建築での VR 活用で知っておきたい 4 つのポイント

by Kim O’Connell
- 2016年11月21日
VR 建築
Image composite: Micke Tong

優雅な家の中を歩き回って、リビングの大きな窓や壁にかけられた絵画、広々としたキッチンに感服。ペンダントライトが柔らかな明かりを灯し、足元では大理石の床が光沢を放って、魅力的な家具が歓迎してくれる。ここで VR ゴーグルを外して、ミーティングを再開。

こうしたシナリオは、VR (Virtual Reality: 仮想現実) を導入する建築家が増えるに従って、より一般的になりつつある。VRや、関連技術である AR (Advanced Reality: 拡張現実)、MR (Mixed Reality: 複合現実) により、デザイナーはビジュアライゼーションの範囲を拡張可能。実際に建築が行われるより遥か以前に、同僚やクライアントが建物や空間を体験し、理解できる新たな方法を提供する。建築家は VR によって、建物の見た目だけでなく、そこでどう「感じる」かも伝えることができるのだ。

VR 仮想現実 建築 プロジェクション
Image composite: Micke Tong

CGarchitect Digital Media Corp. 代表取締役社長で、建築ビジュアライゼーションのプロ向けオンラインマガジンとコミュニティ CGarchitect の発行人を務めるジェフ・モトル氏は、「建築においては伝統的に青写真と模型が使われ、この 20 年ほどは 3D モデリングも利用されるようになりました」と述べている。

「VR は、こうした伝統的な手法の代わりにするには最適なのですが、それはメーカーですら理解できていません」。メーカーは、現在も VR を企業向けソリューションというよりゲーム向けだと考えているが、先日ラスベガスで開催された Autodesk University にも登壇したモトル氏は、それも変わりつつあると語る。

テクノロジーの進歩とオプションが拡大する速さは眩暈を覚えるほどだが、この新たな仮想世界へ勇敢にも踏み出そうと考えている事務所に向けて、4 つのポイントを紹介しよう。

1. VR は変化の激しい業界
VR そのものは数十年の歴史を持つが (初のヘッドマウント システムは1968 年に登場している)、このテクノロジーはこれまで柔軟性や先進性に欠けていた。モバイル テクノロジーの進化により誰もが高解像度の画像を手元で見られるようになり、この 2 年で VR は飛躍的な進化を見せた。

Oculus Rift や Galaxy Gear VR、HTC Vive、Microsoft HoloLens、Google Cardboard などのヘッドマウント ディスプレイ (HMD) が広く流通することで、VR は主流となり、より低価格になった (ただし一般的なコストは数万円から数十万円)。また 2014 年に Facebook が 20 億ドルで Oculus を買収したことも、分りやすい形で業界を後押しした。

「難しいのは、全てが凄いスピードで変わっていくことです」と、モトル氏。「全ての HMD を試せる人は限られているので、長所や短所を継続的にチェックするようにしています」。

CGarchitect のアンケートによると、VR の先進的なユーザーがいるのは欧州 (40%) と米国 (21%) で、このテクノロジーが業界にとって革新的なものだというコメントも寄せられている。回答者の 70% が VR/AR/MR を活用しているか 2017 年には導入するとしており、77% がこのテクノロジーを使った実験を行っているか計画中だ。

建築 VR oculus rift
[提供: Oculus Rift]

 2. VR/AR/MR は類似しているが異なる能力を持つ
VR は、大抵の人がこのテクノロジーで連想するような、没入感を持ったヘッドセット内の体験だ。「VR により、外の世界から完全に閉ざされた仮想環境へ没入できます」と、モトル氏。「使用するデバイスによっては、ルームスケール VR を使って、その空間を“歩く”ことが可能です」(仮想空間でグリッドガイドを使えば、本物の壁へ衝突することもない) 。

AR は、大抵は携帯電話やタブレットなど小型デバイスを使い、現実の表示上にデータや指示情報がアニメーションする。AR アプリとして一般に広く知られているのは「ポケモンGO」だが、プロフェッショナルな活用例としては、エンジニアがメカニックに修理方法を教えることなどが挙げられる。

MR は VR と AR を組み合わせ、仮想オブジェクトを現実世界に重ねることができる。例えば別の国にいる建築家と構造エンジニアが仮想世界でネットワークし、現場にある仮想の建築物に関するコミュニケーションを行うことが可能だ。

3. 建築家は VR をデザインの様々なプロセスで活用できる
VR のメリットに、異なる詳細レベル (LOD: Levels of Detail) でレンダリングできる点が挙げられる。建築家はデザインの初期段階で空間的な関連性やサイズ感を理解するため、写実的ではない部屋への没入体験を実現可能。また現実と違わぬ体験も実現できるので、クライアントへのプレゼン用に、高窓でフィルターされた柔らかい陽射しと、外で鳥がさえずるサウンドで構成された VR 映像を作ることもできる。

HTC Vive や Oculus などの VR ハードウェアを BIM ソフトウェアと統合する建築家も増えている。The Future Group の建築家、VR アドバイザーであるケン・バウマン・ラーセン氏は、「それにより、建築家とクライアントはプロジェクトの空間的なクオリティを本当に理解できます」と語る。「空間が理解されることで、クライアントのデザインへの信頼が向上し、ミーティング時間やデザインの改定も減らすことができます」。

Cardboard ヘッドセットやスマートフォンによるモバイル VR ソリューションの人気も向上している。「建築家は [Autodesk] Revit などの BIM ソフトウェアからダイレクトに、もしくは 3ds Max と V-Ray を組み合わせたビジュアライゼーション ツールなどを活用して 360 度ステレオパノラマのイメージをレンダリングし、そのイメージを VRto.me や IrisVR Scope のようなサードパーティ サービスを利用して Web へパブリッシュできます」と、ラーセン氏。

VR 建築 ヘッドセット HMD
Image composite: Micke Tong

4. VR が建築業界で使用されるために必要なこと
VR には相当の知識が要求されるため、建築家がこのテクノロジーを試す時間を見つけるのは難しい。「VR は、その没入体験の実現のほとんどをゲーム エンジンに依存しています」と、モトル氏。「ワークフローもパラダイムも、建築とは全く異なります」。

彼は今後メーカーが、建築専用の VR ソリューションの開発にポテンシャルを見出すことに期待している。既に一部の事務所は Autodesk Revit LiveStingray などのプラットフォームを活用して BIM データを VR へ変換しており、この場合はゲームシステムではキャプチャされないような重要なビルディングデータも維持される、ただし現時点のゲーム システムは、ビルプロジェクトのインタラクティブな設計や建設の用途より、エンドユーザーの理想的な VR 体験にフォーカスされている。

今後より多くの建築家が VR を導入することで、将来の市場も作られる。「私は VR メーカーが、ゲームとコンシュマーを超える市場が存在することを理解することを切に願っています」と、モトル氏。「デザインの世界に、大きな機会とシナジーがあることを考えてほしいですね」。

だがラーセン氏は、建築家が待つ必要は無いと言う。「BIM ツールによるデザインを試すため HTC Vive や Oculus Rift など PC ベースの VR システムを手に入れ、Cardboard や Gear VR、Google Daydream View を使ったモバイル VR で、クライアントやコラボレーターへ VR でデザインを届けてください。重要なのは、実験を始めることです」。

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