飛びつくだろう。ボーイングやシーメンス、ABB、Rockwell で働く人々に聞いてみるといい。必ずしも刺激的とは限らないプロジェクトに従事している人達から話を聞くには格好の場所だ。ハードウェアの盛り上がりは始まったばかりで、このムーブメントと自分たちとの関わりに気付いていない人もまだ多い。優れた人材の採用は、最高の投資となる。

5. 製品の表面でなく深層的な意味について考える
我々が投資している Plethora という企業は、各種部品のカスタム製造や手検査、納品を数日間のうちに提供する。さらに Plethora はデザインのデバッグを行い、部品価格を即時に表示する CAD ソフトウェア用のプラグインを作った。「Buy Now」と書かれたボタンをクリックすると材料のアルミがマシンに投入され、自動で切り出しが行われて、配送用ボックスに放り込まれる。つまり、Plethora はフレキシブルな工場のようになっているのだ。

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[提供: Plethora]

柔軟な工場は、大量生産に代わるオンデマンドの在庫確保を可能にする。これは未来の製造のカギとなるものだ。Plethora の製造や他の企業の自動組立技術など、そのテクノロジーを問わず、今後はデザイナーやエンジニアがより迅速に反復を行い、これまでにないほど製品に近づくようになる。製造プロセスの民主化により、先進的な製品開発の参入障壁は低くなる。しかもアイデアの検証コストは大幅に下落中だ。

Root Ventures は、こうした変化が、より多くのハードウェア エンジニアに起業の検討を促すようになることを願っている。整備されつつあるインフラも後押ししている。共同設立者や社員、サービス プロバイダー、投資家など、その役割を問わず、我々はあなたを応援しているのだ。

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