マイ デザイン マインド: A+I 設立者が語るパフォーマティブなワークプレイス デザイン

by Jeff Link
- 2017年5月30日
A+I
A+I 設立者のブラッド・ジズモア氏 (左) とダグ・フォルジャー氏 [提供: A+I/Sam Nixon]

A+I 設立者であるダグ・フォルジャー氏とブラッド・ジズモア氏は、ドットコム時代が到来しつつあった 1996 年にコロンビア大学院を卒業。そして、ワークプレイス デザインの基準を変化させる機会があることを認識した。このニューヨークの新進建築家たちは、人々が働く空間を変えることにより、仕事のやり方自体を変えたいと考えたのだ。

それ以来、 A+I は建築やインテリア デザインからワークプレイス ストラテジー、ブランド デザインまで多様な分野で活躍する、国際的に認知された事務所へと成長を続けてきた。クリーンなライン、自然光を多用したオフィス空間とブランド デザイン (クライアントには Tumblr、HBO、アンダー アーマーらが名を連ねる) は、いずれもドラマチックでありながら温かみを感じさせるもので、A+I は、「Interior Design」誌の 2016 Hall of Fame (2016 年度の殿堂入り) 受賞者に選出されている。

かつてはマーシャル・フィールズ百貨店所有のとてつもなく大きな倉庫兼卸売センターであり、現在はインテリア デザインのショールームやテック系企業が集まる重要なロケーションとなった、theMART。その入口へとつながる、イタリア製大理石による幅 15 m ほどの階段は、現代のワークプレイスに対する A+I の新たなビジョンを示す優れた例となっている。

ジズモア氏とフォルジャー氏は強力なデュオだ。ジズモア氏は冗談混じりに、自身をフラストレーションの溜まった舞台俳優だと表現する。劇場での経験が、建築をパフォーマティブな企てだとする自身の解釈を形作ってきたからだ。オフィスビル内、ブロードウェイを問わず、小道具や照明、振り付けには想像力を刺激するパワーがある。一方、フォルジャー氏の建築とのつながりは、より直感的なものだ。高校時代に、デンバーで隣人がゼロから家を建てるのを手伝って以降、その家の日々の習慣を観察。デザインと建設、居住は、発展する独特の対話の一部だと理解するに至った。そのふたりに、建築が人々の仕事と暮らしにどのようなインスピレーションを与えるのかを尋ねてみた。

“A+I” という名前は「建築 (architecture) プラス情報 (information)」を表しており、最も優れた建築は情報から生まれると述べられていますが、それはなぜですか?
ブラッド・ジズモア氏 (以下 B.Z.) コロンビア大学院を卒業したとき、私たちは建築の持つ、物語や語り口により人々の行動を変化させ、従来とは異なる想像や行動、仕事を行うことを促す力について研究を始めました。建築とはパフォーマティブなものであるべきで、その大部分を研究と実情の調査が占めています。

クリエイティブ プロセスで、最も困難な部分は?
B.Z. 私たちのデザインは、それ自体で存在価値を持つ装飾芸術作品ではありません。クリエイティブ プロセスは、クライアントとのパートナーシップとして捉えています。つまり取り決めですね。それに集中し続けるのは、なかなか難しいことです。でも、私たち独自のビジョンに妥協を加えたものを生み出すよりも、クライアントのプロジェクトを最良の形で生み出したいと思っています。

クライアントの職場の文化やダイナミクスに調和するオフィスをデザインするには?
B.Z. その質問に答える最良の方法として、類似する企業 2 社のために行い、非常に異なるレスポンスを得るに至ったプロジェクトを紹介しましょう。ひとつは Squarespace で、そのニューヨーク本社に8 カ月にわたって取り組みました。そこでは、中断がある種の文化になっていました。コードを記述しているテック部門のグループも、Web サイト制作のコンセプト テンプレートやグラフィックスを開発しているクリエイティブ部門も、集中し続けられないという問題を抱えていたのです。

workplace design horizon media in new york
ニューヨークの Horizon Media [提供: A+I/Magda Biernat]

そこで、コラボレーションのためのエリアと、集中するためのエリアを分けようと考えました。プライベートな時間は窓際に、また会話や図表、ホワイトボードなどが関わるディープなコラボレーションの時間は中央の暗い部分にまとめました。建築上のアクセントが、その区分になっています。

ダグ・フォルジャー氏 (以下 D.F.) それは、Horizon Media で採用したアプローチとは大きく異なるものでした。Horizon Media は伝統的に、情報面だけでなく物理的にも、各部門がかなり孤立しています。企業の資産の大半は、コラボレーションより給与と社員に集中していました。作業方法が個人を重視したもので、他のチームとの情報共有を強いるものになっていなかったので、知識ベースの多くが断片化していたのです。そこで、もっと中断が生じさせようと考えました。以前よりも広く取った共有スペース部分は、A 地点から B 地点への移動だけのものでなく、社内のさまざまな部署の人々が顔を合わせ、いろいろな方法で交わることのできる、広い意味でのミーティング エリアとなるようにしたのです。

クライアントとの話し合い後、デザイン アプローチを変えることになった閃きの瞬間について教えてください。
B.Z. theMART はその好例です。クライアントとロビーを見学中に、彼らの意向について尋ねると、「この部屋には何も置いて欲しくないんです」と言われました。この「アハ体験」が、何かを加えるのではなく、問題を解決することにチャンスがあると理解するきっかけになりました。ビルのコミュニティをつなぐ方法の答えは、何かを構築することではなく、剥ぎ取ることだったのです。小売テナントを排して、社会的なつながりや、視覚上、建築上のつながりのために、相当な広さの空間を提供することでした。新たに得られたこの空間に、階段を設けました。階段の 80 % は、座ってくつろぐことができる場所になっています。最良のデザイン解決策に必要なのは、構築するより、多くのものを取り除くことである場合もあるのです。

おふたりのインテリアは、自然光をふんだんに取り入れ、白を基調とするクリーンな配色に、鮮やかな色のアクセント (明るいオレンジのソファ、大型壁画など) を用いるのが共通するテーマになっていると思います。そうしたスタイルの背後にある考えについてお聞かせください。
B.Z. 私たちはそれを審美的様式としてではなく、世界における価値や優先事項の表現として捉えています。クライアントの間ではウェルネス指向が高まっています。内部に宿る健全性が、かなり重要視されているのです。その点に留意し、より多くの自然光と植物の材料を空間に持ち込む技法を組み込むようにしています。

D.F. 経済面も関係しています。プロジェクトの優先順位は、コストを問題にどう関係づけ、それをどう解決するかで決定しています。建造物は、結果として生まれるデザインでそれぞれ独自の特徴を持つものであり、そこにはある程度の節度と自制が必要です。ありとあらゆる面を飾り立てる必要はなく、最も重要な部分に注意と費用を集中させるべきです。

3D モデリングは、作品にどのような影響を与えていますか?
D.F. クライアントは、図面を読み解いたり、採光や階段の配置を理解したりはできません。だから 3D モデルは、全員が共通認識を得る上で非常にパワフルなツールなのです。VR も発展しており、重要なインフルエンサーになりつつあります。これらに関してエキサイティングかつ前途要望だと思うのは、Revit モデルを利用し、VR カメラで画像をつなぎ合わせることができるようになる、という点です。15 年前はクライアントに、私たちと同じようにデザインを見る機会を提供することは困難で、高価かつ時間のかかることでした。全ては一変しましたね。

ほとんどの仕事はニューヨークですが、街からはどのような刺激を得ていますか?
B.Z. ニューヨークでは、パフォーマティブ アーキテクチャという概念と、そのパワフルな影響の存在を、はっきりと感じることができます。毎日、地下鉄に 45 分乗り、10 万人がかつて想像もしなかったような方法で移動するのを目の当たりにするのは非常にエキサイティングです。建築がいかに人間の状態をより良いものに変えられるか、その思いを倍増させてくれます。

Redshift の「マイ デザイン マインド」シリーズは、各界で活躍するデザイナーによる洞察を紹介しています。

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